映画「天井桟敷の人々」と「脱炭素」という誤りのために消費税20%に当る負担を負うわが国。そしてバフェットの買った商社株(第1105回)
「天井桟敷の人々」は、映画史上屈指の名作の一本。高校時代に観た時の感動は忘れない。
私が最近知り合ったファンの方に、ブログにフランス映画の取り上げが少ない、と言われた。
また、先日NHKのBS放送で放映していたので取り上げることにした。
お話はパントマイム役者のバチスト(ジャン・ルイ・バロー)と、美女ガランス(アルレッティ)が
好き合っていても一緒になれない。まさに悲恋ものである。
ガランスが「恋なんて簡単よ」といつて、身を任せようとする瞬間、バチストが気後れして部屋
から出て行ってしまう。
これが悲劇のもと。誤りに違いない。
世界中が今狂奔している「脱炭素」が誤りである、と早くから指摘している碩学がおられる。
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹杉山大志さんである。
私は近著「2022 日本の行方−革命前夜・脱炭素でインフレに向う日本」でお世話になった。
杉山さんは近刊の「文藝春秋」に「中国依存の脱炭素は愚かだ」という素晴らしい論文
を寄稿されている。
今回は他の杉山さんの著作も含めて、いかに「脱炭素」がバカげているかをまとめたい。
今回のウクライナ侵攻が、EUとくにドイツに大打撃を与えるという指摘から始める。
凍死者が出るかも、と杉山さんは言う。
ロシアは主としてパイプラインによって、欧州のガス輸入量の40%が供給、とくに
ドイツはロシアのガスにドップリつかっている。また政権の一翼を担う社会民主党の元党首
シュレーダー氏はロシアの国営ガス企業の取締役だ。
具合の悪いことに、EUは「気候危機」説に取り憑かれて、石炭火力発電所を次々と
閉鎖している。
欧州は米国並みのシェールガス埋蔵量があるのに、EU諸国は事実上採掘を禁止し、
ロシアへの依存度は前述のように高い。
経済制裁にからんで、新設のパイプラインの建設工事は中止。
これらから杉山さんは、前記した大被害の可能性を指摘している。
笑い事ではない。「脱炭素」のおかげで、中国は高笑いし、日本など先進7カ国は
大変な負担を強いられる。
以下杉山さんの文藝春秋掲載の論文から要旨を述べる。
現在日本を含めた先進7カ国は、「2030年までにCO2などの温室効果ガスを50%減。
2050年までにゼロ」を宣言した。
日本も46%とゼロと同調している。
ところが中国は「CO2ゼロは2060年、2030年までにCO2を増加させ続ける」という
長期計画を全くかえていない。
昔から言われている「バイデン政権の対中国への甘さ」がこうした売国外交にあらわ
れている。
この結果、中国は大変なメリットを得る。
- 2030年の目標を達成できないことは明々白々なので、外交上優位に立つ
②太陽光発電に使われる結晶シリコンの世界シェアは中国は45%
- 石炭火力の輸出(対途上国)は独占
- 脱炭素発電のための「グリーン投資」はレアアースが必要だが、七割の世界シェアを持つ
さて、中国のメリットが巨大なことはひとまず置いて。
この「脱炭素」が消費税20%にあたる負担をわが国の家計、企業に与えることを以下述べる。
杉山論文を引用しよう。
「過去10年間、「固定価格再生買取制度」下で、再生可能エネルギーは大量導入されてきた。
これによるCO2削減量は、年間2.4%兆円(2019年度)に達している。
3人世帯の電気料金を例にとる。
電気料金は年間12万円、これに対し6万円の賦課金だから、すでに5割の負担増が発生している。
一方、国の支出で見ると2.4兆円の負担で2.4%削減だから、1%あまり1兆円。あと20%CO2
排出量の削減を上乗せすると20兆円。現在の消費税が20兆円だから、30年後に消費税倍増を
意味する。20兆円は1人あたり約16万円、3人世帯で48万円。
以上述べた部分で、現在の日本が自殺行為の準備をしていることがお分かりだろう。
どこかウマいことをやっている国があるのか、と探してみたら、あった。
フランスだ。
マクロン大統領が原発の大量建設プランを発表した。14カ所、とか。
アンチ原発ムードの強いわが国では拒絶されるだろうが、私は進化した21世紀の原発の安全性は
見直されるべきと考えている。
そこで私は、ハタ、とヒザを打った。
もう2020年になったが、ウォーレン・バフエット氏が日本の5大商社株を4.9%も買った。
「将来は9.9%まで」としている。ウラン燃料にわが国商社が絡んでいることは周知の事実。
流石バフェット!
現在は市場全体は底値探りの段階だが、にもかかわらず、大手商社株は堅調だ。これを引き続
きおすすめする。
最後に、映画の名セリフでシメる。
伯爵ルイ・サルウはガランスを口説く。
「あなたは美しすぎて誰にも愛せません。美は醜い世界への侮辱です。」
もうひとつ。
「人生は素晴らしい。あなたも人生と同じように素晴らしい。」
これはピエール・ブラッスールが女性を口説くときの決まり文句。
監督マルセル・カルネは名優揃いだったから、さぞ苦労したんだろうなあ。
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