こんな金融商品にご用心
商品先物、勧誘禁止で売買激減し再び規制後退
プロ向けファンド規制するも不十分
楠本 くに代 金融消費者問題研究所代表
現在、金融取引関連の法制度が激しく動いています。
消費者保護に資すると評価できる法改正もあれば、市場の活性化のみを優先し、消費者保護を著しく後退させる法改正もあります。
なぜ法が動くのか。何が市場で起こっているのか。法の動きをよく見ればわかります。
今回から数回にわたり、法の動きを通して市場をながめます。
商品先物の勧誘規制が後退
商品先物取引においては不招請勧誘、つまり顧客が勧誘を求めていないのに、訪問したり、電話をかけたりして勧誘をする行為によって被害が多発しました。2011年1月、不招請勧誘が禁止され、その後、被害は激減しました。商品先物の売買高はピーク時の4分の1に、会社数は100社から30社に激減しました。
業界の要請と市場活性化の観点から、2015年1月に商品先物取引法の施行規則が改正され、次に該当する人は不招請勧誘禁止の対象から外れました。2015年6月1日に施行されます。
・FX等の経験者
・「65歳以上の高齢者や年金生活者」以外の人のうち、年収800万円以上の人、もしくは資産2000万円以上有する人、または弁護士、公認会計士等の資格を有する人
弁護士会は直ちに会長声明を出して反対しています。消費者関連団体や個人からも猛烈な反対の声があがっています。
プロ向けファンドを規制するも不十分
「プロ向けファンド」とは、そのファンドに1社でも機関投資家が投資していれば、49人以内の個人からもお金を集めることのできる制度です。販売業者登録をはじめ、通常のファンドにかかる規制はほとんどかかりません。簡単な届け出だけで資金を集められることを悪用し、高齢者に強引に販売するなどして被害が多発しました。
金融庁が2015年1月19日に発表した規制案は、原則金融資産1億円以上の富裕層に販売を限っていますが、ベンチャー企業に投資するファンドに関しては上場企業の役員や弁護士等には販売できるとしています。通常国会に金融商品取引法の改正案を提出し、2016年の施行を目指しています。
プロ向けファンドについて規制ができたこと自体は評価できますが、「プロ向けファンド」というのなら、プロのみに販売するよう規制することが望ましいのではないでしょうか。
(続く)
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