映画「君たちはどう生きるか」と日銀の保有する国債の信頼性

映画「君たちはどう生きるか」と日銀の保有する国債の信頼性

2023・7・23(第1183回)

宮崎駿監督の久しぶりの新作。大ヒットとのこと。勇んで出かけたが、さっぱり映画で何が言いたかったかわからない。週を置いて本日観たが、やっぱりわからない。

思えば黒澤明監督も「七人の侍」をピークに「用心棒」や「椿三十郎」「赤ひげ」はまずまずだった。しかし年を取ると、次第に勢いがなくなり「乱」に至っては駄作としか言いようのない作品だった。「八月の狂詩曲」や「デルスウザーラ」「どですかでん」などははっきり言って水準以下。宮崎駿監督も82歳という歳には勝てないのか。

さて、今回は私が講演会を開くと、必ず出てくる質問「日銀があれだけ国債を買って、そのうち紙クズにならないんですか」にお答えする。

幸い、令和3年末「国民経済計算」が本年1月20日、内閣府から発表されている。表を載せたが、財務省のいう「借金だけを述べて、やれタイタニックだの一人当たり借金がこれこれで巨額だのと脅かす」手法が、現実的でないことがわかる。

設計図 が含まれている画像

自動的に生成された説明

つまり、バランスシートは右側に負債、左側に資産がある。これを差引かないと、国の財政の状態がわからない。

表をご覧になるとわかるが、資産マイナス負債つまり国高は3958.7兆円。前年比174.6兆円増加している。健全である。

海外からの評価も同じ。

日本国債の5年ものクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)は0.00188%。健全とみている。

では、財務省の事務次官矢野康治氏が「文藝春秋」2021年11月号に書いた論文の「国家財政が破綻する」の方はどう見るか。

これまで述べてきたことが、皆様のご心配が杞憂だったことがお分かりだろう。現に当時、安倍晋三元首相は言下に「間違っている」としたし、菅前首相も同じ反応だった。

それでも借金が多いから、財政破綻になるという矢野論文の見方はどうか。

これには支持する意見がある。

ブルーンバーグは2019年2月取材記事の中で、「国債の平均措置期限が10年として計算すると、金利が1%上限すると利払い率は毎年1兆円増え10年間で10兆円増となる。しかし各月成長率1%上昇しても約70兆円の税収は0.7兆円しか増えないので、財政収支はさらに悪化する。」と述べた。

文字の書かれた紙

中程度の精度で自動的に生成された説明

しかしこれも、統合政府のバランスシートでは、金利が1%上昇すれば金利収入(資産)は10兆円増加する。

ここでいう統合政府とは、日銀を政府の子会社と考え(世界も同じ)、合わせたバランスシートを作るからだ。日銀は政府が55%出資し、政府は役員任命権と予算認可権を持っている。従って日銀を子会社と見ることは、何も問題はない。

高橋洋一氏の意見でとりあえず、シメよう。

「日銀を連結すれば、ざっくり言うと資産1500兆円。負債は国債1500兆円。銀行券500兆円となる。」(出所「財務省、偽りの代償」扶桑社新書)

最後に日本株の今後。米国最大のカルパースが、7月21,22日に投資方針を決める。週明けの報道に私は大いに期待している。

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