「方丈記」と安倍政権の方針転換と外国人投資家の変貌、さらにトランプ政権への不安材料(第1008回)

公開日: : 最終更新日:2020/04/21 マーケットEye, 中級, 初級, 無料記事 ,

 「行く川の流れは絶えずして、しかも、元の水にあらず。」有名な書き出しで、高校生だった私には、この無常観には反発したものだが、もうすぐ85歳の私には十分理解できる。

 この随筆の中の前半のパートは12世紀の天変地異と人間の無力さについて書かれている。いわく大火、竜巻、飢饉、地震―。今回のコロナと読み合わせると、実感できる。

 鴨長明は高位な神官の家に生まれたが、地位にはつけず、草庵での生活が後半を占める。

 最後には隠者としての自分自身の草庵の生活に愛着を抱くことさえ、悟りへの妨げとなると否定して結ぶ。

 この無常観を安倍首相に対して感じるのは私だけではあるまい。すくなくとも、登場前後の颯爽とした表情は消え、最近のコロナ対策の下手くそ加減は、切れ味鋭かった数年前と比較にならない。

 ごく一例。全国民一人10万円給付、しかも補正予算に組み込む。一世帯30万円を撤回し、補正予算への組み入れを当初拒否していたが、公明党の圧力で一転した。勿論、不況対策としては、現金給付が6兆円(3000世帯×3万円)から、12兆円(1億2千万人×10万円)に増大するわけで、本来はこれは景気対策としては好ましい。

 しかし、成立に至るウラ話を宮島秀直さん(パルナッソス・インベストメントスラテジーズのチーフストラテジスト)に聞くと、実際は公明党のエゴに安倍首相が押し切られたらしい。

 まとめると次の通り。

➀これまでは一部富裕層を利用する減税や現金支給に猛反対してきた公明党。今回も3月末に自民党が示した全世帯現金支給にも反対してきた。

②しかし創価学会から、講演会や会員参加の会合が全く開けなくなり、個人献金がゼロ。公明党への資金源も激減し、山口公明党代表は180度態度を急変させた。

 現在の株式市場は、この情勢を受けた財務省のポジティブな姿勢を好感して上昇している。

 以上は宮島さんからの政治情報だが、私なりのヘッジファンドから入手した市場関連情報(主にグローバルマクロファンド)を述べると―。

 昨年から「円買い日本株売り」を行っていたし、これを変更する計画もない。2020年に入り、売りポジションを拡大している。

 次に市場筋から入手したオイルマネー。原油価格は急低下し、手元流動性が低下。オイルマネーは各月の月初商い日に売りを出すので、3月を除いて1,2,4月の初日は安い。3月は2日で、この日は上昇したが、日銀がETF買いを増大させるとの情報でブローカーが売りを一時控えたため、3月は「数字は不明だが、相当多かった(ブローカー)」。

 前者のグローバルマクロヘッジファンドはいずれ買いに転じることが、確実だ。というのは、私に聞いてくる質問は「いつ買ったらいいか?」などの買い転換期のタイミング関連ばかり。また裁定取引が限度一杯に達しているため、必ず買戻しに入る。タイミングは中国の景気底入れサインだろう。

 従って私は前週も申し上げた通り強気である。相場の方も2週間続け陽線をつけて上値の抵抗値2万82円に接近(いちよし証券高橋幸洋氏)。ここを抜くと展開が目に見えてくる。

 ただ大きな不安材料が迫っている。私が従前から申し上げてきたトランプ大統領対最高裁の例の財務諸表公表問題に大きな展開があった。場合によっては6月に大きな激動が市場に。勿論世界中にショックを与えるに違いない。

 その展開とは、最高裁が審理中の11件の口頭弁論を電話で行うと決定したこと。3月31日に予定されていた弁論は、これで近く電話で実施されることになった。6月末が7月にずれ込む可能性はあるものの、これで大統領選以前の判決で行われることが確実となった。

 焦点は「大統領の刑事免責特権」にある。地裁、高裁ともこの特権を憲法に定めていない、としており、この点を最高裁が同判決を出すかが、大きな注目点である。

 トランプ大統領としては➀最高裁が大統領の刑事免責特権を認め、開示しなくて済む②逆に最高裁が下級裁判決を支持して納税記録開示に追い込まれる。という天国と地獄のような状況だ。

 もちろん大統領としては、自分が任命した二人を含めて保守派判事が多数なので、最高裁での勝訴を読んでいるに違いない。ただ、長官といさかいを起こしているため、票読みは微妙だ。

 では、どんな投資作戦をとったらよいか。

 目先は巣ごもり消費関連がいいだろう。①ゲーム関連の任天堂、カプコン②ドラッグストアのウエルシア HD、ツルハ HD③TV電話・在宅勤務のナスダック上場のシトリックス・システムズとズームビデオ。これに加えてスーパーでもよく売れている食品。例えばカップ麺の日清食品、山崎パン、あたりかな。

 もっと長期にも目を配る必要がある。前記の米国二銘柄は、コロナ以降も、在宅勤務が必要になると見込めるので、お勧めできる。二つのうちどれか、と言われるだろうが、すでに利用している向きに聞くと、「シトリックス・システムズ(cxts)を優先して考えたい。

 「方丈記」の書き出しから一言。「花はしぼみて 露なほ消えず。消えずといえども、夕を待つことなし」。コロナショックも、いずれは終わる。そのあとは?

これだけの超金融緩和をしたのだから、コトが収まれば、株式バブルになると思う。ダウも日経平均も、すごいことになるだろう。

ただFDS箱田啓一さんによると、米国ダウ平均は6月上旬(正確には9日)に利食い売りによる下げを予想していることを、付言しておく。

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