日本人が知らない中国投資の見極め方【2】
10月にも開通!「香港-上海直通列車」で上がる株

公開日: : 最終更新日:2014/09/19 マーケットEye ,

アナリスト 周 愛蓮
この10月にも香港と上海の株式の相互売買が可能となる「香港ー上海直通列車」が開通する。これにより、海外の個人投資家が中国本土株を購入できるようになる一方、中国の投資家も香港の株が購入できるようになる。市場で何が起きるだろうか。
メッセージ内に写真を表示2014年4月10日、香港と中国の証券監督当局は、香港証券取引所と上海証券取引所の株式の相互売買を認可すると正式発表。その後、取引ルールの制定やシステム整備が進められ、10月に正式スタートを切ることになった。これにより、従来は中国政府の認可を受けた一部の機関投資家しか購入できなかった中国本土株を、日本を含む海外の個人投資家でも購入できるようになるのだ。
相互売買に参加できる投資家の要件に関し、香港では特に制限は設けない方針だ。一方、中国本土では香港株に投資する個人投資家は、株式口座の残高金額が50万元(約800万円)を下回らないこと、と規定している。
相互売買の開始に向け、香港証券取引所は上海に子会社を設立し、香港からの売買を取り次ぐ。一方、上海証券取引所も香港に子会社を設立し、上海からの売買を取り次ぐ。投資家は、それぞれ現地の証券会社を通じて発注・受渡しすることになる。

9割が購入可能に

相互売買の対象に指定された銘柄は、香港市場では、ハンセン大型株指数と中型株指数の組み入れ銘柄、香港取引所(H株)と上海取引所(A株)で同時上場している銘柄の合わせて266銘柄。
上海市場では、上海180A株指数と上海 380A株指数の組み入れ銘柄、香港取引所(H株)と上海取引所(A株)で同時上場している銘柄の合わせて568銘柄。これは、それぞれ香港市場の時価総額の約8割、上海市場の同約9割を占める。
投資家の最大の関心は、相互売買開始後に、香港市場で買われそうな銘柄だろう。

中国のポータルサイト最大手企業であるシナ(新浪)が中国本土で行った調査によると、76%の投資家は香港株式の投資に「興味がある」と答えたという。相互売買が可能になった後、「投資資金の3割以上を香港株に投資したい」と考えている投資家が38.1%、「1~3割を香港株に振り分ける」と答えた投資家が34.8%を占めたという。つまり、株式投資できる富裕層の大半が香港株への投資に興味を持っていることになる。相当の中国マネーが香港市場に流入するだろう。
では、中国の本土投資家は香港市場のどんな銘柄に投資するだろうか。

■中国での好感度、知名度

やはり、中国の投資家が投資したがるのは、中国本土での好感度や知名度が高くかつ業績が良好な企業で、本土市場に上場していない銘柄。これらの銘柄は、本土の投資家に物色されやすいと考えられる
たとえばIT大手のテンセント・ホールディングス(0700、以下数字は香港証券取引所のティッカー)。ほとんどの携帯電話ユーザーは同社のアプリを利用しており、知名度が抜群。業績は上場来増収増益が続き、なお拡大中だ。しかし香港市場でしか上場していない。
廃棄物処理大手の中国光大国際(チャイナ・エバーブライト・インターナショナル:0257)も注目だ。国務院(中国の最高行政機関)の直轄企業「中国光大集団」の傘下企業として、廃棄物処理で中国最大級の企業で、環境保全重視の政策の追い風を受けて経営規模を拡大中だ。本土市場では環境関連銘柄が数多く上場しているが、同社のような規模に相当する企業は見当たらない。
スマートフォンやタブレットに使用される音響部品で世界最大手とされる瑞声科技(AACテクノロジーズ:2018)。アップルやサムスンなどの大手に部品を供給しており、大幅な増収増益を続けているが、香港市場のみの上場となる。

 

■香港を代表する銘柄

香港資本を代表し、中国政府との太いパイプを持つ企業も選好されよう。香港最大の不動産開発企業の長江実業集団(チョンコン:0001)。この長江実業グループ傘下の多国籍企業で、港湾事業、小売業、不動産開発、インフラ、通信事業までを手がける和記黄埔(ハチソン・ワンポア:0013)。香港不動産大手の新鴻基地産(サンフンカイ・プロパティーズ:0016)、世界的有数の金融グループである匯豊控股(HSBCホールディングス:0005)などだ。

 

■本土に類似業種がない企業

独特な経営特色があり、本土に類似の業種がない企業も選考される可能性が高い。たとえば本土では禁じられているマカオのカジノ企業。ほぼ全銘柄が上場しており、中でも特に大手が注目されよう。
澳門博彩(SJMホールディングス:0880)、銀河娯楽(ギャラクシー・エンターテインメント:0027)、金沙中国(サンズ・チャイナ:1928)、永利澳門(ウイン・マカオ:1128)などだ。

■相互売買でビジネスが拡大する銘柄

香港ー上海直通列車の開通でビジネスの拡大が期待される銘柄も注目されよう。その代表が香港証券取引所(ホンコン・エクスチェンジ・アンド・クリアリング:0388)。相互売買業務そのものを行う証券取引所だ。
上海と香港の両市場で展開する大手証券会社も恩恵が大きい。香港で上場している本土の大手証券会社では、中信証券(CITICセキュリティーズ:6030)、海通証券(ハイトン・セキュリティーズ:6837)がある。

次回は香港市場で海外の個人投資家が購入できるようになる中国本土株の中から有望銘柄を紹介したい。

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