大井リポート
日中欧金融緩和で金相場が堅調な理由
海外勢が稼いだ円安・株高の終わり

公開日: : 最終更新日:2016/05/16 マーケットEye

セイル社代表 大井 幸子

10月末に日銀が追加緩和を行って以来、ECBも量的緩和策を実施し、次いで中国人民銀行も主要政策金利を引き下げるというサプライズがあった。日本、欧州そして中国の中央銀行が空前のペースで紙幣を増刷し、マイナス金利に誘導し、なんとか景気減速に歯止めをかけようとしている。

 エネルギー革命でゼロ金利を脱する米国

その一方で、米国経済は第2・3四半期に年率4%の成長率と好調で、すでにゼロ金利からの脱却が予想される。米国が強気な要因にはエネルギー革命がある。エネルギー業界の第一人者であるダニエル・ヤーギン氏はCNBCのインタビューで「米国はLNGで世界のトップに立ち、2015年10月には欧州に輸出を開始する。ロシアの地政学リスクは米国にとって無きに等しくなる」と自信を持って語っている。

原油・コモディティ価格の下落がまだ続くと見られるなか、金は堅調である。それは、金がインフレヘッジとして有用だという理由からではない。先に述べたように日中欧が金融緩和を続ければ、いずれはこうした政府兌換紙幣への信頼が揺らぐ可能性もある。金本位制に立ち戻るとはいかないが、通貨体制に大きな揺らぎが生ずるリスクが高まっている。

12月1日に、格付け会社ムーディーズは、日本の長期国債の格付けをAa3 からA1に引き下げた。安倍政権が消費税増税を先送りにしたことから財政健全化が不確実になったというのがその理由である。現にロイターの試算によれば、10月に日銀は11.2兆円もの国債購入を行い、これは財務省の純残高(新規発行を含め償還を差し引いた額)10兆7000億円を既に超えている。日銀の金融緩和策(国債購入)に頼って借金をし続ければ、当然、日本の財政悪化に歯止めがかかない。信用リスクが高まれば、金利が上昇し、国債価格は下落する。

格下げは金融機関に国債売りを迫る 

大量の日本国債を保有しているのは主に国内の機関投資家で、ゆうちょ銀行やかんぽ、信金信組、銀行などの金融機関、そしてGPIFなどの年金基金である。じつはダブルAからシングルAへの格下げでBIS規制上金融機関向けエクスポージャーのリスクウェイトが20% から 50%へと大幅上昇する。そのため、リスクを下げるために国債を売り急ぐ金融機関も出てくるかもしれない。

さらに、日本国債の格下げは地方債の格付けにも影響する。日本国債の格付けがキャップとなり、地方債はそれを超える信用格付けはとれない。短期債の格付けもA1/P-1から A2/P-2に格下げとなる。CP(コマーシャル・ペーパー)による企業の短期資金の調達にとってもコストが跳ね上がる。このように、日本国債格下げは、地方債や社債、短期債など債券市場全体と企業金融にマイナス影響を及ぼすだろう。

日銀の出口戦略は

株式市場への影響はどうだろうか?海外の投資家は、円ショート・日本株ロングというポジションを取り、円安・株高で収益を上げてきた。日本国債格下げで円安が加速すれば、株高はいつまで続くだろうか。投機性の資金はある程度お腹がいっぱいになれば速やかに撤退する。

その場合には、円を買い戻すことから円高、日本株売りで株価は下落すると予想される。これを避けるには、日銀が量的緩和で株価浮上を支え続ける必要があるだろう。しかし、いつまでも続けられるものではない。問題は出口戦略である。

元記事:大井幸子のグローバルストリームニュース

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