映画「八十日間世界一周」とコロナショックによって引き起こされたバイデン大統領の可能性 (第1003回)

公開日: : 最終更新日:2020/04/21 マーケットEye, 中級, 初級, 無料記事 ,

 ジュール・ヴェルヌの代表作。私は小説を読んでいたので、1958年におこなわれた映画化は大いに楽しんで観た。お話が単純なので、カメオ出演で当時の大スターが続々と登場した。今でも名のあるスターはフランク・シナトラ、マレーネ・ディートリッヒくらいかな。

 舞台は1872年のロンドン。主人公フォッグ氏(デヴィッド・ニヴン)は80日で世界一周できるかどうかを賭けて下男のメキシコ人を連れて旅に出る。

 結末はどんでん返し。80日目に到着できず、落胆していた主人公に下男が新聞を買ったら、実は、間に合っていた。東に向けて世界旅行を出発していたので太陽に先立って進んでいた。経度をひとつ超えるごとに4分づつ時間が短縮していった。地球の周囲には経度が360あるから、4分を360倍すると24時間、つまり一日儲けたわけである。

 東と西でいうと時差が東の方が早い。これは実はコロナ肺炎も同じ。発生元の中国、お隣韓国、日本はすでに連日、とは言わないが新規の感染者数は回復者を含めると減少ペース。しかし西のイタリアなど欧州と米国はただいま急増中。また今回安倍首相の推進中のコロナ肺炎対策は、トランプ大統領が始めようとしている政策の先行。どうも東進西遅だ。

 ところで、自慢に聞こえたら本意ではないが、ここ何回か、私の予想が的中していることに注目して頂きたい。

  「何でもあり」の予想通り、トランプ政権は所得税減税(文字通りなら何10兆円分!)まで持出した。

今回のテーマはバイデン大統領出現の可能性である。前回私はこう書いた。

 「(私の推測だが)2月中旬にトランプ大統領は全米での貿易体制への必要性を進言されていたにもかかわらず、「米国は安全だ」というヘンな自信をもとに進言を退けて、防疫体制を敷かなかった。この失策を重視した米国の真の指導者層が決意し、中道派のバイデン氏を次のトップにするべく動き、それが゛スーパー・チューズデーにつながる。」(3月1日記)

 この予想通りに現状では展開している。

 リアル・クリア・ポリティックスの資料によればバイデン氏の支持率は2月18日16・5%、3月3日に27・3%、3月9日に51・3%と最高水準。

 プティエッジ氏、クロプチャー氏、オルーク氏、ブルームバーグ氏など予備選からの撤退者は(恐らく前記した真の米国の指導者層の指示と思うが)バイデン支持で一本化した。3月8日には穏健左派だったマラ・ハリス氏もバイデン支持。

 最新号のニューズウイーク3月17日号によると、3月3日のスーパー・チューズデー前までは確かにサンダース候補に追い風が吹いていた。

 しかし、サウスカロライナ選出の民主党大物ジェームズ・クライバーン下院議員

が、直前になってバイデン支持を表明。黒人有権者から絶大な支持を持つ同議員の指示で、勢いはバイデン氏に向かう。

 またCBSの番組でのインタビューでサンダース氏は失言を繰り返し、有権者たちから見限られた。バイデン氏が民主党の候補になる可能性は、いまや80%とされている。

 3月10日の6州の予備選では、さらにバイデン氏が有利になっている。ミシガン、ミシシッピ、ミズーリなど4州で勝利し、獲得した代議員数は152人増の787人。これに対しサンダース氏は89人増の647人で、短期間で差は拡大している。

 3月5日のスーパーチューズデー直後はバイデン氏553人に対し、サンダース氏506人で大きな差ではなかったが、やはり前記した米国の真の支配者層の意図があるのだろう。

 では、トランプ大統領の方はどうだろうか。

 主要な世論調査結果を集約しているファイブ・サーティエィトによると、3月6日時点でトランプ大統領の支持率は42・8%で、不支持率は53・0%。同調査による歴代大統領の騰落から割り出した再選に必要な支持率49%を大きく下回る。

