映画「ロッキー」と官製相場とヘッジファンド激闘
今井澂・国際エコノミスト

今週は「ビリギャル」を取り上げるつもりだった。口コミで只今大ヒット中。副題が「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶応大学に現役合格した話」。たしかに聖徳太子をセイトクフトコと高2で読む出来の悪い女子高生のサクセスストーリーだから後味がいい。私が観たのは平日の午後イチだったが、若い女性で満員だった。おすすめできる。

にもかかわらず、わざわざ2006年の「ロッキー」を取り上げたのは、連日ヘッジファンドと日本側「官製相場」とのせめぎあいだから。まるであの「ロッキー」の死闘を思わせる。

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 ヘッジファンドの売り材料

ヘッジファンドは連日ヨーロッパ株式市場の下落とドイツ国債を中心とした長期金利上昇(債券価格下落)を材料に、日銀ETF買いやGPIFの買い注文が出ない時間帯を狙って、主に先物市場で売っている。12,13日は何とか持ちこたえたが14日は日銀買いもかかわらず三ケタの下げ。ようやくヘッジファンドの売りが終わって15日は上げた。

売り材料の第一は原油価格の底入れ感、とくに米国の高水準の原油在庫の減少傾向。バレル60ドル近辺を維持している。

となるとデフレ期待率つまり逆オイルショックのボーナス効果の減退は、長期金利の上昇と株安につながる。(2014年のIMF予想ではインフレ期待率は米国マイナス0・7%、日本マイナス0・06%)

第二は日本の物価。東大日次物価指数は5月11日に前年比プラス0・9%と2014年4月9日以来の高い上昇率となった。ヘッジファンドはこの数字に注目しており、日本国債の金利も「必ず上昇する」と見ている運用担当者も。

つまり日本のデフレ脱却が企業が円安などを理由に価格転嫁をはかるフェーズⅠから、家計が価格上昇を受け入れて次の段階に入っているーと見ている。

景気好転、企業収益増でも売る理由

第三に景気指標の好転も材料視されている。12日に内閣府から発表された3月の景気動向指数の先行指数が3か月ぶりに0・8%前月比で上昇。OECDの3月の景気先行指数も5カ月連続していることも、ヘッジファンドは「日本経済の転機近し」と読んでいる。

では株を売るのはおかしいんじゃあないか。

ごもっともです。しかし、かりに1万9300円を瞬間でも切れば儲かるオプションをヘッジファンドが買っているのは周知の事実だ。そうさせまいとする官製相場との闘争が、連日行われている。これが現実だ。

マスコミ好みの暴落、ではない。金融緩和状況下の企業収益増加という株高には理想的な環境。Quick予想は2016年3月期18・5%増益予想。イールドスプレッドはマイナス6%を超え、米国のマイナス3・9%より割安だ。

前述のオプションが通貨と両建てのバイナリ―オプションであることはこのブログで指摘した。シカゴ市場での投機玉の売り越しは4月下旬の5500枚から3万1200枚に急増しているのと合わせて考えると円安で瞬間株安、その後一転して日経平均2万円を狙って買いあがる作戦、と予想できる。乱高下、ですな。しかし、下げたところが買い場となることは自信持って言える。

波乱要因は中国経済

このシナリオが壊れるとしたら中国経済のハードランディングだ。

3週ほど前に私はいろんな指標の悪化を指摘した。まだ私はあと1,2年は何とか崩壊には至らないと思っているが、減速のペースがひどくなってゆくことは必至だ。

自動車を例に。2015年のメーカーの生産能力は前年比2割多い5000万台。ところが新車の販売予測は2500万台で、操業率は50%で、適正とされる80%よりぐんと低い。過剰生産能力は米国市場の年1700万台より多い。欠損企業が続出するだろう。不動産バブルの崩壊に加えて、最大の産業の赤字化だ。中国の景気が良くなるはずがない。撤退されつつある日本企業は、早く逃げ出されるよう願ってやまない。

 

映画「ロッキー」は作品、監督、編集の三賞を獲得したが、私は音楽のビル・コンティこそ受賞すべきだったと思う。トランペットの高音とパーカッションの低音が響き渡り、人の心に勇気を与える。名曲だ。

私はかつてNYで主人公の友人役ポーリーを演じるバート・ヤングにホテルのエレベーターで一緒になり、サインをもらった記憶がある。今回想い出して探したが見当たらなかった。いい人だったがなあ。

映画では一時チャンピオンに叩きのめされたロッキーが立ち上がり、さあ来いと、手で示す。チャンピオンはクサる。そして判定では負けたが、実質は誰の目にも勝利し、生涯一度のチャンスをつかみ取る。そして「エイドリアン!」と恋人を呼んで抱き合うラスト。タリア・シャイアも良かったなあ。

 

映画「ロッキー」と官製相場とヘッジFの激闘(第774回)

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