木村喜由のマーケットインサイト
2万円大台乗せも裁定残急増、いびつな上昇
反落警戒も割安銘柄はまだある
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マーケットEye マーケットインサイト, 木村喜由
日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
<2015年4月号>
日経225は4月10日のSQ当日に一時2万円大台に乗せた。長い目で見ればこれは通過点に過ぎないという見方に賛成するが、相場のリズム、経験則に従えば、ここは最近上昇の目立った銘柄の目先天井を付けるタイミングと見るべきであり、大きく利の乗った銘柄は利益確定し、株価指標で割安感の強い銘柄にシフトすべき局面である。
下値不安は小さいが、急落の恐れ
より攻撃的に言えば、急落があってもおかしくない場面であり、過熱銘柄の空売りやプットオプションの買いに妙味があるともいえる。
需給面から言えば、新年度は年金系の機関投資家と自社株買いだけで15兆円の買い越しが想定され、下値不安は小さい。円安が進むならば企業収益も一株純資産も増加しするので、TOPIXで1600付近の水準に何ら割高感があるわけではない。したがって予想PERが15倍未満の銘柄をあせって売る必要はない。
2万円乗せに寄与した一部値がさ株
反面、日経225が2万円に乗せた背景をよく見れば、本来成長株ではない食品、薬品、家庭用品、小売り関連の値嵩株の寄与が非常に大きく、業種別格差、さらに同じ業種でも銘柄間・大型小型別格差が顕著になっており、非常にいびつな上昇になっている。
これをもたらしたものはヘッジファンドの猛烈な先物買いであり、その結果東証公表分の裁定買い残高は7日現在23億1000万株に達した。直近の最低は2月2日17,558円当時の16億9000万株。実は東証報告外で少なくとも5億株程度の裁定ポジションがあると推定され、それがTOPIXと日経225の極端なPER格差を生じている。
裁定残急増はヘッシファンド策動
4月9日の日経新聞による予想PER(主に終わった3月期予想に基づく)は225が17.72倍、JPX400は18.20倍となっているが、これは時価総額ベースで、単純平均である225インデックスの予想PERは23倍前後である。到底指標面からは買うべき水準ではない。全体が割高なのではなく、比較的少数の銘柄が不自然に上昇して2万円に乗せたという事実を述べているだけで、まだまだ割安感の強い銘柄はたくさんある。
毎回そうだが、裁定残高の急増を伴う急騰はヘッジファンドの策動に基づくもので目標の高値に到達した後は急速に値下がりする場合が多い。彼らは意図的に動きを作ることで収益機会を得ているので、不必要なほど大幅な上下動が生じるのである。一般投資家は距離を置いて眺めているべきである。
悪材料に鈍感すぎる市場
現在、世界の中央銀行がこぞって量的緩和を実行し、市中から債券を買い上げているために債券利回りが極端に低下している。日欧では10年国債利回りが0.5%以下という、運用者としてはリターンほとんどゼロ、あるのはリスクのみという異常な事態が生じている。債券の満期資金は押し出されるように前述したように業績リスクの乏しいディフェンシブ銘柄に集中しているが、それが長続きするとも思えない。
予想PER35倍以上、長期保有不適当の19銘柄
例えば225銘柄で今期黒字で予想PER35倍以上の銘柄を列挙すると明治HD、キリン、キッコーマン、三越伊勢丹、SUMCO、電通、協和キリン、花王、武田、大日薬、塩野義、中外薬、エーザイ、三井不、菱地所、平和不、三菱倉、NTTデータ、コナミだが、この水準で長期保有に適当と思われるものはゼロである。
要するに金余りが続く限りは株価は下げないからとりあえず買っておけ、という安易な「投機的楽観主義」が蔓延している。しかしマーケットはそう甘いものではない。最終的には上昇トレンドが継続すると見ているものの、一定のトレンドで上げ続けた後は、反落に警戒である。腰が伸びきったところがもっとも危険で、言われてみれば納得の悪材料を蒸し返されて急落する場面がいずれ来ると考えたほうが無難である。調子に乗りすぎるのは控えたほうがよい。
ギリシャと中国には要警戒
前回の繰り返しになってしまうが、足元で差し迫った危機があるわけではものの、ギリシャ問題と中国情勢は警戒しておいたほうがよい。ギリシャの債務問題は、まだ明確な返済計画が提出されていない。ドイツ側の姿勢も頑強なままだ。株価こそ急騰しているものの、中国も不動産バブル崩壊は時間の問題と見ている。毎月の住宅価格報道には十分注意したい。いずれも混乱の際にはヘッジファンドが過剰に売り叩きの材料とするだろう。
円安ペース継続には期待薄
ドル円相場は方向感が見えにくくなっている。米国の利上げがどうなるのか不透明感が高まる反面、日本側の国際収支が急速に改善しており、従来ほどの円安ペースは期待しにくくなっている。為替と株価の連動性を考えると、その分だけ、日本株の上昇ピッチは減速する計算になる。
筆者は先行き株価はもっと上がるが、足元の市場は投機筋の動きで楽観的に過ぎ、せいぜい利食い銘柄の資金を乗り換える程度で慎重に構えた方がよいと思っている。
(了)
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