【初・中級者向き】映画「天国でまた会おう」と日銀追加金融緩和とヘッジファンド
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「その女アレックス」の面白さは読んだ人にしかわかるまい。二転、三転、私はびっくりさせられた。その作者ピエール・ルメートルがミステリでない分野で、しかもフランス最高の文学賞のゴンクール賞を獲得した小説が映画化されて200万人が見た大ヒット。映画の出来もよく、セザール賞で13部門でノミネートされ5部門を受賞した。
時代は第一次大戦終戦間際、好戦的な中尉プラデルの悪事に気が付いた二人の運命が交差する。アルペールは生き埋めになりかけ、それを救おうとして顔に重傷を負った若い兵士エドゥアールに「父にこの顔を見せたくない」と訴えるために、アルベールは戦死を偽装してやる。
戦後パリに戻った二人の復員兵には世間は冷たい。負け犬人生を取り戻すために、エドゥアールの画才をいかして一儲けする、大胆な詐欺をくわだてる。その裏には秘められた本当の目的があった。
顔の半分を失ったエドゥアールはモルヒネを定期的に欲しがる。アルベールは他の負傷復員兵に与えられるモルヒネを奪ってエドゥアールに与えてやる。ちょうど超超低金利やマイナス金利で、預金者が本来なら得るべき利息がタダみたいになってしまった。私に言わせれば一種の強奪に似ている。
ご存知の通り、昨年12月25日の底値の1万8948円から3月4日の2万822円まで戻した。円レートも1月4日の107円52銭から3月4日の112円近辺まで4円の円安。
この間、外人機関投資家のうちヘッジファンドは「円売り、株価指数先物買い」を続けて、3月第1週時点で年初来累積2兆円に達した。
「一方、大手投信や年金などの現物買いはほとんど入っていない。それどころか、現物は1月第5週から売り越している。
パルナソス・インベストメントのストラテジストの宮島忠直さんの3月15日付レポートがこの理由をはっきりとわからせてくれた。以下は引用。
黒田日銀総裁が最近、安倍総理から「世界景気が悪化された際の追加金融緩和策」をたづねられ、次の4点を具体的手段として掲げた。
- 現在マイナス0・1%近辺の短期政策金利のさらなる引き下げ
- 長期金利のゼロ%近傍に維持している目標のマイナス水準への引き下げ
- 減少傾向を維持する予定の国債や「その他資産」(筆者がカッコづけ)の買い入れ限度の拡大
- マネタリーベース増加率の加速
同レポートは日銀の年間資産購入額が、2016,17年の80兆円から最近20兆円台まで減らしたのだから若干資産購入ワクを再度拡大することは危険ではない」という財務省幹部の声を紹介している。
ヘッジファンドのマネジャーに聞くと「4月からのこの金融政策で、円売り株価指数買いを維持、拡大する」と。まあポジション・トークで例によって10連休を利用して何か仕掛けるのだろうが、これで4月いっぱいは高そうだ。
円レートの方は、テクニカル・アナリストとして極めて少数派になった“強気”の三菱UFJモルガン・スタンレー証券のチーフ・テクニカルアナリストの宮田直彦さんが「円安が加速化する」という予想を立てている。
早速聞いてみたら「シカゴ為替市場で注目されている非商業部門とされている投機玉の先行指数として“非報告部門”が円売りに転じている」と。小口の投資は非報告になるとのこと。たしかにこの指標は、主力部隊の動向に先行している。(グラフが出せないのは残念だが)
宮田さんは「昨年12月の底から、日経平均とTOPIXは、エリオット波動ではサード・オブ・サードというダイナミックな強気相場に入った可能性が高い」としている。「不景気の株高」という位置づけだ。
映画では、復員兵エドウァールの姉が悪役ブラデルの妻になっている。妻は夫の悪事に気付いて、何とか妻の父の大物に自分のスキャンダルのモミ消しを頼む夫に言う。「私は父に頼みたくない。あなた自身に興味がなくなったの。」
個人投資家はみな弱気になり、市場に興味を失ったように見える。しかし宮田さんは1月大発会の1万9000円が底値で12月に2万5500円を目指す、と。円レートは115~120円。
私は冒頭に引用した宮島レポートの日銀の追加金融緩和が始まれば、世界の不況やテールリスクもごく一時の下落にとどまるだろうと希望する。年末になれば、勝負が決まる。
私の先生のサー・ジョン・テンプルトンの言う。「悲観の中で上昇相場は生まれ、懐疑のうちに育つ」になればいいのだが。
ところで、来週のこのブログはお休みです。あしからず。
映画(第955回)2019・3・17
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