映画「ジョーカー」と(恐らく)2020年のトランプ→ペンスの政変と株(第985回)
ウォール街の友人から、この映画を私がまだ観ていないと言ったら早く観て感想を聞かせて欲しいと言われた。どうせアメコミの世界、とバカにしていた私が間違っていた。まぎれもない傑作だった。たしかに日米とも大ヒットしているだけのことはある。
ダークヒーローもの、だけではない。米国社会の分断をテーマにしており、しかもその「分断」の発生を明確に描写しているところにある。
不況のゴッサムシティ(NY)。老いて病気の母親と暮らすアーサー(ホアキン・フェニックス)はピエロの扮装でサンドイッチマンをしてドン底生活をしている。
しかも、アーサーには緊張するとゲラゲラ笑いだす発作があり、それが原因でクビになってしまうし、シティの予算減で薬の供給を止められてしまう。
世間からは「KKO」(キモくて、金のないオッサン)とつまはじきされる。 ついに地下鉄車内で酔っ払い三人にいじめられ叩きのめされてついピストルで射殺してしまう。ピエロの扮装のため警察は見逃してしまい、群衆からはヒーロー扱いされる。
現在の米国。明年の大統領選挙を控えて、エリザベス・ウォーレン上院議員の躍進ぶりが目立つ。
最新の世論調査では、本選でトランプ大統領と対決する場合、ウォーレン氏の支持率からみて勝利の公算大。
問題は彼女の政策パッケージだ。
①銀行は商業業務と証券業務に分割 ②フェイスブックなどのIT大手企業の解体③シェールガス採掘のためのフラッキング(水圧破砕)の禁止④原子力発電の段階的禁止⑤再生エネルギーへの100%切替え⑥民間の医療保険は禁止し政府運営の国民皆保険⑦為替へも介入し「管理」する⑧大企業への7%法人税増税⑨年間2万ドル以上の所得15%の社会保障負担⑩資産10億ドル以上の資産には3%の富裕税、などだ。
この政策パッケージを聞いた富裕層、巨大企業とくにメジャーオイルは、拒絶感を持ったに違いない。現在でもウォール街では「エリザベスならNYダウは25%暴落」といった観測が流れているほどである。
当然、民主党に政権を渡さないように、様々な工作が行われるが、失敗したらどうなるか?
トランプでは勝てないと確信したら、トランプのピンチヒッターとしてはペンス副大統領しかいない。対トランプ大統領弾劾にからんでの下院の正式調査決議にからんでの世論調査が問題だろう。
ピュー・リサーチによると、ウクライナゲートに関して大統領弾劾については60%近くが「電話への脅迫」を「行った」と回答。ただ弾劾は同時に前副大統領ジョー・バイデン氏にも打撃を与える。トランプ、バイデンが共倒れになり、エリザベス・ウォーレンが有力になった場合、やはり唯一の切り札ペンス副大統領の登場という作戦しかないだろう。
トランプ弾劾については、わが国では「上院の3分の2が実現しなければ弾劾は成立しない」という予測が行われている。
しかし、今回のウクライナゲートが内部告発(公益通報者として保護される)がきっかけになった。次に納税申告書が税務関係者の内部化告発が行なわれれば、弾劾と同じ効果がでる。
恐らく、米国憲法修正25条第4節を利用して、トランプ解任、ペンス大統領登場になるのだろう。
これは私だけではない。ウォール街ではかなり前から噂されている。半分ジョークだったのが、ロシアゲートだけでなくウクライナゲートでも内部告発者の登場以来の「次」がでれば致命的。これが発表されれば、閣僚、主要委員会の長の過半が賛成すれば、大統領は解任され、副大統領に政権は移る。これが米国憲法修正第25条の第4節の規定である。
10月3日のCNNテレビでペンス副大統領がしばらくワシントンから離れると報じた。同テレビは「ペンス副大統領がトランプ大統領との間で距離を置くべきだと考えている可能性もある」とも。
問題はこの政治的混乱が発生する前でも広く米国で話題にかなり関心が集まった場合だ。
ご存知の通りNYダウ平均は、歴史的高値を更新しつづけている。現在の勢いではまだ、上値を追うだろうが、その後に悪材料がでれば大幅下落が発生するのが市場の常識だ。
もちろん、以上の見解は全く私の主観的なものである。発生しない可能性も勿論ある。
しかし私なりにこの映画からいいセリフを見つけた。そのアーサーのセリフで、今日をシメたい。
「(TV司会者の)マレーくん、喜劇は何だと思う?それは結局のところ主観に過ぎない。善悪だってそうだ。何が正しく、何が間違っているのかを決めるのは主観だ。」
ついでにもうひとつ。
アーサーが言う「俺がくるっているのか、それとも世間サマか?」
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