 トランプ大統領の望みはサンダース候補がバイデン支持を行う可能性が現状では少ないことだ。つまり、民主党は一本化できない。

 サンダース氏は米国政治学でいう「PURIST候補」、つまり、イデオロギーに忠実は原理主義者。したがって、トランプ一本の共和党に対し分裂した民主党候補は勝てない。これが、トランプ有利の論拠だった。

 ただ、今回は違うようだ。テキサス州やカリフォルニア州の調査では、「大統領を打ち負かせる候補」を「自分と同じ見方の候補」より上位に置く有権者が57%に上った。現実主義の有権者をサンダース氏も無視できないかもしれない。

 しかも、今回のコロナ肺炎問題が大統領選の攪乱要因になった。前記したように、新型ウイルスの感染力を過少評価し「民主党の陰謀」としていたトランプ大統領の発言が、今となっては市民の不安と怒りと助長。そのターゲットは、もちろん大統領に向く。特に12日のコロナ対策で、欧州(除く英国)との旅客締め出しなど、幼稚な対策で不安を招いた。

 3月4日には、米国でも豪華客船が、サンフランシスコで寄港を拒否され立ち往生する事態が発生した。2月に日本のクルーズ船対応を冷笑していた米国世論だが、トランプ政権の対コロナ防疫体制が後半後手に回っている、との見方が拡大しつつあるようだ。

 先週このブログで「何でもあり」だと強調したが、やはり巨額減税で株高を狙っている。(実現性は低いが)。

 日本の方はアメリカのようにはゆかない。それはFRBと日銀の差、米国政府と日本政府の景気刺激策への余力の差(逆に言うと米・日の財務省の景気下支え意欲への差)があるので、なかなか上昇には向かわないだろう。

 忘れるところだった。6月の最高裁判決もトランプ氏にとっては重荷なことは変わりない。本当にシロなら、この情勢では自発的に財務申告して苦境を脱出する。出来なければ、やはり判決次第で、トランプ→ペンスの政変があるに違いない。バイデン大統領の可能性は、一段と高まる。

 さて、結論に入る。フィナンシャル・タイムズ3月10日付で、著名投資家のレイ・ダリオ氏が「コロナ問題は天災であり、もてる手段総動員を」と述べている。世界中で資金繰り支給や税制、援助などあらゆる手段を駆使して、世界大不況突入を防ぐだろう。

 2年も3年も、という超悲観説が横行しているが、モデルモ社のコロナウイルスワクチンが4月から臨床実験。次に数千人の参加者に2番目の治療を開始。6ないし8か月後に米国、中国で行う(ウォール・ストリート・ジャーナル2月25日付)

 となれば年内いっぱいで見通しが決まる。全世界注視の4月の臨床実験の情報は必死になってマスコミが追及するだろうからモデルモ社(MRNA)の株価を見ていれば、感染の拡大防止のメドが立ち、そこからリバウンド相場が始まる。

 もちろん不況対策が実施されているだろうから、むしろバブルを心配しなくてはならない事態になるかもしれないくらいだ。

 NYでダウ平均が大幅に下落しているのに10年物米国国債の金利が上昇している。機関投資家は、リスクオフを次第に回避し始めている可能性がある。

 映画の終わり。フォッグ氏がメキシコ人の下男と、インドで救出した姫(シャーリー・マクレーン)の三人で、ロンドンの伝統あるクラブにかけの勝利を告げに行く。もちろん女人禁制、下男なんて飛んでもない。そこで会員の一人が言う。「これで世界は終わりだ!」。コロナウィルス新型肺炎で世の中が終わりになるわけではない。やはり何回もわたくしが主張している通り、「災害に売りなし」だ。

(この騒動のさなかにドイツ銀行がcoco債のデフォルトを決めた。メルケル首相が任期の関係で、この問題に決着をつけることを決意したのかもしれない。ただ、13日のドイツをふくむ欧州株が堅調だったのは、準備が十分だったことを暗示する。噂で売り、事実で買う、のかもしれない。)

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