【初・中級者向き】映画「華氏119」と中間選挙のトランプ勝利と相場の行方
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マーケットEye, 無料記事 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
「華氏911」ではブッシュ元大統領を大いにケナしたマイケル・ムーア監督が中間選挙を目前にして反トランプ映画を作った。「119」とは2年前の大統領でトランプが勝利宣言した日だ。
英文の予告編では「タイラント(独裁者)ライアー(嘘つき)レイシスト(人種差別主義者)ホール・イン・ワン」とある。ただ映画は単なるトランプ叩きではない。ムーア監督は、トランプ候補を大統領にした米国の民主主義の危機を、鋭くえぐりだした。
まずこの映画では、オバマとクリントン夫妻を批判。この三人が既得権を持つエスタブリッシュメントに譲歩や妥協を繰り返し、民主党本来の支持層の労働者階級から離れてしまった。またバーニー・サンダースを「スーパー代議員」制度によって下ろし、大統領候補にヒラリーを選んだことも批判する。
当然、得票数でヒラリーより下だったトランプが当選した選挙制度にも、批判の矛先が向かう。
ムーア監督は中間選挙で、差別的で独裁的なリーダーに打撃を与えるためにこの映画を作った。では11月6日の中間選挙は、吉と出るか凶と出るか。
今のところ、上院は共和党が有利。下院は共和党が議席を減らすと見られている。
調査会社リアル・クリア・ポリティクスの下院の世論調査だ。順に共和党の獲得予想数を示すと― 9月19日 189、10月25日 201、11月2日 196で、218が過半だからとても足りない。
ただ民主党の方も同じ順で、206、201、203。「トス・アップ」といわれる大激戦区が、40,29,36で、この動向次第ということになる。
それではトランプ大統領の支持率は、ということになる。
同じ日で順に示すと、アレレ?トランプ支持率は47%、48%、51%で上昇している。(ラスムッセン調査)。50%以上は就任以来、初めて。
とくに「強く支持」は33%、35%、37%と上昇。
一方、「支持しない」のほうは51%、51%、47%とここ数か月で初めて50%を切った。ムーア監督の反トランプは失敗らしく見える。きわどいがトランプ勝利、となるのだろうか。
好況はもちろんのこと、対中貿易戦争、移民数千人の行進岨止、再々減税。それにオバマケアの影響による30%を超える保険料引き上げによる不満もバカにならない。
では6日の中間選挙がどうなるか。民主党が大勝するとは私には思えない。逆に共和党が接戦州の半分をとって218すれすれ。法案次第で民主党議員の切り崩しでねじれ減少を防止できる可能性が高いと思われる。
では、NY株価は上昇するか。私は11月7,8日のF0MCの後に出るステートメントで、ほぼ100%、12月の追加利上げを示唆する方を注目している。
NY連銀は最近数週間、流動性を供給して長期金利(10年物国債)の上昇を抑え込んでいる。しかし、追加利上げを織り込みにかかった市場は止められないだろう。
となると、ヘッジファンドの大物ジェフリー・ガンドラック氏が予想する「長期金利3・5%」の危険ラインに接近する。NY連銀の特別措置が選挙で御用済み、となれば長期金利は急騰だ。
例の米中貿易戦争の「泥棒チップ」の問題もあり、アマゾン、アップルなどのハイテク銘柄が売られ、つれて米国株式市場も下がる、と見るのがリーズナブルだろう。10月5日からの急落の来現だ。
米中の方は、合意のプランを作れと命じたというブルンバーグのニュースで、11月2日、株価は反騰した。
しかし、米国を支配しているエスタブリッシュメントが、中国の興隆を許さないと決断したのだから、これで米中和解、なんて夢のまた夢だろう。だからこそ、ヘンリー・キッシンジャーが、反中,排中に百八十度転換している。そのココロを読むべきだ。11月2日の大幅上昇はごく短期の反騰だろう。
前にも書いたが金融データソリューションズの箱田啓一さんは、11月21日と12月25日を「潮目」とし、「日柄による調整か、2万円割れまでの下げの可能性」を指摘している。
12月に入れば、私が懸念している「新冷戦不況」を裏付けする具体的な数字が続々と出てくるはず。今の反発は前回の高値回復のだいぶ前に失速することになろう。なんともイヤな展開だが、ここはガマン、ガマン。年末から来年には明るい展開を期待しましょう。
映画の中でムーア監督はナレーションで「独裁者が成功するのは、膨大な数の民衆がうんざりし、諦めた時だけだ」と壊れ行く民主主義への危機感をあらわにした。私は市場の方での危機を予想しているが、まだ、ごくごく少数派。何週間でもこの警告を続けますが、逆にこの環境はいい銘柄を押し目買いする大チャンス。銘柄中心にこれからは、このブログのスペースを割くつもりです。どうぞよろしく。
(第932回)2018・11・4
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