映画「ベイビー・ブローカー」と中国経済の変調と、トランプ再選の可能性。新段階に入った円安と私の強気。(第1122回)
是枝裕和監督の最新作。カンヌ映画祭で、主演のソン・ガンホが韓国人初めての主演男優賞、作品は審査員賞を獲得した佳作である。
韓国で撮った韓国映画だが、是枝監督としては「家族とは何か」というテーマを追求した点で、「そして父になる」と「万引き家族」と3部作を構成する。
子供を育てられない母親が赤ん坊を預ける「赤ちゃんポスト」。
預けた赤ん坊を、違法な養子縁組を斡旋して、仲介料をせしめるブローカー(ソン・ガンホ)と仲間が赤ちゃんを横取りする。それを
人身売買を監視する刑事が見張っている。
母親が不審を抱いたので、ブローカーの2人は一緒に里親探しの旅に出る。ソン・ガンホと仲間も、捨てられた子供を育てる施設の出身。顔を出したら、1人の少年が車に乗り込んで無理矢理参加し、5人でプサンからソウルまでの旅が始まる。
母親には実は暗い過去がある。売春をさせられ妊娠し、相手を殺してしまう。
結末は書けないが、観客にとって重いラストで正直言って余り後味は良くない。
人間同士が旅をしている間に仲良くなり、はじめは赤ん坊を高値で売ろうとしていたが、最も相応しい親探しに血道をあげる。
「変化」がこの映画のテーマだ。
「変化」が明瞭なのは、第一に中国経済の激しい落ち込みである。
最新の統計の4月の数字。住宅着工は前年同月比47%減、小売り売り上げは11%減少した。
しかし景気刺激策のために利下げは不可能だ。
中国の長期債は米国より利回りは低く、外国人投資家は3ヶ月で1000億ドル、株式と債券を売っている。人民元が下落していることはこのブログですでに指摘している。。
第二はパウエル米国連銀議長の「一段のドル高容認」発言である。6月23日の米国下院の金融サービス委員会の証言後の質疑応答で、「ドル高はインフレを緩和する効果がある」と述べた。
これで、日本側の要人が「急激な円安は好ましくない」とけん制して来た対ドル円レートが、今後も安くなること必至である。。
すでに英国エコノミスト誌による「ビッグマック指数」によると、世界平均を下回っている(チャートをご覧ください)。
円安メリットは先週のチャートでも示した通り、
- 企業収益を上昇させ ②設備投資や消費を増加させる。
貿易収支をみると、1ドル140〜150円すら不可能ではない。いや、なる公算が大きい。
第三の変化は2024年の米大統領選では有力候補にドナルド・トランプ氏が初めて出馬する可能性を米有力誌「ニューズウィーク 6月21日号」が報じたことだ。
同誌は2020年12月と2022年4月とを比較した支持率の表を掲げている。
「トランプが出馬したら」では
トランプ 56%→57%
ロン・デサンティス フロリダ州知事1%→15%
これが「トランプが出馬しない」ケースではデサンティス知事は31%、次点トランプJRの16%、ペンス副大統領の11%を大きく上回る。
私はトランプ=安倍の復活が好ましいと考えている1人なので、この報道は嬉しい。
さて、7月10日の参院選。過去の例をみると、関心が高まって高投票率だと自民敗北になる。一方盛り上がらないで、低投票率だと自民党は負けない。
今回はどうか。猛暑で低率の投票になる公算が大きい。
誰しも言うように野党が弱すぎる。加えて「盛り上げない」岸田戦略が成功しつつあるように見える。
株式市場は9月ごろに混乱があるあるとは思うが、年末か明春には3万円大台に乗せるだろう。
嬉しい話をひとつ。
大手で歴史の永い投資クラブ「特定非営利活動法人ICAS(イカス)」の最高顧問に就任した。
映画のセリフから。「生まれて来てよかった」。簡単なセリフだが、意味は重い。
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