【初・中級者向き】映画「セラヴィ」と中国習近平の野望の失敗

2018・7・22

フランスで大ヒットしたコメディというので観たが、確かに笑える。主な役としては一人も若い女優は出てこず、50代のジイさんばかり、日本なら企画段階でボツだろう。

 

ウエディングプランナー会社の社長が主役で、美しい古城でのウェディングを頼まれる。ところが新郎がとんでもない自己顕示欲のカタマリで、3時間もスピーチしたり、アドバルーンに引き上げられて大回転して見せたりー。

一方雇ったスタッフもダメ男ばかりで、カメラマンは客に出す料理をツマミ食い、ウエイターは新婦にベタぼれして迫るし、バンドのリーダーは客のリクエストは何もできないしー。料理に出すカモ肉は冷蔵庫のプラグが抜いてあって腐っているしといった具合。要するにシッチャカメッチャカ。

中国、北載河の乱

今の中国、この映画のように混乱が発生しているのではないか。

8月早々と聞いている北載河会議は党の長老たちが習近平の対米外交政策の失敗を厳しく追及すること必至。一部の報道によると7月初めに江沢民、胡錦涛、朱容基、温家宝などの長老たちは、党中央に書簡を送った。習指導部の近年の実績は評価するものの、個人崇拝や左派急進主義を批判する内容で、経済・外交政策の変更を求めるものだ。

 

先週、富士通総研のミーティングがあり柯隆さんが「先週まで北京にいたが」と前置きして①長老たちは今回の米中貿易戦争激化という習近平の失策を見逃さない②厳しい追及に答えて担当者の劉鶴副首相が辞任、9月に王岐山副主席が訪米して事態の収拾にあたる、と述べた。(7月17日)

台湾での民主化シナリオ再来?

また野村総研のリチャード・クーさんも17日付のメモで「一つの可能性として『蔣経国シナリオ』が中国内でささやかれている」としている。

 

このシナリオとは、台湾の1980年代に国民党以外の野党の存在を認め、今の民主的な政治体制に移行した歴史を指す。主導したのが蒋介石の息子の蔣経国。国民党政権の秘密警察のボスまで務めた人だが、独裁的な権限を完全に握ってから野党の存在を認め、そこから李登輝時代が始まった。

 

このお二人の見方のどちらが正しいか、私には判断がつかない。しかし次の事実は書いておこう。

①7月に入り、共産党機関紙の人民日報から習近平の名前が消え始めた。

②12日には国国営中央テレビは「習近平」と呼び捨てにし国家主席とか党総書記の肩書はつけなかった。

③香港の新聞頻果時報は「北京市内の習近平氏の写真やポスターを北京警察当局が撤去せよと通達した」報じた。

④11日付の国営新華社通信電子版は個人崇拝についての批判を展開した。

⑤北京や上海で「中国の夢」や「偉大なる復興」といった習語録の横断幕が外され始めた。

⑥李克強首相の存在感が急に高まった。7月上旬にノーベル平和賞の故・劉暁波氏の妻のドイツへの出口が認められたが、習体制では、不可能なこと。李首相の主導とされる。

鄧路線の継承者が党首昇格?

また一部のネット投稿で(柯隆さんも言及したが)汪洋政治局常務委員(62歳、序列第4位)の党首昇格という声は注目を集めた。汪洋氏は鄧小平が見出した有能な政治家で、鄧路線の継承者と見られている。

 

以上からみても「何か」が中国の激しい権力闘争の中で起きていることは間違いない。結果として習近平氏の世界一の野望が後退することも間違いあるまい。

 

中国経済の方に目を移すと上海株式市場は1月のピークから2割以上下落し、為替市場でも人民元は対ドルで5%下落した。最近四半期の成長率も(どこまで正確かわからないが)これまでの高度成長に比べるとまあ大したことはない。また現在の中国が「中進国のワナ」に陥っており、脱却は容易でない。

人民元は1ドル=2元まで上がる

このために2015年に「中国製造2025」を産業政策の最優先課題とし、多額の資金もつけると公言した。

 

今回の貿易戦争の始まりとなった340億ドルの品目選択には、これらの製品が選ばれている。また中国側が要求する強制的な技術移転も欧米の企業の不満のマトである。

 

先日TVで自民党の片山さつき自民党政調会長代理は「1980年代の日本は20年かけて①円高(260円→75円)②自由化③対米工場進出(自動車は輸出177万台、現地生産2倍以上)をしたが、中国はまだ何もしていない」、と述べた。

 

今後人民元は目先こそ大幅下落するだろうが、中長期では内需を振興し輸入は拡大。人民元レートも対ドル8元が6元台になった程度でなく、円の例でいうと対ドル2元ぐらいまで人民元高が続くのではないか。

 

日本株市場では9月に貿易戦争が中国側の敗戦で終われば、割安で長期安定政権の日本に外国人買いが強力に再開されよう。すでに7月中旬から買い始めたので、サマーラリーは続く。円レートも再び円安に振れるだろう。

 

映画のセリフから。ウェディングプランナー会社の社長が長い間の友人のカメラマンに言う。

「もう時代がスマホに変わったので専業の写真はいらなくなったんだ」。共産主義はソ連崩壊でなくなり、わずかに冷戦は北東アジアに残存しているが、これも西側の勝利で終わるのではないか。せっかく独裁体制が長期にわたると考えていた習近平氏にはこう申し上げよう。

「セラヴィ」(人生ってこんなものサ)

映画「セラヴィ」と中国習近平の野望の失敗(第918回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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