ベートーヴェンのピアノ協奏曲ニ長調作品26-aと菅新内閣の人事、政策そしてNASDAQと日本株(第1028回)

 この題を見て、すぐ内容のわかる方は、スゴイ方だ。理由は簡単。よほどのクラッシックとくにベートーヴェン通でなければ知らないからだ。私はNYで、ドイツ人の友人から教えてもらった。

 このピアノ協奏曲ニ長調は、実はベートーヴェン唯一のヴァイオリン協奏曲のピアノ版。主役だけ入れ替え、メロディーは同じ。知人の結婚祝いのための編曲、だそうだ。

永らく待望していたが、9月1日に田部京子さんが「皇帝」と二曲のコンサートをサントリーホールで開いたのを聴いた。

 この曲は、後年のブルックナーと似ていて、楽想の違うパートの組み合わせ。第一楽章が特にこの型でできており、ヴァイオリン奏者はその都度、音の出し方を変える。(これが出来たのは、ギドン・クレーメルだけだった)。田部さんはトレモロがたくみで、まずまず、楽しんだ。

 ここまで書けば、安倍→菅の政権交代が、このV協→ピアノ協に似ている。これがこのブログを書いた理由だ。

 早々と、内閣の予想を出している向きがある。

 双日総研の吉崎達彦さんは、官房長官を次のように―。(敬称略)

 本命 加藤勝信 対抗 河野太郎 穴 高市早苗

 またSMBC日興証券の宮前耕也さんは官房長官・梶山経産大臣の横滑り②財務大臣・河野防衛大臣の横滑り③外務大臣 茂木外相の留任④防衛大臣・小野寺元防衛相⑤経済産業大臣・西村経済再生相の横滑り。

 私は、実は補佐官人事の方に目を凝らしているのだが、現在では全くわからない。

次に政策。

 いつも私が高い評価をしているパルナッソㇲ・インベストメントの宮島秀直チーフ・ストラテジストは9月1日に「重点的に推進される可能性の高い経済政策」として次の点を挙げた。

  1. 政令都市への自治権限を拡大
  2. 各県別の税還付率のアンバランス是正
  3. 菅氏自身が推進して設置した「地域経済活性化支援機構(REVIC)を拡充。
  4. 政府と各省庁、地方自治体で寸断されている情報システムのデジタル化。(宮島さんによると数千億円かかかる。(現在500億円なので、大きな材料だ。)
  5. 民間ファンド14の総点検。天下り全廃、不必要な民間企業の救済、経営介入を見直し。
  6. (謀補佐官が官邸にいなくなった前提で)経産省の組織改革。
  7. インバウンド復活のためワクチン大量確保。

以上は主に国内政策中心。外交はトランプかバイデンかで違うし、習近平来日を実行するかどうかも課題。

 ただ菅氏は2019年5月に、ポンぺオ国防長官、シャナハン国防長官代行、ペンス副大統領と長時間会談、トランプ勝利の折の人脈はある。バイデン勝利の時には、キャロライン・ケネデイ元駐日大使との親交が役に立つ。

 最後に、日米の株式市場の当面の動きを予想する。

 まず日本。菅内閣の関連で地銀株が一斉に上昇した(9月4日)。政策の③を好感したものだろう。今後とも銘柄次第だが、長期では強いのではないか。 

 政策④の情報がらみはまだ動いていない。法律化する段階で上昇開始、だろう。

 ただし、後述するようにNY株式、特にNASDAQが今後下落すると思われる。したがって日経平均の方も従来の相関度の高さから目先はどうしても強気になれない。

 NASDAQの最近の新高値更新は、ロビンフッダーたちの買いが中心なことは疑いを容れない。

 「ロビンフッド」という投資アプリは、スマホ中心に最近急伸していて1300万人が利用している。瞬間3900万人ともいわれている。利点は①手数料ゼロ②必要口座残高もゼロ③ワン・クリック・トレーデイング④値嵩株は複数のユーザーと共同購入できる、など。したがって20~30歳台の若者が中心。

 では、販売元のロビンフッド・マーケッツ社はどうして収益を上げているのか、きわめて頻繁に繰り返されるユーザーの注文から、証券会社の手数料は膨らむ。その一部をリベートして受け取る。

 下げの材料は不明だが、大統領選に絡んだものらしい。まず買い材料になったのが、カマラ・ハリス副大統領候補の指名確実の情報。カリフォルニア州選出だから、大型ハイテク企業から献金を受けている。したがって厳しい政策をとらないーという思惑からNASDAQに買いが入り、特にGAFAが高騰。

 しかし9月上旬に入りバイデン内閣構想の予想が漏れ始める。エリザベス・ウオーレン財務長官有力説が流れ、同上院議員はGAFAなどの分割を主張。これがウリを呼んだ。 

まあよく出来たオハナシだが、一応リクツは立つ。

 現実には巣ごもりと失業保険増額利用が、時間切れ、つまり常態復帰があったことが影響したと思われる。WSJはソフトバンクの孫さんの関与を指摘しているが、金額から見るとやはりロビンフッダーの方が寄与率は大きいと思う。

 最後に日本株について一言。超短期の投機資金(勿論ヘッジファンド)が、8月28日安倍首相の辞任声明以降、新政権期待でそれまでの売りからドデン買い越しに転じた。宮島さんによるとレバレッジ後3000億円を超える。この買いが再び売りに出れば、どうなるかは見えている。

 したがって、以前から私が申し上げている通り、当面は「休むも相場」で、何せ85歳の老人のタワごとと、気楽にお聞き流しくだされば幸甚です。 

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