日本人が知らない中国投資の見極め方【4】
中国の成長減速は本当に問題なのか?
アナリスト 周 愛蓮
今回からは今の中国経済の本当のところを見極めていきたい。
中国経済の成長率は低下している。かつて10%台だった経済成長率(=GDP成長率)は、いまや7%台に低下し、すでに3年間続いている。2014年の成長率は政府目標の7.5%にも届かないと予想されており、21世紀に入ってからもっとも低い伸びとなりそうだ。
確かに中国の高度成長が終焉したと判断すべきだろう。
いまだ「中国の経済減速」に騒ぐ不思議
実は中国政府は2年も前にすでにこの結論を下しており、「経済成長の速度を追求しない」と明言している。しかし、中国の経済指標が発表するたびに、例えコンマ1ポイントの低下であっても、様々な報道では「中国急減速」、「中国成長率低下」と書き立てる。
なぜそうなるのか?
このような騒ぎの深層に、中国経済に対しての認識は依然数年前のままで、「高成長が当たり前」との刷り込みがあるのではないか、と思われる。言い換えれば、「中国経済はすでに高成長の経済ではなくなった」という事実を、われわれはまだ受け入れていないのかもしれない。
7%台の成長は中国にとって十分なのか?
周知のとおり、中国の経済規模(名目GDP)は2013年に9兆ドルを超え、世界GDPの12%超を占めた。
13年に7%の成長を実現できた国は、主要国では中国とフィリピンぐらいで、「成長率が高い国」として認識されているインドネシアとインドは成長率が実に6%未満だった。
では7%の成長は、数量からみてどんなものなのか?
中国GDPの13年度の増加分は約7000億ドル。これは中国自身の1994年のGDPとほぼ等量で、南アフリカの約2倍に相当し、スイスを上回っている。スペインのGDPの約2分の1であり、2年間でスペインが1つ誕生すると考えてもよいわけだ(いずれも2013年の数字)。
では、中国にとってこの程度の成長は満足のいく速度だろうか?
中国の人口はまだ増え続けているが、15歳~60歳までの労働力人口は12年から減少に転じている。一方、経済構造が変わり、サービス業の新規就業創出力が高まったため、新規就業者数とGDP成長率の関連度が低下した。
かつては1000万人の新規就業を創出するのに10%程度の経済成長が必要だったが(05年ごろまで)、12年から7%台の成長で1300万人ほどの新規雇用が生まれるようになった。沿海部の工場の募集難は徐々に内陸部へと広がっており、最低賃金が10%台の上昇を続けていることの背景はここにある。
政府がもっとも重要視しているこの新規就業創出の指標からみると、中国はもはやこれ以上の高い成長を必要としなくなったといえよう。言い換えれば、労働力人口の減少と新規就業の安定拡大により、経済成長率の低下は社会的に許容できるようになった。
中国の経済政策はすでに「中成長」にギアチェンジしている
政府はここ3年続いてきた7%台の経済成長率を中国経済の巡航速度としてみているふうに思われる。これが経済指標が少々悪化しても、政府が経済刺激策をとらない理由であり、これによりマーケットに時々浮上する刺激策期待が空振りするわけである。
現実問題として、環境汚染の悪化は経済成長の限度を示している。また、リーマンショック後に大盤振る舞いして4兆元の景気対策を打った後遺症として残った生産能力の過剰も、新たな景気刺激策を制限している。その結果、中成長に見合った経済政策の見直しが迫られた。
中国政府は、このような経済情勢を「ニューノーマル(新常態)」と総括し、このニューノーマルに沿った政策を進める方針である。投資牽引から消費牽引の経済成長への構造転換を中心に、様々な政策転換を講じている。
「成長の量よりも質」との言葉を政府要人がよく語るようになったことからも推測できるように、今後は経済成長率目標の引き下げが予想される。
成長率の低下は問題ではなくなったとすれば、では、中国経済の問題はどこにあるのか?
次回で分析してみたい。
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