2015年を読む①
伊藤稔の目
米国経済を機関車役に底堅い相場
日本個人投資家協会副理事長 伊藤稔
安倍晋三総裁が率いる自民党が、12月14日の衆議院選挙で圧勝した。国民はアベノミクスの成功に望みを託したと言える。アベノミクスは、確立した経済学説に基づく経済政策ではない。日本経済の再生に有効と思われる諸政策を総動員したものである。
「アベノミクスでハイパーインフレ」はない
従って、マルクスやケインズ学説の信奉者から懸念や批判が出るのは当然だ。ただ、極端な副作用のみを強調し、投資家の不安を煽っているのは建設的でない。インフレターゲット政策は、物価が定められた目標水準を超えた場合、自動的に対応策が発動されるように考案されている。日本経済が近い将来、ハイパーインフレに陥るとの説に説得力はない。
現時点で最もありうるシナリオを以下に記す。
緩やかな拡大続く世界経済
世界経済は、リーマン・ショック後の世界同時不況を脱し、緩やかに拡大している。国際通貨基金(IMF)によると、来年の世界経済は、今年の実質3.3%成長から3.8%成長に、成長率を若干高める見込みだ。
回復テンポは過去のケースに比べ遅い。世界経済は依然大きなデフレギャップを抱え、低成長と低インフレに苦しんでいる。原油をはじめとする商品市況の大幅下落は、起こるべくして起こったと言える。
機関車役は米国経済に交代
新興国経済はリーマン・ショック後、世界経済を牽引してきた。しかし先進主要国経済が停滞している影響を受け、新興国経済は軒並み成長率の低下を余儀なくされている。
特に、ユーロ圏の新興国経済は深刻だ。盟主国ドイツが厳しい財政規律を要求しているため、ユーロ圏経済は月を追って悪化している。一部の国で政治が不安定になっている。
一方、2年ほど前まで世界経済の重荷と非難されていた米国経済が堅調だ。今年4~6月期以降実質3%を超す成長が続いている。
赤字縮小で減税、さらに成長
大胆な金融政策とIT及びシエール革命の効果で、新しい企業が多数誕生し、生産性の向上に寄与している。この結果、税収が増え、今会計年度の連邦政府の財政赤字はGDPの2.6%以下に縮小する見込みだ(日本の今年度の財政赤字はGDPの約8.0%)。経常収支も大幅に改善している。
財政収支と経常収支の赤字が縮小すると、議員から財政支出の見直しを求める声が大きくなる。11月4日の中間選挙で共和党が上下両院を制した。共和党議員には元々減税論者が多く、3千億ドル(35兆円超)規模の減税が可能であると試算している。議員が減税法案を議会に提出すれば、法案が成立する可能性が高くなった。減税は景気の拡大期を長期化する。米国経済が今後数年、高めの成長を遂げる条件は整っている。
世界の株式相場をめぐる環境は悪くない
ケインズはかつて「株価は美人投票で決まる」と言い、J.P.モルガンは「株価は変動する」と答えた。株価の先行きを正しく予測することは不可能に近い。
世界の株式相場が最近不安定になった。だが、米国経済が堅調であれば相場が大きく崩れるリスクは大きくない。欧州中央銀行および中国人民銀行は最近、景気をより重視する方向にかじを切った。これで、金融市場が混乱に陥る当面のリスクは小さくなった。
円安基調に変化なし、原油安で増益
次の5つの要素が株価の形成に大きな影響を及ぼしてきたことは良く知られている。
① 世界経済
② 金融政策・金利
③ 企業業績
④ 株式需給
⑤ 政治の安定度
これら要素の分析が長期投資に必要なことは言うまでもない。
日本経済は4~9月期に大幅のマイナス成長になった。10~12月期以降は、消費増税の影響が薄れ、徐々に回復ペースを高めると予想される。日米の景気動向から判断して、ドル高・円安基調に変化はない見込みだ。
原油価格の大幅下落は日本企業の業績にプラスに作用する。世界経済が4%近い成長を遂げれば、2015年3月期の全産業の経常利益は8~10%の増益が見込める。他の要素は日本の株式相場にとって概ねプラスに作用する公算が大きい。
底堅いが変動激しい相場、割安株発掘を
新年の株式相場は底堅いが、地政学リスクが大きいため、変動率の高い相場になりそうだ。株式投資で一番大切なのは銘柄の選択だ。低成長・低インフレ時代における有効な投資戦略は、割安株(Value株)に投資をすることである。2015年が投資家にとって良い年になることを期待したい。
(2014.12.18記)
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