木村喜由のマーケット通信
妖怪だらけのマーケット
普通の投資家は敬遠を

*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

今回の日銀追加緩和策は、米国のQE2やQE3になぞらえて黒田バズーカ2と呼びたいと筆者は思うが、世間ではハロウィンの日に重なっていたことからハロウィン緩和という呼び方をする記事も多く見かける。筆者はあまり賛成したくない。

ハロウィンは主に英語圏に住むケルト人の宗教行事がベース。彼らの新年は11月1日に始まり、ハロウィンはその前日に行われるお祭で、この日は先祖の霊が家族を尋ねてくるが同時におかしな悪霊や魔女も出てくるとされ、秋の収穫を祝うと共に悪霊を追い出す重要な行事だった。それでカボチャ (新大陸発見以前はカブが用いられる) をくり抜いて作った お化けや魔女の格好をするのである。それがいつしか米国で商業的に肥大化して全国的な行事になり、最近は日本でも急速に普及することになった。

余談だがケルト人は紀元前400年頃はフランスを中心に今の英国諸島、北部スペイン・イタリア、ドイツ南部からウクライナ・ルーマニア西部まで分布する一大民族であったが、統治は地域部族が中心で共通の宗教や言語を持たず、民族的一体感を持っていたわけではなかったようだ。当時の有力対抗勢力は古代ローマ、マケドニアである。その後キリスト教を信じるローマ帝国の被支配民族となり、やがて主に侵入したゲルマン民族であるフランク人その他に吸収溶解されて今のフランス人などになっていった。

ハロウィンでいわれるケルト人は狭義のケルトで、ローマの支配が及ばなかったスコットランド、アイルランド、その後ローマの後に侵入したゲルマン人(アングロサクソン)の征服を免れたウェールズなどが対象地域と思われる。しかし現在、言語的にケルトの色彩を最も強く残しているのは100年戦争の際に出兵した兵士の子孫が多く残る仏ブルターニュ半島で、主要言語として70万人が用いている。ケルト系の著名人は作家のC・W・ニコル、歌手のエンヤなどで、たぶん今の朝ドラ「マッサン」の主人公エリーのモデルだった竹鶴リタもそうだったであろう。

「お化け線」に妖怪ヘッジファンドが出現

テレビでは妖怪ウォッチが大はやりしているが、黒田バズーカ2のせいでマーケットの方でも妖怪のような「お化け線」が続出したり、微妙にタイプの異なる妖怪ヘッジファンドが入れ替わり立ち替わり登場しては去っていき、通常の投資家はあまりの目まぐるしさに呆然と見ているしかなかったであろう。

今回は中央銀行が人為的にサプライズを作り出した稀有な事例であり、振り返ってみて経済によい結果が生じていれば英断として高く評価されるのは当然としても、空振りに終わったり見込み違いの副作用が生じた場合、各方面から酷評されることは間違いない。しかしそれでも黒田さんが決断したのは、日経ビジネス「時事深層」で分析しているように、彼が強硬な消費税率引き上げ論者で、安倍首相の逃げを封じるためだったことがわかる。

増税見送りを封じる黒田バズーカ2

安倍首相は迷っていた。景気は明らかに想定線を下回って推移しており、物価はゼロ%に逆戻りしそうな気配。中国や欧州の景気も減速傾向であることは明らかで、今後米国のテーパリング終了によるリスクオフの動きが強まった場合、一段の景気下振れも考慮しなければならず、客観情勢は消費税率引き上げに対してはネガティブに動いていた。ポジティブなのは米国景気と為替ぐらいのものだったといえる。エネルギーや穀物市況の下落は実質的にはポジティブであるが、デフレマインド脱却にとっては好ましくない。

しかし、現在でさえ他の中央銀行がどこもやっていない株式ETFの買い入れという常軌を逸した金融緩和を行っているというのに、黒田日銀がその購入ペースを一気に3倍に引き上げるという、まさに異次元、モンスター逸ノ城(常軌を逸したというゴロ合わせ)も真っ青のスーパーウルトラ緩和を打ち出してきたために、財務省・自民党首脳・財界による先送り封じの包囲網は完成したと思われる。逆にこれで増税先送りにしてしまったら、金融市場も財政も着地点が見えなくなってぐじゃぐじゃになってしまう。むしろ、そちらの危険が大きいために先送りは出来なくなったと思う。

高齢化の速度はますます上がり、財政状況は一段と厳しくなることが明らか、一方で支払い側の年金改革は遅々としか進んでおらず、やっと資産配分の見直しが実現したに過ぎない。増税見送りは議論を全部振り出しに戻すため、スケジュール的に出来ない話なのだ。

短期なら常に逆張り、長期なら相対割安銘柄の押し目拾い

10月5週の海外投資家の買い越し額は財務省ベースで9,047億円。おそらく11月1週も5,000億円以上買い越しとなっていよう。彼らの売買の中心は現物ではなく先物である。この週の大証225先物建玉はクレディスイス+14,727、JPモルガン+6,059、シティ+5,548、三菱UFJ-4,461、メリル日本-6,892、野村-12,318。特に先頭の2社はこの2週間で+20,342、+19,364とこの間の225先物2,000円高の最大の牽引役だったことがわかる(3位はGSの+10,763、この3社で8000億円分買い越し)。

31日朝にはオプション市場で大量のコール買いがあり、偶然にも黒田バズーカ2が飛び出したためこの買戻しに加え他の弱気ポジションの手仕舞い注文が殺到し、踏み上げの連鎖によってシカゴ市場では午前4時過ぎに17,400円台まで上昇したのだった。

このほか、ABNアムロのように多い日はラージミニ合計で225を往復で10万枚、TOPIXを3万枚、全体の4割近い出来高を処理する超高速取引業者が存在し、それに皆が追随するため、為替も海外市場も関係なく200~300円は平気で動いてしまう。

日足でも、週足でも、時間足でも、株価も為替も商品も、長大な線(化け線)が頻繁に出現しており、普通の投資家には参加を推奨できない。賢明な対処としては、短期投資ならいずれ元に戻ってくると腹を括って望外の高値で売り指し値、安値で買い指値を入れておく。長期投資なら、厳格に割安株に絞り押し目を拾う作戦に限定すべきだろう。

Vol.1245(2014年11月9日)

 

(了)

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