損する前にこれを読め!
損する人の心理を赤裸々に描写
『あやしい投資話に乗ってみた』
公開日:
:
最終更新日:2016/04/22
ゼロから学ぶ投資, 損する前に読め!, 無料記事 ジャイコミ編集部, 損する前にこれを読め!
ジャイコミ編集部
誰しもが避けたい投資関連でのトラブル。だが、実際に投資してみてからでないとわからないことも多い。それを追体験できる本が『あやしい投資話に乗ってみた』(彩図社)だ。
著者の藤原久敏氏は「投資が大好き」というファイナンシャルプランナー(FP)。タイトルのとおり、著者自らがさまざまな金融商品に実際に投資し、最終的にいくら儲かったのか(損したのか)を報告している。
単に商品の説明をしているだけではなく、未公開株を薦めてくる営業マンとのやりとりや、投資セミナーでの講師の煽り、さらには実際に投資しているときの心の動きが、軽妙な筆致で描かれている。
『あやしい投資話に乗ってみた』(藤原久敏著、2013年)
取り上げた商品は、未公開株、新規公開(IPO)株、和牛オーナー(2011年破綻の安愚楽牧場)、海外ファンド(クアドリガ・スーパーファンド)、超高金利の銀行預金(10年破綻の日本振興銀行)、FX取引(南アフリカランド)、先物取引(日経225ミニ)の7つ。
人の心を「あらぬ方向」へと連れてゆくFX
和牛オーナーや海外ファンドなどはすでに下火なので、題材が少し古い感は否めない。また、どちらかというと投資経験ゼロの人に向けた内容なので、投資の世界で一定程度生きてきた人は物足りなさを感じるだろう。
だが、筆者のぼやきのような「心の声」には意外と名言が多い。たとえばFXでは次のようなものだ。
FXがあやしいと言われるのは、あまりにも高性能で威力があるため(たとえるなら、超高性能ターボエンジンを積んでいる車)、それを扱う人の心が「あらぬ方向」へ行ってしまうことが多いからです。
筆者は、結婚式の祝儀からこっそり拝借した10万円を元手に始めた豪ドル買いで資金が20倍に。その後、豪ドルよりも高金利通貨の南アランドに投資し、リーマン・ショックで200万円あった元手を溶かす憂き目にあった。それでも筆者はトルコリラへの投資に再び乗り出す。
上記の「心の声」はシンプルだが、なかなか本質を突いたものではないだろうか。
良い情報だけを受け入れる心理
安愚楽牧場のオーナーとなったものの、「安愚楽牧場は破綻寸前」「和牛オーナー制度はすべて詐欺だ」など、ネット上で否定的な意見を目にした際のくだりでは、詐欺被害に遭う人の心理をうまく表現している。
ただ、「もはや、信じるしかない」、と決めていた私は、良い情報だけを受け入れ、悪い情報はシャットアウト。正直言って、そうしないと、不安で仕方なかったわけです。
詐欺被害に遭った人は、周りの人にきつく言われるまでは「騙されてなどいない」と信じ込むという話を聞いたことがある。
営業を断るための質問テク
一方、未公開株の営業電話がかかってきたとき、話を断るために次のように質問したという部分は、ぜひ覚えておきたいフレーズだ。
筆者 「これまでに貴社が扱った未公開株で、実際に株式公開した会社はあるのですか?」
営業マン 「いや、ハッキリとした形での株式公開は、まだ正式には確定していないのですが。ただ、近いうちに株式公開するであろう会社を、皆さまには紹介させていただいております」
筆者 「その会社がいつ株式公開するのか、それだけをハッキリと教えて下さい」「これまでに扱われた未公開株で、実際に株式公開した会社はあるのですか?」(引用の際に要約)
IPO株の当選確率を高めるために証券口座はどこで開設したかや、日経225ミニ先物を取引するとはどういうことなのかといった「あやしくない」投資の話も読める。
繰り返しになるが、投資経験ゼロの人が読むにはいい本だろう。
関連記事
-
手塚治虫「火の鳥 黎明編」と円安メリットの再認識。「2」のつく年は「買い」説(第1112回)
手塚治虫は「鉄腕アトム」が超有名だし、声を受け持った清水マリさんは私の妹 充子の大親友なので、ご縁
-
映画「ゴールデン・カムイ」と100兆円をこえるタンス預金のもたらす株高。岸田政権の今後
映画「ゴールデン・カムイ」と100兆円をこえるタンス預金のもたらす株高。岸田政権の今後 20
-
ヴェル「ボレロ」と心地よい反復が止まりかけている中国経済と米国の政界。そして漁夫の利を得る日本。(第1126回)
ラヴェルの「ボレロ」は、よくCMや映画で使われるから、ご存知の方も多いだろう。小太鼓がボレロのリズ
-
映画「鵞鳥湖の夜」と私の「それでもトランプ」説(第1033回)
久しぶりに妻の渋い顔をヨソに有楽町まで足を延ばしてこの作品を観た。「浅田家!」の方は文庫で原作(
-
ベートーベン「第九」と日米のグレートローテーション(第992回)
年末になると方々で演奏される名曲中の名曲。最近、NHKでベートーベン の健康と絡んだ番組を観て新し