映画「影なき狙撃者」と中国の戦争準備、そして「まだまだトランプ」(第1036回)

 1962年公開のこの映画は、翌年のケネデイ大統領暗殺事件を予告した作品として、再評価されたことで有名。

 朝鮮戦争で中国の捕虜となり、マインド・コントロールされた兵士が殺し屋と化して帰国。大統領を暗殺しようとする。洗脳された殺し屋はトランプのカードで意識を操られるが、それ以外の時は普通の生活をしている。

 この殺し屋兵士はローレンス・ハーヴエイ、それを阻止しようとする上司はフランク・シナトラ。中国人スパイとの大格闘は、後の007ものにも影響を与えたともいわれる。

 中国は自国のためなら、どんなことでもやる、という印象は、この映画から広まった、と言っても過言でない。近年の中国の行動はこの印象をウラづけた。

 私は以前から、今回の米国大統領選挙後の混乱に乗じて、習近平主席が自分の地位を守るため、南シナ海でコトを起こす、との強い不安を持っている。過激な国家主義(ウオールストリートジャーナルの指摘)もこの不安を後押しする。

 折も折、10月28日付でニッセイアセットマネジメントのリサーチフェロー兼エコノミストの佐治信行さんが、この不安をはっきり指摘しておられる。まず、題から示す。

 「中国貿易統計から米中対立と最終決戦に向けての中国の準備が見える。」

 要点のみを以下に記す。

 中国は「一つの中国」が自国の核心的利益だと従来から主張。マカオ、香港、そして台湾の飲み込みを企画している。対象国のGDPとの比較が中国の有力都市が、その規模に追いつき、追い越しが見えた時に行動を起こす。

 香港を例にとると、2009年に上海市、2011年に北京市、2018年には深セン市に抜かれた直後の2019年に「逃亡犯条例改正案」、2020年には「香港国家安全法」。一国二制度は著しく制限されている。

 台湾はどうか。同国のGDPは2019年に6112億ドル。上海市の5334億ドル、北京市の5130億ドルが迫っている。香港ほどではないが、行動の準備が始まってもおかしくない。

 佐治さんは10月13日発表の9月の輸入額の急増に注目している。8月が前年同月比マイナス2・0%だったが、9月には月13・6%と激増。けん引役は半導体で、台湾、韓国が中心。

 中国国内での半導体生産は加速している。9月の生産数量は209億個、前年同月比で23・0%の増加。米国がファーウエイ製品を輸出管理規制リストに挙げてから、年率26・9%の急増ぶりである。

 この大増産にもかかわらず、半導体の在庫は落ちてきている。このままでは明年4~6月期になると、半導体の不足が表面化。いわば兵糧攻めの効果が出る。そこで米国側は一層の輸出規制をかけると、佐治さんは予測している。

 いわば中国の敗北が、米国の圧力強化によって起きる、という結論だ。

 これに対し、中国が(かつての日本軍部のように)兵糧が尽きる前に、大統領選直後の米中の社会不安に対し、積極的にコトを起こす可能性を指摘するご意見もある。

 ヘッジファンド情報では、バルナソス・インベストメントの宮島秀直さんと並んで横綱級の情報を提供してくれるSAIL代表の大井幸子さんだ。

 この方とはTV番組で1年ほど日米に分れて番組を作ったこともあり、私は心から尊敬している。

 論旨は二段構え。前半は大統領選挙の直後に米国内の混乱が続く。後半は「中共対国際連合軍の限定的な戦闘は六か月つづく」。

 まず混乱の方。すでに米国では8600万人が期日前の投票を済ませている。バイデン候補のスキャンダルは呆れるほどだが、期日前なので、この情報を聞いていない。また米国のマスコミ全体がこのスキャンダルの報道をわざと遅らせた、そこで開票直後はバイデン有利。

 トランプ氏が敗北宣言はしないだろうから、州によって開票が遅れることもあり、11月半ばまでバイデン氏が優勢。この間にデモ、暴動が発生しそうだ。実に74%の米国有権者が「勝敗がつかないまま争われることになる」と予想している。

 ここから先は大井幸子さんのご意見にプラスして、私の推測も入れて、このブログの結論としたい。

 米国内の混乱が続くと、前記した佐治さんの「兵糧攻めに対する中国の逆ギレ」で中国が台湾海峡から尖閣諸島への軍事攻撃が行われるリスクが高まる。

 すでにこの海域では10月26日から11月5日まで「キーソード」(日米共同統一演習)が実施されている。

 大井さんは「今でも一触即発の状況下にある」と警鐘を鳴らしている。また、「中共対国際連合軍との限定的な戦争が6か月ほど続き、2021年4月~5月には連合軍が勝利し、新しい秩序が見えてくる」とも。

 大井さんは11~12月には「戦時下の株高が発生する」と予測しておられる。しかし同時に「私にトランプの勝利を予想している」「しかし11月の最初の週には、長期金利とVIX指数(恐怖指数)が上昇し、株価が急落するリスクが高まる」とも。

 私も11月のNY株急落につれて発生する日本株の押し目買いが最良の戦略と考えている。

 しかし、このシナリオにはある落とし穴がある。沖縄県の中の独立論者である、このアホどもが仮政府を樹立し、中国が義勇兵を大量に派遣して、沖縄を実質的に支配する。まあ、大方の日本人は夢想すらしないシナリオだ。地図を見れば、ここさえ支配できれば、台湾ののど喉元を抑えられる。日本の防衛力は左派の圧力で憲法を含めた法律でガンジがらみになっており、行動が制限される。

 しかも、現在の戦争は、電磁波を用いてミサイルなどの戦力が使えないままに勝負が決まる。ロシアのウクライナ制圧の時のように、戦車の音なんかがないままに、いつの間にかロシア兵に囲まれてしまった、という戦争である。この事態が起きてから、始めて日本人は、憲法改正をしなかったことを後悔するだろう。

 そんな事態となれば、オリンピックなんて夢のまた夢、ということになり、2021年は日本の暗い年になりかねない。

 私としては珍しく弱気の見方だが、確率は四分の一か、五分の一、と考える。

 映画のセリフから。殺し屋のローレンス・ハーヴエイが言う。「世の中には二種類の人間がいる。愛される者と愛されない者」。中国にとってはバイデンが愛する人、日本にとってはトランプが愛される人。

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