パール・バック「大地」とハンガーパンデミックの発生と中国の蝗害(第1029回)

ノーベル賞を獲得した名作。極貧の中国の農家・王一家の30年にわたる苦闘ぶりを描いた大河小説。大河の氾濫、蝗の大群などの襲撃―。次々と発生する打撃に耐え、大地にしがみつく一生。感動させられる一冊だ。

まず食料価格の上昇から述べよう。ブラジルのサンパウロ大学の調査は次の通り。

  1. 大豆は名目値で一年前に比べ50%台以上上昇。
  2. コーヒーはブラジルでは生産が記録的上昇だったにもかかわらず1年で45%の価格上昇。
  3. トウモロコシは65%価格上昇、史上最高値、

サンパウロ大学は中国の大量買い付けが原因、としている。

 では買い手の中国の方はどうか。

 豚肉価格が7月前年同月に比べ94・3%上昇。他の食料品の細かい動向は(恐らく正確な数字を抑制しているためと思われるが)、発表されている数字は実際より低い。

 ただ、中国の食糧の需給が不安定化していることは確実だ。理由は次の通り。

 8月12,13両日、人民日報に習国家主席による「過食行為の断固阻止」キャンペーンが行われた。

 中国は伝統的に、食べきれない料理を注文し残す習慣がある。「光盤(皿をカラにする)キャンペーン」としてまとめられているのは、この改革が容易でないことを示している。

さらに今回のコロナ・ショックの影響が加わる。8月16日付のこのブログで述べたこととダブるが、要旨は次の通り。(資源・食糧問題研究所代表の柴田明夫さんのご意見をまとめている)

  1. 移民労働者不足による農業生産への影響
  2. 港湾労働者の荷役作業の遅延、トラック労働への敬遠
  3. 東南アジア諸国に始まったコメなどの輸出計画削減
  4. 移動規制のため物流が寸断された。そこで食料市場での農村部の過剰」「都市部の不足」、付加価値の面では「(国産)高級食材の過剰」と「輸入に依存した」業務用の安価な食材の不足」が同時並行して存在。

これに加えて、中国には記録的な大洪水にバッタが引き起こす脅威がある。

 私も執筆陣の一人に加えさせていただいている時事総研のコメントライナー7月22日の記事は次のとうりだ。

  1. 中国では6月から降り続けた豪雨で、中南部の27の省や市で、記録的な大洪水が発生。
  2. 加えてサバクトビバッタとイナゴの大発生が起きた。前者はアフリカで大発生し、インド、パキスタン、中国雲南省に襲来。場合によっては日本も、との懸念である。
  3. 一方イナゴは中国の自生種で6月初旬、東北部。吉林、黒龍江省で発生。その後、湖南省に拡大
  4. 加えてアフリカ豚コレラ、鳥インフルエンザ。養殖エビにも毒性の強い新種のウイルスが広東省で再発。

 以上述べてきたことから、中国の食糧不足は明らかで、緊急輸入せざるを得ない。すでに食料価格は高騰し始めているが、農業生産国でも自衛もあって、19の国が輸出規制を始めている。菅新首相は、初めの課題として実際は輸入相手との交渉が相当難航するのではないか。

 というのは、甘いことはとても考えられないからだ。

全世界の人口は国連調べ(少し古いが)では、61億2000万人人。世銀の推測では餓死者は5600万人、死者の5人に一人は餓死している。異常気候、内戦などの理由からだ。

 コロナ・ショックで、食品のサプライチェーンが一変、経済の失速で消費者の購買力が低下。某シンクタンクは、一日の餓死する人はコロナ肺炎での死者を上回る、とした。

 いつも強気のイマイさんが

珍しく弱気じゃないか、といわれそうだが、現在食料が次の危機を招く可能性があまりにも無視されているので、今回は例外。

 最後に嬉しいことを二つ。

初めはこのブログの愛読者からのご指摘だ。そのまま掲載する

今井先生、価値あるお話をありがとうございます。

楽しみながら勉強になるので、とてもありがたいです。

もしかして。ブログに書いてあったベートーヴェンのピアノ協奏曲は、

恐らく作品61aのことではないでしょうか?

私は桐朋学園大でピアノや声楽を学び、音楽の話題に条件反射的に反応してしまいました。これからも、今井先生の情報発信を楽しみにしています!

                     苧阪 恵子(おさか けいこ)

 ありがとうございます。早速訂正します。

次。ある高名な方からわざわざ電話を頂戴して、昨年の拙著「2020年の危機、

勝つ株・負ける株」で、菅官房長官の訪米が禅譲の意味があることを指摘した、そのことをおほめ頂いた。嬉しく思います。

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