中期サイクル安値を迎えた。いったん急反発

 

(2月14日配信)

中国懸念に欧州金融不安 リスクオフの売り殺到

2月12日までの動きは一方的なリスクオフ相場だった。皮肉にも、本来なら円安株高に作用するはずだった1月末の日銀のマイナス金利導入策は、売り方には絶好の戻り売り場面を作った格好となり、その後の下げが大幅となったことで、金融派生商品の買い方の強制的処分売りを誘発し、記録的な急落の引き金となった。

日経225は月初17905円から14865円まで3千円以上の急落。12月1日の20012円からは実に5千円以上の大幅安である。中心的指標である米10年債利回りは前月末2%付近だったものが一時1.57%まで低下、ドル円は日銀緩和直後121.5円まであったが瞬間111円割れまであった。

欧州銀行株の下げ大、邦銀もツレ安

特に下げが厳しかったのは銀行株で、劣後債の利払い不安が台頭したドイツ銀行は1か月前の20ユーロから13.03へ、ギリシャ不安に連動しやすい仏銀ソシエテジェネラルは39から26.61まで下げたため、影響軽微のはずの三菱UFJが700円弱から432円、三井住友銀が4200円から2820円までツレ安することになった。

これに比べると米国株は比較的平穏で、NYダウは直近安値15503ドルまでで1月20日の15450を上回っており、12月初めの17901からの下落率も13.4%に留まっている。景気減速懸念が燻るものの、NYダウは株式の中での低リスク銘柄という認識がなされているものと思われる。しかし堅調を維持していたNASDAQは主力銘柄の下げがきつく18.7%の下げとなっており、変調の兆しは否定できない。

根幹に原油安

筆者の認識では、欧州金融の問題は取ってつけたようなもので、根幹にあるのは原油急落に伴う資源国のSWF(国富ファンド)の大規模な換金売り、それに乗じて買いポジションを膨らませていたヘッジファンドの方向転換である。

また不安を煽り立てているのは中国経済への不信感であり、ジョージ・ソロス氏の人民元安予想に政府が正面切って反論したのは逆効果だった。

中国は金融規制できずバブルは崩壊する

武者陵司氏は中国では急速な資金流出が起こっており、政府が早急にこれを封じないと中国は深刻なバブル崩壊に陥り、打撃は世界経済に波及すると指摘している。

だが人民元はIMFのSDR(特別引き出し権)構成通貨として認められ、主要通貨の仲間入りしたばかりで、面子を重んじる中国政府がそれに反する金融規制に踏み切る可能性は皆無に近い。つまり当面は中国バブル崩壊を前提に相場を見る必要がある。

金高騰の理由は投機筋の売りポジション

今のマーケットがいかにおかしな市場であるかを象徴しているのは、金価格の急騰である。金先物は昨年末1060ドルで終了したが、先週1260まで上げる場面があった。米国の年内利上げ予想がどんどん後退しドルが下落したせいもあるが、債券が大きく買われデフレ観測が強まる中で、本来は国際緊張やインフレ懸念が強まった時に買われるはずの金が急騰したことは、投機筋の売りポジションが非常に大きかったことを意味する。

要するに、上げている銘柄も、下げている投資対象も、あまりに膨大な投資家のポジションが存在するため、大きな方向転換の際には日常的な逆張り投資の注文など簡単に吹き飛ばされ、怒涛のような動きが起きてしまうのである。

春節明けの中国市場に注目

現在、世界経済に大変な災厄が訪れる兆候は見られない。仮に中国で春節明けの工場夜逃げが表面化し、上海総合指数が10%以上の急落に見舞われたとしても、だ。その程度ならすでに織り込まれている。

習近平氏は「今年の最大の経済課題は過剰生産設備の調整だ」と繰り返しており、必然的に製造業を中心に投資需要は大きく減るだろう。資源価格の急落はそれを読み込んでおり、今更驚くことが始まったわけではない。

資源下落で消費国にプラス効果が出てくる

資源価格の下落は、そっくり産出国から消費国への所得の移転に繋がる。消費国、輸入国では莫大なコストダウン、実質所得増効果が発生している。産油国では強烈な需要減とデフォルト騒ぎが避けられないだろうが、消費国でのプラス効果は少し遅れて顕在化するはずである。資源の下げ幅が大きかったからその効果も大きい。

シャドーバンキングが推定GDPの50%、500兆~600兆円規模に膨張している中国を除けば、安全網が整備されたため、リーマンショックのような流動性危機が起きる心配もない。そこまで読み込むと、現在の日本の株式市場は明らかに売られ過ぎだ。

下げ一巡後はいったん反発の公算

予想したとおり1~2月に中期サイクルの安値が到来しており、水準としてもTOPIXは12年央の安値と昨年高値の中間である1197を下回り、半値押しを達成。減損、評価損ラッシュにより、日経225採用銘柄全体の予想PERは今期12.33倍となったが、四季報よりずっと固めの筆者予想では来期10.77倍、PBRは0.99倍である(ただしインデックスベースでは今期15.65倍、来期13.92倍)。移動平均線からの下方乖離率も記録的水準で、近くテクニカルリバウンドの公算が高い。

前回書いたように安倍首相は「消費税率引き上げの再延期を国民に問う」という理屈で国会期末6月1日に解散し衆参ダブル選挙とする公算が強い。10~12月GDPはマイナス成長と予想され、再延期を求める声も強まるだろう。選挙後は急落すると思うが、株式市場はいったんは好感して上がるだろう。

(了)

 

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

マーケットインサイト<2016年2月号>

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