映画「ゴッドファーザー」三部作と習近平主席の運命とセル・イン・メイの行方 (第1011回)

 先週「お休みします」と予告しましたが、私のファンから、いつも情報を楽しみにしているのにーとクレームがあった。幸い材料もあったので、まとめることにした。

 「ゴッドファーザー」が作られたのは1972年、2年目に「PARTⅡ」が作られ、それから16年たって「PARTⅢ」が。物語のほうも20世紀初頭から80年ほどにわたる。NHKの大河ドラマと同じ。

 私は「PARTⅡ」が好きだ。続編のような二番煎じの感じがなく、独立した1本という風格がある。その上に家族崩壊というテーマがギリシア悲劇を思わせる。黒澤明監督もこれを「100本の映画」の中で選んだ。

 このシリーズを選んだ理由は、主人公のマイケル・コルレオーネが、常に敵と戦い続け、最後は娘を敵に殺され、ガックリと老いて死ぬ。これがどうも、お隣の独裁者狙いの国家主席の運命に似ていると考えたからだ。

 連日、朝から晩までコロナ関連のニュースの報道で満杯。そこで見逃されているらしいが、習近平への批判つまり「倒習」がここのところ急速に高まっている事実がある。ごく一部だがご紹介しよう。

 第一には3月25日に習近平に届けられたといわれる「五老上書」。温家宝元首相に始まって李瑞環、李嵐清、田紀雲、胡啓立。この5人はすべて大物。内容は従前から批判されていた諸点。①コロナ感染拡大の責任、②一帯一路や軍事に国家の富を浪費③党と国の責任者としての任期を順守しない姿勢をとっている。

 第二は4月30日に公開された鄧僕方の15項目に及ぶ公開質問状だ。この人は故鄧小平の子息で76歳。文化大革命時代に人民解放軍の厳しい追及から逃れるため4階から飛び降りて、下半身不随になり政務はとれない。(パルナソス・インベストメントの宮島秀直氏)しかし、同氏は上海閥や胡錦涛派とも友好的な立場にあり、「無欲な最高実力者」といわれている。

 内容は前期の三点を含めて15点。これを習近平に突き付けたといわれる。例えば任志強の釈放。任は王岐山副主席の親友で、不動産ビジネスの大物。習批判をして拘留されていると噂されている。

 特にこの15点で注目されるのは「李文亮事件」の再調査だ。この李医師は武漢で感染初期に新型ウイルスを当局に報告したが、デマの流布という濡れ衣で処分され、その後医療現場で亡くなった。現在こそ英雄扱いされているが、不満は広く残る。

 第四は福島香織さん。この三つの「倒習」に加えて3月28,29日に流れた噂を書いている。

 「王岐山、王洋、朱溶基ら長老が手を組み、習近平に任志強の釈放と習近平の退陣を迫った。そこで習は終身制を放棄し、李強と胡春華を後継者に指名し、秋の五中全会で二人が中央委員会入りし、次の第20回党大会でそれぞれ総書記と首相に内定している。そして任志強は釈放された」

 第五は石平氏。李克強首相の公式サイトでのコロナウイルスに対する公式発表を人民日報は報じなかった。このまれに見る異常事態は李首相の率いる政府と習主席の率いる党中央との意見対立と推測できる。こうして石平氏は「政権内の亀裂はすでに表面化しつつある」と結論付けた。

そこで5月22日に始まる全人代が、シャンシャン手拍子の平穏なものになるかどうか。そこを乗り切れればヒト山超えるがそうはいくまい。次の北戴河が待っているのも大変だろう。。

 ヘッジファンドの連中は「6月末決算に向けて45日ノーティスなので、顧客のファンド解約の影響が5月15日から本格開始。したがって中国情勢は注目材料に止まる」と言っている。しかし、新冷戦の勝利は悪い材料ではない、とも。

 基本的には連中は強気。理由は一言でいうと「FEDに逆らうな」であろう。先週も書いたが、FRBの総資産は4月27日。6兆5000億ドルが年末10兆ドルを超える。解約はヤマを越えたとわたくしの取材先は言っているので、セル・イン・メイは起こらないのではないか。

 映画のセリフから。「政治と犯罪は一つのコインの表と裏だ」。中国ほど、このセリフが的中している国は他にはあるまい。

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