井上靖「敦煌」と永い間放置されていた事象三つと当り屋のNY株への警戒説、それとジョージ・ソロスの大転換(第1076回)

シルクロードブームを巻き起こした井上靖の名作。私にとっては亡母今井満里が、たしか二回目の敦煌訪問に井上先生と同行し、現地で拾った陶片を大切に持ち帰った。その時の母の嬉しそうな顔を私は忘れない。後に書家で日中友好協会副会長だった母は「熱砂無限」という代表作を書いた。

 佐藤浩市主演で映画にもなったので、ストーリーをまとめる。時期は11世紀、北宋時代だ。

 主人公の趙行徳は官吏登用試験に失敗、市場で西域の女を助け、奇妙な西夏文字を見て大いに興味を持つ。北宋から西夏に旅する途中外人部隊の一員になる。いや、されてしまう。

 西夏の王族の娘を助け、恋に落ちる。しかしあの奇妙な文字の解読を命じられ、一年以上離れているうちに娘は権力者の妾にされ、再会すると恥じて自殺する。

 権力者を殺そうとして失敗、敦煌に逃げ、そこで膨大な経典が危機にあるのを知り、若い僧たちと何万巻もの経典を洞窟に隠して、そして死ぬ。

 値打ちがつけられないほどの貴重な経典が、誰の目にもふれずに何世紀もの間、放置されていた。

 人為的に何かが放置されていた事例を、私は3つ挙げたい。

 もちろん第一は日本株。株価収益率(PER)が12倍台(2022年3月期基準)、益回り6.6%なんて、わたしの経験では数少ない。

 いちよし証券の高橋幸洋さんによると「これは信用取引の投げ売りです。近く反発に入ります」と確信を持った返事がかえって来た。

 まあこれは、私の従来からの予想通り。特に新味はない。反発時期が、いつ始まるか、だけだ。

 そこに、私に大底を確信させる材料が二つ現れた。

 第一は騰落レシオの71%台の実現。まあここ十年くらいお目にかかったことがない。

 第二は年金積立金管理運用独立運用法人(GPIF)の日本株への比率が23%台になったこと。2021年度に入り、株価上昇の影響で、2兆1600億円の売却があった。その結果25%の基本ポートフォリオにもどすには5兆2349億円を買わなくてはならない。

 第二に、マイナス・イールドの国債が世界全体で165兆ドルを超えたこと。景気上昇とインフレ期待という大かたの投資家の期待が、実現性が薄くなったことを示している。世界経済の回復時期が予想より遅いのではないか。

 第三は米ドル高が長い間続いていること。世界的な流動性の縮小を意味する。

 マーク・ファーバー博士は「米国債で大口投機家が大打撃をこうむった。背景は景気回復とインフレ、金利上昇に賭けていたシナリオが失敗した、ということだ」としている。

 博士は先月号のレターで「大口投機家は米国ドルでも記録的な売り越したこと。同時にこの2つで売ったことは珍しい。」博士はこの反動が2~3か月間に反発があるとも予言している。この人はブラックマンデーを予言し日経平均8,000円ワレを予言した当り屋だ。

 箱田啓一さんが予想している通り。今年11月に米国株式市場で波乱が起きることは確かなように思える。

 箱田さんの8月16日レターは、NYダウは11月1日が小天井で11月25日頃に底値をつけるとしている(チャート)

 ついでに、最近私を驚かせたのはジョージ・ソロス氏が送って来たレターだ。(8月1日付)

 永い間、同氏は中国びいきで対中投資の推進者として知られてきたが、「習氏の独裁政権は中国の国益も脅かしている」「個人的な権力を求めて、故鄧小平氏の経済改革の道を拒絶し、共産党をイエスマンの集まりに変えた」

 この書き出しからみても、同氏が180度態度を転換したことは明らかだ。おそらく米国を含めた外国人投資家は6~8,000億ドルといわれる対中投資を引き揚げつつあるのではないか。

 これもついでに。政界で小池百合子首相説がジワジワと出てきている。二階幹事長のハラの中には大連立政権で小池さんを担ぐつもりがあるのではないか。

 首相の器と考えるし、外国首脳と直接英語やエジプト語で語り合える。自民党が政権から降りた時、彼女は髪を切らなかった。政権を取り返した時にこれを切ることになり、断髪式が行われた。その折にハサミを入れた私としては、永い間放置されていた能力が発揮される時代になりそうなことが、とても嬉しい。

 最後に。「敦煌」の中で主人公趙行徳が僧侶から聞いた詩を書いて終りにする。

 「春風意を得て 馬蹄はやく、一日みつくす 長安の花」

 平和、本当に尊いものだ。アフガン放棄は米国政権の対中攻撃のための必要悪としての画策であると私は思う。しかしイスラム原理主義の弊害で女性の人権無視による強制婚が始まるだろう。アフガンの国民の今後は苦難に満ちたものに違いない。私は暗たんたる心持になってしまう。

 いよいよ最後に。この下げをとことんあてた当たり屋のプラザ投資顧問の伊東秀広さんが、8月24日から反発しますよ、と話してくれた。私の前記した見通しへの大変な援護射撃だ。よーい、ドン!!

関連記事

ママにおそわるハッピーラッキー国際分散投資

親子で解る投資の成功ルール - 結婚は運だけど投資は知識で成功する! 日本個人投資家協会の新

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】TVドラマ「モンテ・クリスト伯」とサマーラリーとその後の不安

2018・7・1 ディーン・フジオカ主演の「モンテ・クリスト伯―華麗なる復讐―」が終わった。デ

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「エルヴィス」と日経平均4万円を支える2本柱。そして私の強気。 (第1124回)

エルヴィス・プレスリーは私と同じ1935年生まれ。 「ハートブレイク・ホテル」を初めてラジオ

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】 映画「理由なき反抗」と金正恩の斬首作戦

2017・4・16 24歳で交通事故死、三本の映画しか残さなかったジェームス・ディーン

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

中島敦「山月記」と日経平均3万円突破後の世界、それに当たり屋の紹介(第1055回)

 教科書にも使われていたと聞くから有名な作品である。  亡母満里のお弟子さんの中に、中島敦氏

記事を読む

PAGE TOP ↑