【初・中級者向き】映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」と新内閣
公開日:
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マーケットEye 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
2016・8・7
先週から今週、忙しい合間によく観た。「ハリウッドがひれ伏した銀行マン」「ある天文学者の恋文」「ダーク・プレイス」ほかに今回の「ダルトン・トランボ」を書くためにBSでトランボの半生を画いた記録映画も観た。
私もサラリーマン生活の永い人生の間に、いわれのない誹ぼうや自分の功績を他人がさらうというような理不尽ないじめをヤマ程経験してきた。ダルトン・トランボほどではないが。
米国の第二次大戦後のマッカーシー上院議員などが起こした「赤狩り」で、仕事も名誉も奪われ投獄もされる。それでもいい脚本を書きつづけたダルトン・トランボは、私の英雄だ。
ずいぶん傑作を書いている。有名なのは「ローマの休日」だがスティーブ・マックイーンの「パピヨン」オット-・プレミンジャーとポール・ニユーマンの「栄光への脱出」。何といってもひとりの奴隷の反抗の物語「スパルタカス」。カーク・ダグラス、ローレンス・オリヴィエ、ジーン・シモンズ皆良かった。監督はスタン・キューブリックを起用。私は4,5回観ている。大傑作になった。
トランボは自分の名前を出して書くことは許されない。そこで他人名義で安い脚本料、で二流の映画会社の、他人に持ち込まれた他人のシナリオを書き直す。自分だけでなく、他のハリウッドから追放された仲間の分も働く。何とバスタブの中にタイプを持ち込む。時間がないからだ。その中で書いた「黒い牡牛」はアカデミー賞をとったが他人の名を借りたので、授賞式に出られない。
政府口座に中央銀行が資金を振り込むバーナンキ案
名が出せないとか、知られないというのは、ヘリマネと共通点がある。今回のバーナンキ来日がヘリマネだろう、と解釈され、財務省ポチのエコノミストたちが猛反対している。皆やれ歯止めがないとかアベノミクスの失敗とか言いたい放題だ。
ご本人が聞いたら、曲解も甚だしいと思うだろう。ここではバーナンキ本人のブログでの論文「FEBに残された手段は何か」とCBNCに出演した4,5月の発言を基に再構成してみよう。
バーナンキ氏はフリードマン式のヘリマネは極端な手段としてやや否定的だ。フリードマン式は中央銀行に直接国債を引き受けさせるいわゆる「財政ファイナンス」というものだ。「債務による財政プログラム」とバーナンキ氏は言っている。
バーナンキ氏は別のやり方、つまり政府が中央銀行に保有する政府口座に中央銀行が資金を直接振り込むというもの。「マネーによる財政プログラム(MFPPS)という名までつけている。
金融政策が脱デフレの観点から手詰まり状況。そこでMFPPSは財源ねん出を、財政法第5条を改正せずに同じような効果を持つ、とバーナンキ氏は云う。
同氏は①先行きの長期需要を引き起こす公共投資②個人消費に結びつく減税の併用を主張している。財務省はこのバーナンキ氏の主張を曲解し、ヘリマネ即大愚案として大宣伝しているのだろう。
ヘリマネより効果がある財政プログラム
さて、現実にこのマネーによる財政プログラムつまりバーナンキ案の効果はどうか。
マネーによる財政プログラムつまりバーナンキ案は次のメリットがある。(この部分は三井アセットマネジメント市川雅浩氏の資料による)
図表1:財政プログラムの効果比較
期待される効果 マネーによる 債務による
財政プログラム 財政プログラム
公共投資による需要増 効果あり 効果あり
税金還付による所得増 効果あり 効果あり
期待インフレ率の上昇に 債務による財政プログラムより マネーによる財政プログラムより
よる実質賃金の押し下げ 効果は大きい 効果は小さい
将来的な課税負担増回避 効果あり 国債発行を伴うため効果なし
建設株中心に株価倍増は夢じゃない
さあ、効果はわかった。実現性は。
財務省のヘリマネ悪宣伝。公共事業へのアレルギーを除かなくてはならない。そこでデフレ脱却の目標ための財政プログラムの採用をテーマにして、安倍首相は総選挙で国民の信を問い、その勝利で反対を押し切る。
私がそう見るのは今回の内閣改造と党幹部の改組。その中で幹事長に二階俊博氏が就任したこと。同氏は国土強靭化計画を主張、財政拡張を推進して来た人物。谷垣前幹事長や岸田外相は宏池会で財務省出身の首相を多く輩出し、緊縮財政賛成派が多い。
私は前から申しあげて来たが、本格的な脱デフレ政策は、秋の総選挙を免罪符にして「国策」となる。株?そうなりゃ「買い」に決まってるじゃないの。ETTF6兆円もあるし。建設株中心のポートフォリオは3,4年間で株価倍増も少しも夢じゃない。
夏から秋にブラックスワンが出て来ることは覚悟の前。下押し幅が大きければ大きいほど、大買いチャンスと考えること。私は慎重な積極派だ。
財政プログラムで脱デフレを
映画のセリフから。
ワシントンでの非米活動委員会の赤狩りに呼び出されたトランボ。「君は共産主義者か」と一方的にいわれて言う。「“はい“か”いいえ“で答えるのはバカか奴隷だ」。言論と思想の自由を訴えたのだが、議会侮辱罪で国家転覆を図る危険分子というレッテルを貼られる。いま財政プログラムでの脱デフレに賛成するひとはトランボと同じような目に会うかもしれないが。でも私は意見を変えない。私はガンコな猪年生まれのジイサンで、もうあと20日で81歳になる。アホと言われても、私は強気だ。
映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」と新内閣(第838回)
今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ
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