映画「あん」と日本人と外国人の株への見方の差
今井澂・国際エコノミスト

 

今週はいい映画を3本。

150万部売った「イニシェーション・ラブ」。ミステリの映画としてはムリと思っていたトリックを画にして見せた。

元刑事マット・スカダー・シリーズでリーアム・リーソンの「誘惑の掟」。「96時間」ほどではなかったが、アクションミステリーとして上の部。

しかし、樹木希林主演の「あん」にしたのは、河瀬直美監督に惹かれたのと、ハンセン氏病への偏見への怒りをテーマにしたのが気に入った。共演の永瀬正敏の演技も良かったし、樹木さんの孫の内田伽羅も美しかった。

日本の個人投資家が売りの理由

いまの株式市場には明確な偏りがある。公的資金をのぞいて日本人は全部売りで、外国人が買ってくれる時だけ上がる。私が特にガッカリされるのは、日本の個人投資家がずっと売り、という事実だ。

いろんな人たちに聞いてみると、理由が結構ある。

第一は「資産税」のウワサ。これがマイナンバー制と合わせて、株を持っていると税金ダゾという恐怖心。政府にはこの風評被害を何とかしてほしい。

第二が、まだ厳然として存在するアベノミクス失敗、景気はちっともよくなっていないという(一部だが)確信。たしかに円安倒産、人手不足倒産はあるし、下請けの中には(いつでもそうだが)好況なんてとんでもない、と。

第三が中国などへの不安。

「金融が緩んでいて、企業収益は大幅増。下値は公的資金が買うので暴落なんてありえない」――私はこう主張し続けているが、市場統計を見るとがっかりしてしまう。

映画で主人公の老女が完治したハンセン氏病を言いふらされて、せっかくよく売れているドラ焼き屋の仕事を失うのに似ている。どこに文句をつけていいのか、分からない。偏見が相手だからだ。

 

日本の個人投資家は700万人、口座数は4000万と推定される。

この個人投資家が毎年ずっと売り越している。

2012年 1兆9000億円

2013年 8兆7000億円

2014年 3兆6000億円

2015年(1~5月) 4兆1000億円

以上合計して18兆3000億円!

買い越したのは1月の3522億円のひと月だけ。信用取引だけ見るとこれよりはマシだが。カラ売りは結構多く、投資としてはソンをしているのではないか。これだけの上昇相場なのに。何ともバカバカしい。もっと前途に確信を持ってもらいたい。

クジラはいつ、どのくらい買うか

私が2万5000円説をとっていることはご存じだろう。理由は2016年3月期の日経平均225種の一株当たり利益は1300円以上。恐らく1350円としてPERは17倍。

もう一つは公的資金の「クジラ」の買い。

現在公的年金とは①日銀のETF買い②GPIF③ゆうちょ銀行など。

①日銀は、現在の買いの入れ方は、前場で日経平均が60円ぐらい下げると後場の1時15分ぐらいから370億円の買いを入れる。買いは住友信託銀行経由で、ETFの構成比に応じた現物株。買いを証券会社に発注する。6月に入り1日、3日、5日の三回発注されており、下げ幅を少なくしている。現在の日銀のETF買いは月平均で2500億円。

②GPIFは、137兆円の運用資金のうち資産構成25%として、まだ国内株のワクは7兆円。資産増を考慮すると1年間でワクを使い切るとして月間6000億円。

日銀と合わせて8500億円の月間株式購入で、年10兆円を超える。

③ これにプラスしてゆうちょ銀行がある。200兆円の運用資産の恐らく10%は日銀に保有国債を売却し、国内株に対し10兆円とか15兆円とかがふり向けられるだろう。10兆円としても1年間にして8300億円の月間買い。

だから私は外国人特にヘッジファンドに対し、年末2万5000円、遅れても明年3月末、と明言してきた。週刊朝日の新年アンケートで、他の方々は2万円とか2万1000円を高値目標としておられたが、私はひとり2万5000円と申し上げた。需給関係をアタマに置いた予想だが、どうも私の勝ちのようだ。

以上の推論は外国人買いを勘定に入れていない。欧州中心に長期投資が入っているのは、短期中心の米系ヘッジファンドより安心できる。彼らは株主優遇を心がけ始めた日本企業に好意的だ。

悪いことはいわない。JPX400インデックスファンドを、株を売却する方は、代わりに購入なさい。昨年末の1万1000円台が1万5000円台になっている。2万5000円時代になれば3万円になっていておかしくない。

 

映画のセリフから。76歳の徳江がドラ焼き店長に言う。

「ねえ、店長さん。わたしたちはこの世を見るために、聞くために生まれてきた。だとすれば、何かになれなくても私たちには、生きる意味が、あるのよ」。

戦後、米国で特効薬が開発されてから、ハンセン氏病は完全治癒し、しかも伝染力の弱い病気ということが分かってきている。日本だけが患者を閉じ込め、偏見はいまだにある。株も永い間の下落で、ソンするもの、という偏見があるのではないか。

 

映画「あん」と日本人と外国人の株への見方の差(第777回)

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