映画「駅馬車」とセリング・クライマックスの接近と、コロナウィルス ワクチン (第1001回)
ここ数週間、私は家の中に閉じ込められ、新作を見ることは不可能。幸い自宅にはヤマほど好きな古典作品があるので、ブログのテーマをあれこれ考えながら、DVDを選ぶのは楽しい。
久しぶりにこの西部劇を観たが、新鮮な驚きと快感は変わらない。
荒野を疾走する駅馬車。追うインディアン。乗り合わせた乗客たちの織り成す人間模様。最後には1対3の決闘シーンへ。ドラマとしてもエンターティンメントとしても上乗の出来栄え。
私は確か11歳の時見たが、救援の騎馬隊が、弾丸を打ち尽くして絶体絶命の駅馬車を助けに来るとき、嵐のように映画館の中で拍手が巻き起こった。70年以上たった今でも、あれは忘れられない。
コロナウィルス・ショックで朝から晩まで身動きが取れず、投資家は株を売って債券を買うリスクオフ。世界の株式時価総額は1兆8000億ドルも減少した。
当然、テクニカル指標は悪化する。宮田直彦さんが期待していた12か月と24か月の移動平均のゴールデンクロスは消滅。トレンド分析でも三井住友アセットの市川雅浩さんによると、2012年からの上昇トレンドは「下抜けした」。中期的には、さもありなん。次のトレンドまで時間がかかるだろう。
しかし、ごく目先は、底入れから反発に入りかけている。
大和の木野内栄治さんは、NYダウの連続下落記録は8日間で、歴史的に見て6回しかないという。すでに2月28日で7連日下落。月曜で下げれば終わり、だそうだ。なるほど。
木野内さんはこのほか、騰落レシオが50%台で経験的にも底値圏だし、先物売りにもセリング・クライマックスの兆しあり、と指摘している。
私もそう思う。ヘッジファンドの運用担当者たちの下値目標だった日経平均2万1000円近辺に達したこともあり、今週月曜が安ければ、火曜日の前場でも買いは報いられると見る。
もちろん、あくまでも急落の後のリバウンドであり、下げの半分も戻せばまあ万歳だろう。それは次の三大難問が控えているからだ。
第一は言うまでもナム新型コロナウイルス肺炎のパンデミック化不安。世界不況につながる。
第二は米国大統領選。バーニー・サンダースの社会主義政策への不安。それに私がこのコラムに指摘しているトランプ大統領の納税申告の公表問題。
第三は日本。オリンピックが開催できるのか、どうか。ダメなら年後半にかけ、先ごろの消費税増税のツケ回しもあり、大不況突入必至となる。
どれも答えの難しい、文字通り、先行き不透明のムードを掻き立てる不安材料ばかり。
ただし、実は三つとも、意外な解決策がありそうだ。少なくとも、二つは。
っ説明しよう。
このところ米ナスダック市場で急騰を続けているモデルナ(チッカーMRNA)である。コロナウイルス向けワクチンの開発を(通常1年以上)成功。全米国立衛生研に納入した。
一方、日本では富山大・富士フィルムのフアビビラビル、中国ではレムデシビル。ただこれらは患者の免疫を補完するもので、ワクチンの効果にはかなわない。やはりモデルナがコロナ関連銘柄ではNO・1だろう。(この項はスフィンクス藻谷俊介さんのコメント)。先行きはまず、大丈夫。
第二の方はわからない。最近になってトランプ大統領は第1000回でも書いたルース・ギンスバーグ最高裁判事を含めた二人のリベラル派最高裁判事への批判を始めた。自信がないのかなあ。
もうひとつ。バーニー・サンダース上院議員人気も心配だ。18歳から26歳までの若い投票者たちが政治に目覚め始めたのか。2018年の中間選挙では14年の20%から36%に急伸。全体の42%→53%への40年ぶりの高水準を支えた。この層が大統領選にどう影響するか。
第三の東京五輪。IOCの内々の依頼で盛夏から開催時期の後ずらし(9月または10月)を検討していた。これを私はさっそくこのブログにも書いたし、一部には電話までした。
しかし、残念だが、結局はダメだった。五輪の大スポンサーの米国TV局がOKしなかった。勿論ロンドン説はIOCがダメとみているからいいが、あとは1年ずらし、しかない。恐らく、これだろう。
それでも消費税の打撃もあり、2021年に東京五輪があっても本年後半と明年前半はどうなるのか。ここぞとばかり、大不況を言う向きが出ることは目に見えている。
しかし、そうならないと、私は、確信する。
理由は次の通り。
まず、コロナウィルス肺炎が1年も2年も続くはずがない。前記のモデルナ社のワクチンを想起してほしい。
世界不況も、まず起こらない。どの国の為政者も同じだが、谷底に向かって走る自動車をそのまま放置するバカはいない。金融緩和、財政出動、何でもあり、の世界である。特に中国はなりふり構わずやるだろう。
また、いったん止めた旅行なども、安心となれば手元に資金がある向きは再開するし、街中に出なかった人々は、鬱屈を晴らすだろう。SARSの時には、世界のGDP成長率はこのウさ晴らし需要で0・6%上乗せしたことをお忘れなく。
前々も申し上げたが、やはり「災害に売りなし」なのである。
映画のセリフから。アパッチ襲撃の危険のある地帯へ駅馬車を進めるべきかどうかの議論の中でトマス・ミッチェル演じる酔いどれ医師が言う。
「わしは哲学者であり、運命論者でもある。危険と死はどこにもある。矢に当たらなくてもどうせ酒で死ぬさ」。私もそう思う。信長じゃないが、死ぬるは一定。生きることを充実させるのが第一だ。
セリング・クライマックスの後、一定期間の調整期を経て再び上昇トレンドが始まるだろう。その時期、主題、妨害因子などを考えると、ワクワクしてしまう。私はそうした予想が好きでこの商売を選び、84歳まで生きている。前回はジム・オニールのメールに助けられたが、今回はどうだろうか。楽しみ、楽しみ。
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