映画「ジョン・ウィック」と中国のQEとドイツ危機
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マーケットEye 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
キアヌ・リーブスの最新作。この人は「スピード」でブレークし、「マトリックス」三部作がヒット。その後いい作品がなかったが、今回の新シリーズはなかなかいい。スタエルキ監督はマトリックスシリーズでキアヌのアクション担当だったので、新鮮な画像をつくり上げた。
「ガンフー」と名付けられた柔術アクションは、室内で間合いを詰め、敵の銃撃をかわしながら撃つ。神がかり的なすご腕で次々となぎ倒すクールなキアヌは、一見の価値がある。何しろ「殺し屋を殺す」男だから、強いの何の。
設定も面白くシュールな笑いを誘う。特別なホテルが殺された死体の処理班を回してくれるし、大けがをしていてもナゾの錠剤をのむとまた強くなるとかー。たった一人で犬一匹のためにロシアンマフィアを壊滅させるなど。
いま経済マスコミでは広く中国崩壊説がまかり通っている。一方、いろんなシンクタンクの中国担当者は「大丈夫です」。
2017年、中国崩壊
組織の中にいて、しかも中国に出張して現地の人に聞くと、中国がツブれるなんて考えられまい。旧ソ連が崩壊する時も、専門家は誰一人予見できなかった。長谷川慶太郎先生だけだ。
私は年20万回も暴動が起き、鎮圧のための公安経費が12兆円以上、軍事費を上回る国が一党独裁しているのは、遅かれ早かれいずれ、ダメになると思う。
しかし、コトが起きるのは2017年。ことし来年は大丈夫、と申し続けてきた。なぜか。
中国が今年は崩壊しない2つの理由
理由第一。
不良債権による地方自治体、銀行の倒産は10月10日発動された「貸付担保再融資制度」で延命した。これは銀行が貸借契約書を担保に人民銀行から資金を借りることが出来る「債務担保劣後ローン」。7兆元(131兆円)の流動性を生む。システミックリスクはこれで当面回避された。
理由第二。
米国は冷戦勝利の体験から、一発も弾を打たないで国際金融の世界から中国崩壊を狙っていること。
習近平は人民元を国際化し、AIIBの資金需要を賄おうという狙いを持つ。米国が後ろにいるIMFは「人民元の変動幅拡大と金融市場の自由化」を条件に、人民元のSDR通貨入りを認めると示唆した。時期は来年9月。
そうなれば、かつてジョージ・ソロスが英ポンド(92年)やアジア通貨投機(97年)で巨利を博したように、大規模な元売りで中国を自由変動相場制に追い込む。外貨準備の取り崩しで元を買い支えるが、それも中国側は負ける―。
キアヌの「ガンフー」が柔術と拳銃の組み合わせのように、この二つが私の2017年中国崩壊説の根拠だ。
中国共産党内の対立は五分五分
天津の大爆発事故(テロらしい)からもう三カ月近く、統計上は港湾からの船積みは順調らしいが、周辺の工場は再開できていないところがほとんどと聞く。
李克強指数の9月新数字を見ると①用電量マイナス1・8%②鉄道貨物輸出量マイナス5・2%③銀行の社会融資プラス6・3%(季調ずみ前年同月比)。これで6%だの7%だの―。ウソに決まっている。
ただし、中国共産党内では米国派と英独仏派との対立もあるらしい。習金平の団派は欧州列強、江沢民はロックフェラー財閥を通じた米国派。党内の内戦はいまのところ五分五分と聞いた。どう転ぶか。どんな混乱になるのか。
ドイツ銀のコワーい話
10月13日にイスラム年が終わると、カタールの国営ファンドの日本株売りはウソのように終わった。共同して売っていたヘッジファンドも矛をおさめた。
8~9月の東京株式市場は外人売りが4兆円。それを政府(GPIF,日銀など)が3兆円買い、個人投資家が1兆円買ってあの程度でおさまった。
安保中心の安倍内閣の姿勢も、3兆円の補正予算を国債発行なしで済ます、と、経済、市場重視に変わった。黒田バズーカ3は不発だったが、米FRBの姿勢をみればこれまた当然、カードは温存されている分、強味だ。
あとはドイツ銀行の不安が残る。CDSをどんどん損切りで売って手元資金を作っているらしい。人員の四分の一削減といいコワーい話ばかり。メルケル首相は何とかどこか身代わりをツブしてドイツ銀行を守るだろうが。マリオ・ドラギECB総裁の量的緩和方針もこの問題をヨコ目にニラんでるのだろう。
押し目は買い
それでも秋の押し目は、買い。私は強気だ。
映画のセリフから。
ロシアンマフィアの親分が、息子が車を奪い、犬を殺したキアヌの名を聞いて言う。「大変なことをした。その男はエンピツ1本で三人殺した男だぞ。」
親分は予想を超える被害をこうむることになる。
予想を超えて事態は悪化することもある。警戒心を忘れないことにしよう。
映画「ジョン・ウィック」と中国のQEとドイツ危機(第798回)
今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ
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