損する前にこれを読め!
損する人の心理を赤裸々に描写
『あやしい投資話に乗ってみた』

ジャイコミ編集部

誰しもが避けたい投資関連でのトラブル。だが、実際に投資してみてからでないとわからないことも多い。それを追体験できる本が『あやしい投資話に乗ってみた』(彩図社)だ。

著者の藤原久敏氏は「投資が大好き」というファイナンシャルプランナー(FP)。タイトルのとおり、著者自らがさまざまな金融商品に実際に投資し、最終的にいくら儲かったのか(損したのか)を報告している。
単に商品の説明をしているだけではなく、未公開株を薦めてくる営業マンとのやりとりや、投資セミナーでの講師の煽り、さらには実際に投資しているときの心の動きが、軽妙な筆致で描かれている。

写真 2015-01-27 15 47 15

『あやしい投資話に乗ってみた』(藤原久敏著、2013年)

取り上げた商品は、未公開株、新規公開(IPO)株、和牛オーナー(2011年破綻の安愚楽牧場)、海外ファンド(クアドリガ・スーパーファンド)、超高金利の銀行預金(10年破綻の日本振興銀行)、FX取引(南アフリカランド)、先物取引(日経225ミニ)の7つ。

人の心を「あらぬ方向」へと連れてゆくFX

和牛オーナーや海外ファンドなどはすでに下火なので、題材が少し古い感は否めない。また、どちらかというと投資経験ゼロの人に向けた内容なので、投資の世界で一定程度生きてきた人は物足りなさを感じるだろう。
だが、筆者のぼやきのような「心の声」には意外と名言が多い。たとえばFXでは次のようなものだ。

FXがあやしいと言われるのは、あまりにも高性能で威力があるため(たとえるなら、超高性能ターボエンジンを積んでいる車)、それを扱う人の心が「あらぬ方向」へ行ってしまうことが多いからです。

筆者は、結婚式の祝儀からこっそり拝借した10万円を元手に始めた豪ドル買いで資金が20倍に。その後、豪ドルよりも高金利通貨の南アランドに投資し、リーマン・ショックで200万円あった元手を溶かす憂き目にあった。それでも筆者はトルコリラへの投資に再び乗り出す。

上記の「心の声」はシンプルだが、なかなか本質を突いたものではないだろうか。

良い情報だけを受け入れる心理

安愚楽牧場のオーナーとなったものの、「安愚楽牧場は破綻寸前」「和牛オーナー制度はすべて詐欺だ」など、ネット上で否定的な意見を目にした際のくだりでは、詐欺被害に遭う人の心理をうまく表現している。

ただ、「もはや、信じるしかない」、と決めていた私は、良い情報だけを受け入れ、悪い情報はシャットアウト。正直言って、そうしないと、不安で仕方なかったわけです。

詐欺被害に遭った人は、周りの人にきつく言われるまでは「騙されてなどいない」と信じ込むという話を聞いたことがある。

営業を断るための質問テク

一方、未公開株の営業電話がかかってきたとき、話を断るために次のように質問したという部分は、ぜひ覚えておきたいフレーズだ。

筆者 「これまでに貴社が扱った未公開株で、実際に株式公開した会社はあるのですか?」
営業マン 「いや、ハッキリとした形での株式公開は、まだ正式には確定していないのですが。ただ、近いうちに株式公開するであろう会社を、皆さまには紹介させていただいております」
筆者 「その会社がいつ株式公開するのか、それだけをハッキリと教えて下さい」「これまでに扱われた未公開株で、実際に株式公開した会社はあるのですか?」(引用の際に要約)

IPO株の当選確率を高めるために証券口座はどこで開設したかや、日経225ミニ先物を取引するとはどういうことなのかといった「あやしくない」投資の話も読める。
繰り返しになるが、投資経験ゼロの人が読むにはいい本だろう。

 

関連記事

今井澈のシネマノミクス

映画「かくも長き不在」と本格的な「良い円安時代」の始まり。そして私の強気。(第1119回)

カンヌ映画祭でグランプリを取った秀作。1961年の作品で、キネマ旬報の外国映画部門の第1位。黒澤明

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「七人の侍」と21世紀後半に消える仕事、残る仕事。この下げの底値と反発の時期。またインド関連の有望銘柄。強気でいい理由。

映画「七人の侍」と21世紀後半に消える仕事、残る仕事。この下げの底値と反発の時期。またインド関連の

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】映画「知りすぎていた男」と米中関税戦争と漁夫の利を得る日本

2019・5・19(第963回) ご存知のヒッチコック監督の名作で、ジェームス・スチュアートとドリ

記事を読む

基本の話by前田昌孝(第19回、金利上昇と株式相場)

<日銀が金融政策を変更> 日銀が7月28日、金融政策の変更を発表しました。これまで10年物国

記事を読む

基本の話by前田昌孝(第8回)

<金融教育を国家戦略に?> 新聞に新しい資本主義の実現に向け、金融庁が金融教育を国家戦略にす

記事を読む

資産形成、長期の資産運用に役立つ、
プロの投資家による投資情報を配信!

投資家向けに作成したChatGPT専用ツールです。
銘柄コードを入力するだけで財務指標や適正株価を分析します。

ジャイコミをフォローしよう


 

NPOによる投資に役立つ情報メディア
『中立な情報を全ての個人投資家の為に』
PAGE TOP ↑