その投資の利回りは、いくら?
金融リテラシー講座「金利計算、利回り計算のやり方」5回
フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生
第2回目に出題した4つの問題の中から、今回は第3問について考えてみましょう。
第3問はつぎのような問題でした。
第3問 利率1.5%、現時点で償還までの残存期間が7年の債券がある。
現在この債券が利回り(年複利)0.7%で取引されているとしたなら、取引値段は額面100円に対しいくらか?
この問題は債券の利回りから単価を求める問題です。
その前に、債券の利回りと言ったとき、利回りとは何でしょうか?利率とはどう違うのでしょうか。その点を整理しましょう。
利率とは、額面に対する利息の割合です。これは発行される時に条件として決められます。
それに対し、利回りとは投資元本に対する利息の割合ということになります。
債券は発行後売買され、取引価格は変動します。債券の利率は発行時に定められますが、利回りは取引価格によって変わってきます。
利回りをもう少し厳密に定義しますと、「利回りとは、将来受取る利息、償還金を一定率で割引いた合計が投資元本と一致する、その割引率のこと」ということになります。
では、まずは計算が簡単な償還まで1年の債券で利回りを考えてみましょう。
額面100円あたりの投資額をXとして、利率をR、利回り(年複利)をrとして、1年後に償還になる債券の単価と利率、利回りの関係は次のようになります。
X(1+r)=100+100R ・・・式2-①
式2-①左辺の意味は、1年後に投資額は利回り分増えるはずですから、1年後の受取額は
X+Xr=X(1+r) となります。
一方1年後の利息、償還金は債券の条件から、100+100Rとなります。両者はイコールですから上記式①の関係になります。
ここで投資額Xが額面と同じなら 100+100r = 100+100Rとなり、r=Rとなります。預金など投資額と額面が同じなら、利回りrと利率Rは一致します。
式2-①はつぎのように変換できます。
![]()
利率Rは債券の条件ですから、利回りrが示されれば単価Xは計算できます。
では、2年後に償還になる債券の単価と利回りの関係はどうなるでしょうか。
![]()
1年後に受取る利息100 Rは1+rで1回割って、2年後に受取る元本と利息100(1+R)は1+rで2回割ります。
これは年複利で利回りを計算する前提だからです。年複利とは1年毎複利計算しますから、2年後に受取るお金は2回割引くことになります。
では、いよいよ第3問にとりかかります。
第3問は7年後に償還される債券ですから、式③がさらに右に伸びて、1+rで1回から7回割引く項が7つ出てくることになります。そして、今回は記号ではなく実際の数字で式を作ってみます。
額面100円あたり今後受取る利息、償還金がどうなるかと言うと、毎年の利息は額面に1.5%を掛けたものですから1.5、そして7年後には償還金と合わせ101.5を受取ります。(日本国内で発行される債券は通常年2回利払いですが、ここでは年1回利払いとします。)
1年後  2年後  3年後  4年後  5年後  6年後  7年後
利息    1.5   1.5     1.5     1.5     1.5     1.5     1.5
償還金                                100
この投資後に受取るキャッシュフローを利回りで割り引いたものが債券単価となります。
利回りは0.7%ですから、割引率1+rは1.007となります。

= 105.4467 ≒ 105.45 ・・・式2-④
したがって、答えは105円45銭ということになります。(次回に続く)
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