四季報は最新刊だけ手元にあればいい?
損益計算書を読み解く④

公開日: : 最終更新日:2015/07/05 ゼロから学ぶ投資 ,

金融リテラシー講座 「投資のための財務分析」第16回

「四季報」を使って第二のお勧めは、会社の10年以上の長期に渡っての業績推移を表にすることです。

ただし、これは過去の「四季報」を蔵書していなければなりません。会社の長期の業績推移を確認するには会社のHPから決算短信を打ち出し、表を作成する方法もありますが、「四季報」を使ってやる方が断然効率が良いです。「四季報」は毎回買っているが古くなったものは捨てているという人が多いかもしれません。それはもったいない話です。「四季報」は蔵書することで利用価値が高まります。どうぞ蔵書してください。

 

さて、下の表はナラサキ産業(8085)の2003年3月期以降2013年3月期までの業績推移です。これを見てどのような印象を持つでしょうか。

 

金融リテラシー16回表1

 

「売上高は伸びていない、むしろ減っている。利益は停滞気味。魅力がない会社」と思えるかもしれません。

でももう少し分析的に見てください。

①売上高は減少しているが、売上高営業利益率は良くなっており、13年3月期は過去10年でもっとも良い。

②営業外損益が改善してきており営業利益と経常利益の差が小さくなっている。前期の経常利益は過去10年で最高である。

③経常利益と純利益の差が大きい、即ち大きな特別損失を計上している年が多い。しかし、ここに来て特別損失の計上が小さくなっていることが伺える。

といったことも言えます。

10年の数字を追うから分かる投資価値

ついでに「四季報」で分かる貸借対照表の主な数値を表の右側に並べました。これを見ると、この会社が10年で劇的に変化していることが分かります。

総資産は大きく減少しており、総資産回転率は大きく改善しています。現預金除く総資産回転率では2.04倍から2.72倍と顕著な改善を見せています。

有利子負債から現預金を差し引いた純有利子負債が純資産に対しどのくらいあるかを見た指標にネットDEレシオがあります。業種にもよりますが、この値が100%以下なら健全、200%以上なら要経過観察となります。この会社の2003年3月期の563%というのは、いつ倒産してもおかしくない数字でした。

この会社バブル時代にいろんな事業に手を出し、それが不採算事業や不良資産になっていました。そのリストラをやってきたのがこの10年です。事業を整理しますから売上高は増えません。しかし利益率は良くなっていきます。資産を圧縮、売却していきますから特別損失が出ます。でも有利子負債が減っていきますから営業外損益が改善していたのです。

 

因みに2014年3月期の数字は次のようになっています。

金融リテラシー16回表2

 

大幅増収増益で純利益は過去最高となっています。この数字を見れば投資したくなるかもしれませんが、2013年3月期までの数字で既に十分投資は検討できる状態にあったと思います。

金融リテラシー講座 第17回 ROAの分母と分子に何をあてはめるか?ROAとROEを算出する①

フィナンシャル・アドバイス代表 井上 明生

 

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