【初・中級者向き】「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」と安倍政権の今後

2017・7・22

創業者といえばすぐ井深=盛田とか本田宗一郎の尊敬できる偉人たちを想いだす。ところが世界最強のマクドナルドの「ファウンダー」は実は著名なレイ・クロックではなく、実はマックとディックという兄弟だった。レイはそのノウハウを盗んで、全世界にフランチャイズ化し、当初の契約は骨抜きにし売り上げの1%を払うという約束も守らなかった。

なるほどこの内容じゃあマクドナルド社が協力しなかったわけだ。しかし映画の出来は実に面白い。私は試写会で観たが(コッソリ言うが)マックの店に余りゆく気がしなくなった。

うだつの上がらなかった52歳のセールスマンのレイは異常な大口のミキサーを注文した発注元に会いに行く。カリフォルニア州サンバーディーノのレストランで、オーナーのマクドナルド兄弟の経営するハンバーガー専門店の超繁盛ぶりを目に見張る。

メニューは単一、皿も不要、ケチャップは4か所、ピクルスは2枚、調理場は動きにムダがないよう設計、食べるところは店外のベンチで袋と紙で包んでサービス。

まったく無駄のない経営ぶりをお人よしの兄弟は何から何までレイに話してしまう。

全米にフランチャイズ展開して、もっと儲けたらーとレイは提案。はじめは渋っていた兄弟は説得に負けて最後にOK。怒涛の勢いで店は拡大。然し契約に縛られて収益が思ったように上がらない。品質を落とそうとしたり、ついには店舗用の土地買収会社を設立したり、レイと兄弟との対立はどんどん深まってゆく。つれてレイは次第に怪物化してゆく。

 

この号が皆さんのお目にかかる24,25日は安倍首相の国会招致で大騒ぎしていることだろう。そして次の組閣も閣僚の失言や、選挙法違反などの不祥事が相次いで、政権の体力を消耗してゆくー。

「ちょっと待って、今の言葉 Play Back Play Back」

山口百恵ちゃんの「プレイ バック Part2」の歌詞だ。

 

今から10年前、第一次安倍内閣は既得権益の受益者側からの猛反撃を食らっていた。

たとえば「消えた年金」。社会保険庁(現日本年金機構)の民営化に危機感を持った公務員労組が自らの不祥事をリークした自爆テロだったらしい。また農業にも手を付けようとした農相は一人自殺、もう一人は公職選挙法違反で辞職。ウラにお役人の動きがあったことも明白だ。

その結果「自民のオゴリにお灸を据えよう」という自民批判票が野党に流れて、あのハトヤマ、カンの日本の最悪の時代に入ってしまう。

 

今回はどうか。前川前文科省事務次官が「行政がゆがめられた」と告発したのが始まりだが、これも既得権益を守りたい官僚の抵抗だろう。内部文書をマスコミ(特に朝日、毎日系)にリークして、許認可権を守ろうとした。(これは昨年11月のトランプタワーでのやり取りで、NYタイムスと朝日に対し“勝利者”と安倍首相が発言したのが、カチンと来た、これは前にこのブログで書いた)。

 

ここで安倍首相が頑張らないと、レイ・クロックに振り回されたマクドナルド兄弟のようになってしまう。前回で痛い思いをした首相は、柳の下にドジョウは2匹いないことをはっきりと示してほしい。また新聞の「支持率急落、危険水域に」との見出しもこのブログの読者は信じないでいただきたい。

 

一方、アメリカの方も同じ。ABCテレビとワシントンポスト紙の調査では支持率は4月比6%下降し36%で、不支持率は5%上昇の58%。

では三大ネットワークと大手新聞社の調査はどの程度信用されているのか。ある大手調査会社の「誰がより信用できるか」(6月25日)によると、議会、メディア、トランプ政権の三つのうちトランプ37%、メディア30%、議会29%でメディアを信用していない。

一方、ギャラップの「どのメディアを信用していますか」に対しては三大ネットワークはランキング15位以下。つまりトランプの方も安倍さんと同じく政権に批判的なメディアが窮状を伝えているもので、余り、どころかほとんど信用できない。

 

トランプの方は、ペンス副大統領が少しおかしな動きをしているので、(これは別の機会を見つけて)、アレレという事態が全くないとは言えない。しかし安倍さんの方は、まだ国政選挙はだいぶ先なので、十分にリカバリーする時間はある。これ以上の支持率下落は(ないと思うが)あっても、無視。構造特区とコンセッションの二つのドリルで既得権益に穴をあけてゆけば勝機は十分にある。

 

映画のセリフから。レイは言う。「きれいごとだけでは、夢は絶対に叶わない!」「一番大切なのは、“持続”です!」

長期政権でなければできないことがヤマのようにある。頑張れ安倍さん!

「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」と安倍政権の今後(第868回)

今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ

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