映画「羅生門」とFRBの利上げのもたらすもの

先週私は新しい不安材料としてテロを取り上げた。その直後に例のカリフォルニアでの夫婦による乱射事件があった。組織的でない「共感テロ」には止める名案はない―という私の不安が的中してしまった。何とも言いようがない。

今回取り上げる「羅生門」はご存じだろう。黒沢明の名を一挙に世界的にしたベネチア映画祭のグランプリ獲得作品。外国人と話していて「ラショーモン」というと、人間というものの不可解さとか、解けない謎、という世界語になっている。すごいなア。

 

芥川龍之介の小説は、盗賊、殺された男の若妻、それに巫女(ミコ)が呼び出した被害者の男の三人のお話。黒沢監督と橋本忍さんは目撃者の木こりの話を付け加えた。映画としては、これがあったからカタチになったと思う。

今週、16日にはFOMCが終わる。政策金利引き上げが、市場によると、78%の確率で実施される。

米利上げに「第四の見方」

この利上げについて、①もうこれだけ長い間討議されていたのだからマーケットは織り込み済み、②アメリカ経済は利上げできるくらい好調、だからNYダウは買い、③FRBの出口戦略はグローバル経済にとって世界株安、世界生産減.だから売り。この三つの見方が併存している。まるで「ラショーモン」じゃないか。

そう思っていたら、映画と同じく「第四の見方」が出た。大和総研が「第18回日本経済予測(改訂版)」で「米国が出口戦略を講じると何が起きるか?」でくわしく分析している。それによるとー

  • FRBによる利上げの悪影響をECBの緩和で相殺するのは困難だが、2017年までの累計で世界経済を0・25%押し下げる
  • 米国自身への悪影響は「米国景気に中立的なペース」で利上げのペースがおさまるのであれば、世界経済へのマイナスはほとんどない。
  • 中国を除けば新興国はテールリスクではなくなっている。

まあFRBにゲタを預けた形だが、私は、「製造業関係の指標は良くない。しかし米国GDPの7割を占める個人消費はいいので、米国経済は好調を持続するだろう」と考えている。NY株は一部の人がいうような急落は起きないと思う。

日本市場は買い場の号砲近し

日本の株価で云うと、どうだろうか。

私は「夏の嵐」の株価急落時に、「二番底」が11月か12月にはじめにつくから、そこで買いに出る、と述べてきた。

9月29日が一番底で1万901円、12月1日が戻り高値で2万0012円。私はそこから1000円ぐらい下の1万9000~、1万8900円と何となく考えていたが、今週木曜日の引け値は1万9046円になった。運動会での「位置について、ヨーイ」だ。「ドン」と号砲が鳴る日が近い。

というのは中国経済の悪材料が続出しているし、原油は安い。だから今週は安値の日が多くなる。メジャーSQの直前だし外国勢の裁定解消売りもあるし。来週15~16日のFOMCまでポジションはとりにくいだろう。

ついでに言うと、17日はNY市場のスーパーSQだ。6700億ドルのプットオプションの決済がある。ちょっと心配。だから「位置について、ヨーイ」だ。うす商いのうちに底値がつく。もちろん買い材料は、なかなか見えない。底値時期のジョーシキだ。

機関投資家の組み入れで年末高、年始高

買いが入るのは、外国のインデックス投資の機関投資家だろう。

ことし1~12月(8日まで)で、米ドル建てで世界第一位の値上がりは日経平均ですゾ。8・8%。ユーロ建てだと20・8%、英ポンド建てでも12・9%。

ドル建てだと2位は伊FTSE2・0%、ユーロ建てだと2位はナスダック、19・5%、英ポンド建てもナスダック11・7%。

これじゃあ翌16年の日本株をもっと組み入れます、と投資計画を書かなきゃ恰好がつかない。年末高が年始高につながるに違いない。

ちなみに前述の大和総研のレポートに前提条件としてー

  • 為替レート2015年度122・6円、2016年度125・0円。②米国の実質成長率2015年プラス2・5%、2016年 2・6%③2017年4月消費税率引き上げ。

何を狙ったらいいか。それは来週以降のお楽しみ。

 

映画のセリフから。

四つの話を聞いた後、羅生門に捨てられた赤ん坊の泣き声。その産着をはぎ取る下人。この上田吉次郎は憎々しかったなあ。そこで志村喬の木こりが赤ん坊を抱いていう。「ウチには六人の子がいる。六人育てるのも七人育てるのも同じだ」。これで救われた顔をしたのが千秋実の旅の僧。雨が止んで明るくなった羅生門。

そうです。雨は必ず止むのです。

多襄丸の三船。犯される若妻の京マチ子の熱演。それより殺される男の森雅之が巧かったなあ。先日CS放送で恐らく5回目ぐらいだが、観た。傑作。

映画「羅生門」とFRBの利上げのもたらすもの(第804回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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