あなたの投資は値動き派or価値派?

公開日: : 最終更新日:2015/07/05 ゼロから学ぶ投資 ,

金融リテラシー講座「投資のための財務分析」第3回

フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生

株式投資にはいろんなやり方がありますが、それを大別すると、①株式の値動きに重点を置くやり方(テクニカル派)、②株式の価値に重点を置くやり方(ファンダメンタルズ派)――この2つに分けられると思います。

テクニカル派とファンダメンタルズ派は言い換えると、「値動き派」と「価値派」です。

「値動き派」のやり方としては、1日の中で何回も株を売買し、少しの利益を積み上げるやり方、株価の勢いに着目し、その初動段階にあるものを見つけそれに投資するやり方、チャート分析のみで売買判断を行い数週間から1カ月程度で利益を出そうとするやり方など、さまざまなやり方があります

それに対し、「価値派」のやり方は基本的には一つであって、株式の価値に対し、株式の取引値段、つまり株価が十分安いものに投資するということになります。価値に対し十分割安な状態というのは普通すぐには修正されません。
「価値派」のスタンスは、「割安なものへ長期投資」ということになります。

投資のための財務分析とは、株式(あるいは社債)の価値を正しく推定する作業ということですから、「価値派」の投資スタンスを取る人には、絶対に必要な過程ということになります。

株式投資に成功するには「値動き派」か「価値派」か。これは難しい問題です。私の考えでは、「値動き派」であっても財務分析の知識を十分持って価値判断をしたうえで、「値動き派」を標榜すべきだと思っています。

上場会社の開示資料とその入手方法

投資対象となる企業の財務分析に必要な情報収集のための準備のお話をします。

上場会社に義務化されている開示資料に「決算短信」と「有価証券報告書」があります。

決算短信は証券取引所のルールに基づき上場会社に開示が求められているものです。また、決算短信を発表することが決算発表となっています。
決算短信の内容は、貸借対照表や損益計算書など財務諸表が中心であって、有価証券報告書のようにその他の情報は多くありません。決算短信には量より速報性が求められているのです。

決算短信の入手方法は、インターネットでその会社のホームページから取れます。その会社のホームページの「投資家情報」「IR情報」のところに、少なくとも過去5年分(多くの会社は過去10年分)くらいの決算短信は用意しているはずです。

決算発表直後は、東証のホームページの「適時開示情報閲覧サービス」から入手するのが便利です。ここでは発表と同時に入手でき、発表後1ヶ月間は決算発表日ごとに区分され、入手可能です。

有価証券報告書は、金融商品取引法により、上場会社などに開示が義務化されています。
決算短信と違って、決算内容以外の多くの情報が掲載されています。会社の沿革、事業の内容、設備の状況、大株主や役員のことなど広範な情報が掲載されています。
ただし、発表時期は決算期末より大分遅くなります。多くの会社は定時株主総会終了後に提出しますので、3月決算会社なら6月末となります。有価証券報告書は年に1度の期末ベースで発刊されますが、四半期ごとに四半期報告書というものも開示されます。

有価証券報告書や四半期報告書の入手方法は、金融庁が提供している「EDINET」が便利です。金融庁のホームページに入るか、検索エンジンで「EDINET」を検索すれば、すぐ出ます。「EDINET」のサイト内で企業名で検索すれば有価証券報告書は過去5期分が入手できます。

今回は以上としますが、宿題として、どこの会社でもいいですから、あなたが気になっている会社について、過去10年の売上高、営業利益、当期純利益そして売上高営業利益率の推移を表にしてみてください。その会社のホームページに入り、決算短信から数値を入手してください。

作成した表から受けるイメージは、その会社について、あなたが思っていた通りかもしれませんし、イメージが変わるかもしれません。

金融リテラシー講座 第4回 無借金経営はいい会社?貸借対照表を読み解く①

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