映画「荒野の決闘」と来年のまだ注目されていない大変化の発生(第990回)
「私はクレメンタインという名前が大好きです」。ヘンリー・フォンダ演じ
るワイヤット・アープのラストシーンでいうセリフだ。
この映画の原題は「マイ・ダーリング・クレメンタイン」。米国民謡の題で
ある。女性に口説き文句は言えず、別れ際に名前が大好きというのが精いっぱ
い。私も若いころ、気が弱くて同じような状態になったことがあり、このワイ
ヤットとの性格には共感を覚えた。
お話はご存じの通り、アープ兄弟とクラントン一家との対決が軸で、これに
クレメンタイン(キャシー・ダウンズ)が絡む。この娘はドク・ホリディ(ヴ
ィクター・マチュア)の元婚約者という設定だ。
私がこの映画で大好きな一つのシーンのひとつ。旅役者が町にやってきて、
ハムレットを演じるが、途中で言えなくなったときに、ドクがすぐ引きとって
朗々としゃべるところ、たしかその前にローレンス・オリヴィエのハムレット
を観て、例の「To Be、Or Not to Be」の部分は暗記してい
たので、そのせいでもあったかも。何しろ高校時代の頭の柔らかい時代。水を
吸い込んだようにセリフを覚えることができた。今は全く覚えていないが。
そろそろ1年の終わり。プラン・ドウ・チェックが必要になる時期に入った
。
もちろん、ヒトさまにエラそうな口を利くほど私は大物ではない。私の間違
い(このブログ、著作、ボイスメッセージ、講演などなど)を列挙しながら、
来年へかけての大きな影響を与えるであろう変化や、政策を列挙してみたい。
第一はこの19年の内外経済を回顧してみると、失速が回避されたことが大
きい。相撲に例えれば相手力士の押しを土俵際で耐えたようなものだ。
最大の貢献者はまず米国FRBだろう。政策金利を計0・75%引き下げ
、10月から実質的な「QE4」を開始した。
次に中国が必死になって景気刺激策を推進、2020年1~3月期から中国
経済が回復しかけていることが挙げられる。恐らく、明春早々に上海株は上昇
しよう。
第三は米中覇権戦争が、再選を狙うトランプ氏の思惑もあって、一時休戦に
なったこと。
もちろん、世界大不況を恐れて、前向きの設備投資を控えるリスクオフ経営
が中心になったこともある。その結果、設備、在庫などの過剰が発生しにくく
なり、下方リスクへの抵抗力が増した。内外経済に構造変化が起きている。
内外の株式市場ではこの変化にまだ気が付かないので、カラ売り、先物売り
、あるいはベア投信が大規模な存在になった。米国ではMMFが3兆6000
億ドルもある。これが一斉に来年前半に買い戻すだろう。売り方総崩れ、では
ないか。
私が最も信頼するエコノミストの嶋中雄二・三菱UFJ、モルガン・スタン
レー証券景気循環研究所長は、11月20日の月例景気報告で「世界景気は底
入れへー期待できる先行きの展開―」としている。もちろん懸案となる要因は
山積しているが、世界経済への調整圧力への一服感が出ている、と嶋中さんは
言う。
嶋中さんの手法は、OECDの景気先行指数を、米国と日本は9か月、中国
は12か月、世界も12か月先行させたもので判断。「少なくとも半年先の世
界と日本の景気は、上昇の可能性はかなり大きい」と結論付けた。
では私の失敗は、新刊の本で「10月24日のドカン」を予告したことだ。
実は8月19,20日の両日には口述筆記して作成していた。
このために9月26日のゴールデンクロス、10月中旬の「QE4」も織り
込みできず、誠にに申し訳ありません。もちろん軌道修正は何回もしたつもり
だが、やはり同じような質問やお声をいただくから、まだ不徹底なのだろう。
映画のセリフから。ドクの情婦チワワが聞く。「私を怒っているの?」ドク
が言う。「オレはヒト様を怒るほどエラくないんだ」。味わうべきセリフです
ね。
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