秀吉「備中高松城の水攻め」と新冷戦激化による日本株の再浮上(第1059回)
1582年、羽柴秀吉が毛利氏配下の備中高松城を攻めた戦い。秀吉軍の3万
に対し城方はわずか5千。しかし城の周囲は沼地で、細い道路1本で行ける構造、
三回にわたって攻撃したが敗退した。
そこで秀吉は沼の中の城という防御側の利点を逆手にとって、水攻めを決めた。
東南4キロ、高さ8メートル、底部24メートルの大きな堤を作った。土を詰めた
俵ひとつに銭百文とコメ一升という当時としては途方もない利で誘った。5月2
0日にわずか12日で完成。折しも梅雨時であり、200HAの湖が出現。
救助に駆け付けた毛利方も手を出せない。秀吉は信長に使いを出して親征を
請うた。信長は快諾して、明智光秀に出兵を命じた。秀吉はこれを毛利方に告げ
て和睦の交渉に入った。
ところが6月2日夜、明智光秀の謀反で信長は本能寺で自害。この報が6月
3日夜に秀吉に入り、一刻も早く毛利と和睦して明智光秀を破る必要が生じた。
翌6月4日に城主清水宗治は切腹し、毛利方は備中、美作、伯耆の三カ国を割
譲して和議は完了。秀吉勢は5日に高松から撤退して7日には姫路城に入り、
11日は尼崎に到着、13日に光秀と戦いこれを滅ぼした。「中国大返し」と「山
崎の合戦」ともに神速驚くべきだ。ここから柴田勝家を滅ぼした賎が岳の戦いま
で、ほれぼれとするほど秀吉の行動は美しい。
ではイマイさん、何で水攻めこのブログに何の関係があるのか。
私は今回、米国のバイデン政権が予想外の強硬さで、対中冷戦を強化中なこと。
それが泥沼という強みが、逆に、攻められる弱点にかわつたように、中国中心の
サプライチェーンが米国により「中国排除」の姿勢で再編されつつある。
バイデン政権は、2月末、サブライチェーンの見直しを命ずる大統領令を発動した。
百日以内に見直しがら迫れた業種は、レアアース、電気自動車用を含む大容量電
池、医薬品の四分野・1年以内に見直し作業の完了が要とされた六分野の中には
エネルギー分野の産業基盤」が入っている。
戦略国際問題研究所(CSIS)上級研究員のジェイン・ナカノ氏によると「発送電
事業に必要な運用・制御技術に含まれる装置や部品・エネルギー産業のさきでまた
生産工程に含まれる能力などが対象になると考えられる」ともしている。
同氏はまた「レアアースと電気自動車用電池のサプライチェーンの強化は、米国
国内製造業立て直しの最重要課題だ」(時事総研コメントライナー4月9日付)と
も述べている。
米国は中国依存のサプライチェーンの強化と再編成が急務となっている。
そのためだろう。
3月31日のG7貿易相会合では、3年ぶりに、暗に中国の補助金と知財行政
を批判する「市場歪曲的措置」という表現がよみがえった。3月中旬のアンカレッ
ジでの2プラス2の米中会談で、ブリンケン米国務長官の中国代表からTVの前で
20分にわたり面罵されるという事態が、伏線に入っている。
中国側の強気の姿勢が目立っている。これでバイデン政権に対して言われていた
対中政策が柔軟化するという見通しが変わった。
象徴的なことは、習近平国家主席を「総加速師」という強力リーダーとして称賛す
る表現がメデイアの世界で使われている。鄧小平の「総設計師」つまり改革、開放
を始めたすごい人、に次ぐ表現である。
現在の中国は「社会主義制度は優れており、米国をしのぐ超大国になる」という
超楽観論が目立つ。
習近平路線の代弁者で政権ブレーンの代表者の林毅夫(元世銀副総裁チー
フエコノミストによると―
「中国のGDPは2030年までに米国を抜き、同時点で沿海部全体と武漢、重慶
などは一人当たりGDPでも技術でも米国と同水準になる」と述べている。明年
の中間選挙を考えるとバイデン政権も強硬外交を止めるわけにはゆかない。
当然、日本を重視する。最初にワシントンで首脳会談を行うにあたって、我が国の
菅首相が選ばれたのは当然すぎる位だ。対中包囲網を形成する中核となる国だ
からである。
イマイさん 何と言いたいの?
最近の鉄鋼、化学、海運、などの株価の上昇は新冷戦による日本株の漁夫の利の
第三弾。
第一弾はファーウエイの経営苦境(酒造まで手を出している)によるNEC、富士通。
第二弾が半導体部品、部材、製造装置メーカー。
第三弾の銘柄群は7カ国によるCOCOMの可能性の織り込みかけていると
私は考える。
COCOM(対共産圏輸出規制委員会)とは1949年にパリに設立され、
戦略物資や軍事技術が自由主義圏から流出しないようにした組織である。
加えて、こうしたオールドネームには、来季大幅増益の期待がある。三井住友DS
アセットマネジメントの除く金融、ソフトバンクグループの488社の中の22年度
純利益は63%の大幅増。今後決算発表が相次ぐので、さらに上方修正の期待
がある。
うまい具合、と言ってはナンだが、そんなバカなでカラ売りが結構多い。
踏み上げ相場も加わるだろう。
終わりに高松城主清水宗治の切腹の折の謡曲を書く。
「川舟をとめて違う瀬の浪沈
浮世の夢を見習はしの
驚かぬ身ぞ はかなき」
昔の武人の教養と覚悟がよくわかる。私も死ぬときにはー。やっぱり無理だろうなあ。
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