【初・中級者向き】ヒッチコック「鳥」と恐怖が生む投資

公開日: : 最終更新日:2017/05/24 マーケットEye ,

2017・5・21

この傑作には原作の短編があり、作者は「レベッカ」を書いたダフネ・デユ・モーリアだということは知っていた。今回読んでみたら、驚いた!

原作の舞台は英国の地方の町で主役は自動車者修理工。へえ、サンフランシスコから100マイルのボデガ湾ではないし、主役の弁護士ミッチもお金持ちの道楽娘メラニーも、ミッチの母親も全部シナリオ上での創作なんだ。流石,エド・マクベイン(この作品ではエヴァン・ハンターの名前だが)!

 

鳥の攻撃が始まってレストランに町の人たちが集まる。鳥類学者を名乗る老婦人は鳥が世界の終わりを招くなんてありえないと主張、これが常識。「世界にとってそんな重大な事柄が、たかが鳥のために起こるはずがない、という通念に凝り固まっている」(ヒッチコック「映画術」)。

韓国新大統領で一番喜ぶ男

核を手にしている国はこの世の終わりの核戦争を起こしうる。だから北朝鮮は人口2000万人の小国でも世の中の注目を浴び、しかも地続きの韓国、中国、ロシア、もちろん日、米も重大な関心を持つ。

その軸になるお騒がせ男金正恩が一番喜んでいるのが5月9日の文在寅韓国大統領の当選だろう。

この新大統領がこれからすることは「超太陽政策」で、親北朝鮮、親中国。もちろん反米、反日で、韓国へのTHAAD配備を拒否し、米軍を朝鮮半島から追放する。これは中国、北朝鮮そして文在寅にとって共通のメリットだ。任期中にやるだろう。

「北」優位の南北統一

文大統領はまず「非正規雇用ゼロ」を強行し、公共部門で81万人、民間で50万人の雇用を公約している。財源は不明だし、大企業にとっては迷惑だが、財閥叩きは人気取りに不可欠なので、強行する。まあ大変なコスト高と国際競争力の劣化につながる。外国人投資家が韓国株を売り、ウオン暴落も、もう見えている。韓国側の姿勢が拒否体制なので、米国も日本も助けようがない。中国が今展開している「韓国いじめ」をやめ経済優遇策を与え、チャイナ経済圏への取り込みを図るだろう。結局「北」優位の南北統一が進展する。

 

では米国は。切り捨てもプランとしてすでにある、と思う。トランプ大統領は10億ドルのTHAADミサイル配備費用を選挙戦の最中に韓国に対し要求した。親米候補に不利になる発言をあえてしたのは、米中の取引の中で韓国切り捨てをカードの一つに考えているのだろう。

昨年末に来日した米国務省次官補東アジア担当は、北朝鮮の金正恩体制が終われば米、中、露の共同信託統治を予告していた。ロシアを入れるのは、中国に日本海に接した軍港までは与えないという米国の意図だろう。

日本としては、北朝鮮の脅威が対馬海峡の向こう側まで来て、その時発生する大量の難民の流入が「そこにある危機」になってしまう。国会はまだ森友だ加計だとさわいでいる場合か。

トランプショックで暴落はない

もう一つ。トランプ大統領のコミーFBI長官の解任とロシアへの機密漏洩は確かに危機だろう。しかもトランプ政権の支持率は3月51%が5月18日44%で下落。

「トランプが2018年までに辞任」のカケ率は60%と高いが、株価の方はNYダウが高値でモミ合い、NASDAQは新高値でアレレ?という感じ。足元をすくわれて、株価は急落、円高になった。しかしトランプ・ショックはせいぜい1,2日で暴落はないだろう。米世論は78%が「特別検察官設置」に賛成しているので、この問題のカギだが、弾劾は数年かかる。不透明感は残るだろうが。NYも日本もまだ株高は続く。

 

米国政治の先行き不透明、南北朝鮮のほか、投資家に聞くと日銀のマイナス金利導入に伴う資金運用難、それに財務省と同省に飼われているポチたちの宣伝によるハイパーインフレ不安(私は全く信じないが)。

急増する金投資

その結果、究極の安全資産「金投資」が歴史的な転換、つまり急増している。

 

金の需要はアクセサリーなどが「宝飾用」と金地金、金貨の「資産用」とに分かれる。日本では前者の方が多いのが常識だった。

ところが2016年に宝飾用は16・9トンで前年比微増だったが、資産用は20トンで15%増。初めて逆転した。今年に入っても業者に聞くと金地金、金貨は買いが続いている。私は資産の3~5%は金に、と申し上げてきたが、ようやくその時代に入った。

 

問題はもうかっているかどうかだが、2016年年初の1グラム4088円が年末4330円に6%上昇。現在4486円で1割上昇。悪くない。

成長戦略のテーマ株

あれれ、イマイ先生、株の方は?と聞かれそう。6月に発表される成長戦略「ソサイエティ5・0」を私は期待している。AI、ロボットなど自動運転、遠隔医療を含めた10以上のテーマが発表されよう。常識的にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクなどが多くの分野で関連しそう。ご研究を。私はサイバー攻撃の関連を調べている。

 

映画のセリフから。「鳥」はあまりいいセリフがないので、私の好きな「気まぐれ天使」(ケイリー・グラント主演)から。

「人は老けるものよ」とある中年女性。「老いた心で生まれた人は老ける。若い心で生まれた人はいつまでも若い。」

そのとおり!私は色紙を年輩のひとに頼まれると「流水不濁、忙人不老」と書くことにしている。ついでにこの「気まぐれ天使」にワンシーン出るタクシー運転手のセリフを。

「この国の問題を知っていますか。目的を持たない人と、目的に向かって急ぎすぎる人の、どっちかしかいないことです。」

いい意見だなあ。

 

ヒッチコック「鳥」と恐怖が生む投資(第859回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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