【初・中級者向き】映画「日日是好日」と私の(例によって)早すぎるシナリオ
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故樹木希林さんの主演に近い助演映画。黒木華さんと多部未華子さんが大学2年生から二十数年、お茶を習うというまことにシンプルな設定。対立があるわけではないし波乱万丈の物語でもない。
若い女性二人が茶道の所作を先生に教えてもらう。これがすこぶる丁寧に逐一写されるのだから、眠くなるかと思ったら飛んでもない。私は目を皿の様にして見入ってしまった。
四季の移り変わりや掛け軸、茶碗、茶花、和菓子、皆それぞれ意味があり、だからこその「日日是好日(にちにちこれこうにち)。映画では稽古場にかかっている額にある。
パンフレットにあるそのココロは「それが嵐の日であろうと、何か大切なものを失った日であろうと、その一日をありのままに受け止め、ひたすら生きれば、どんな日も、かけがえのない絶好の一日」。なるほど。
私は去る10月4日は時代が大きく変わった日として、後世に記録されると思う。
米ペンス副大統領がハドソン研究所で行った演説で、米国が太平洋で支配的な力を維持することを誓い、中国が最大の挑戦者だと特定した。事実上の新冷戦の開戦宣言といっていい。
またブルンバーグが同日、米アップル、アマゾンなどのハイテク企業に対する中国のハッキングを報じた(先々週929回)。
この「新冷戦」という時代認識。つまり落としどころのない長期戦で、経済的、経済的な打撃はあっても、米国は覇権を中国にとられるよりはマシ。代償としてハイテクなど米国のグローバル巨大企業が打撃を受けても仕方ない、と米国を支配する層が決断したのだろう。
だからこそヘンリー・キッシンジャーが「反中」に百八十度転換したに違いない。
でも、なぜペンスでトランプじゃないの?と考える私に26日、宮家邦彦さんのセミナーがヒントをくださったと思う。
宮家さんは中間選挙後の12月ごろに特別検査官が公聴会を開き、トランプJrや娘ムコのクシュナー、トランプ陣営が根こそぎやられる可能性を指摘された。
また私の質問に答え「トランプは相互依存の時代よりは、覇権争いの方が米国にとり大切。経済面では“合理的でない人”なので、リーマン球の経済的な騒ぎが発生することもあり得る」とも。
私が大変に参考させていただいている金融データソリューションズの箱田啓一さんは「11月21日に目先の底、次の12月25日に二番底が入ってそこから上昇相場が始まる」と予想しておられる。この予想が材料面からみても、的中の公算大、と私は考える。
恐らく私の「新冷戦」シナリオは(いつもそうだが)先見の、度が過ぎているのかもしれない。しかし、冷戦時代の世界は半分だった。今回は100%の市場が80%に減る。不況は当然だろう。
ついでだからもうひとつ。先見の度が過ぎているシナリオも書いておこう。それは「日本が漁夫の利」を得るという予想だ。
もっともこれは、IMFが7月16日に発表した資料に書かれているというと、多少は信頼していただけるかもしれない。
7月20日から21日にアルゼンチンで開かれたG20財務省・中央銀行総裁会議で議論するための参考資料。「貿易戦争によるグローバルなインパクト」という題だ。
資産の前途となる条件は次の四つだ。
条件1.実行済みの関税(鉄鋼25%+アルミ10%)と対中追加関税5百億ドル(25%)それに中国からの報復関税(25%)のえいきょう。
条件2.今後追加される関税(対地位輸入二千億ドル(10%)と中国による同規模の報復関税による影響。
条件3.米国が全自動車輸入にかける関税(25%)と各国の報復措置による影響。
条件4.信用危機。貿易戦争がグローバルなショックを与え、投資に対するリスクプレミアムを引き上げてしまうことによる影響(注、株価の大幅下落でしょう)。
その結果。米国は条件一から四まですべてのケースで経済成長率の足を引っ張られてマイナス(最大マイナス0・8%)になり。中国も同じで最大1・6%にも達する。(すべて1年後)中国は6・5%マイナス1・6%だから4・9%になる計算だ。
しかし、日本は条件三の自動車輸出すべてに米国が関税をかけた場合に0・06%ダウンするだけで、条件四の場合0・3%の影響を受ける。
株価の暴落を含む信用危機は全くは否定できないが、条件三は日本は大丈夫。日本は米国に174万台輸出する一方で、377万台を米国国内で生産、百五十万人の雇用と、輸出総額757億ドルを生み出している。
日本は、リーマン級の危機とひょっとすると日経平均約2万円割れが起きれば、安倍首相は消費税の一〇%への引き上げは、取りやめになるだろう。災いを転じて福という言葉でもいいし、ベートーヴェンの「第九」つまり苦悩を超えて歓喜へ、でもいい。このシナリオだと、やはりトランプからペンスへ、となるかも、一方米国の支配層が「戦いの最中にトップを変えるのは不利」と考えればトランプの首はつながる。
そうならば、ハイテク企業の株、つまりナスダックや半導体はダメだが、ダウの方はメチャ安にならないかも、と私は考える。
NY連銀はこのところ30兆円も金融を緩和し、長期金利は10年もの国債で3・2%台が3%すれすれに下落。限界的な金融緩和の信用乗数は米国の場合3・88倍で、日・欧の0・08と全く違う。NY連銀は特権を生かして、これ以上の信用危機を防ぐ対策を始めた、と見るべきだ。相当に先の見える方がいるんだろうなあ。
映画のセリフから。お茶の先生が言う。「すぐわかることと、わからないことがあるのよ。」私の言うことはいつも早すぎる。シェールガスでも、ジム・オニールが指摘し、ジョージ・ソロスが円売り日本株買いを始めたアベノミクス買いも、そうだった。10月5日に冒頭に述べたニュースを聞いて、翌週早々に私の弱気を「今井澂の相場ウラ読み」というボイスメッセージで主張した。その後の展開はご存知の通り。樹木さんが亡くなる直前にこの作品の撮影を頑張ったように、私も頑張ります。どうぞ応援してください。
(第931回)2018・10・28
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