映画「ワーロック」と円安ドル高の定着で、日経平均3万2000円の回復(第1110回)

1959年。私が大学を卒業して証券界に入った年の作品。

ワーロックという銀鉱山を持つリッチな町が、無法者の一群に被害を受け、就任していた連邦保安官は彼らに追い出される。

悪人と承知で著名なガンマンを雇う。賭博場のオーナーとこみで。

ヘンリー・フォンダとアンソニー・クインがその2人。

無法者は退治されるが、町は2人の支配下にされてしまう。

現在のロシアに似ている。

ワルのプーチン大統領に支配され、身動きが取れない。1914年のクリミア支配の記憶と、旧ソ連時代の強大国へのノスタルジアから、ウクライナに侵攻。

意外な反撃で手間取り、ロシア疎外の世界体制になってしまった。

原油、食糧それぞれの事情で価格は急騰中で今後も続く。インフレになりかけているのは、世界全体。すこしでもインフレ病にならないためにバイデン政権はドル高を推進中。

かつては円レートが安くなると米国は必ずクレームをつけたが、今回は全くやらない。これは前回も書いた。

日本側も、マスコミは「悪い円安」と騒いでいるが、一番大事な点を見逃している。

「日本の輸出の高付加価値化」である。

チャートを見て頂こう。

第一生命経済研究所の主任エコノミスト 藤代宏一さんが作成したものだ。

内閣府(経済白書)によると高付加価値指数は明白に右肩上がり。(下の図)

グラフ

自動的に生成された説明
グラフ が含まれている画像

自動的に生成された説明

これは品質調整をしない輸出価値指数(通関統計)には値上げが直接反映されるが、輸出物価格指数(日銀)は品質向上に相当する部分は値上げと認識されず、純粋な値上げ分のみが指数に反映された。

平たく云えば、円安で値上げしても、スンナリ通る、ということだ。

昨年来のドル高円安が進んでも、チャートが示す通り、輸出メーカーは収益増になるということだ。

企業収益で云うと、10円のドル高円安は上場企業の経常利益を5%押し上げる。

日銀短観によると、対ドル円レートは110円近辺で企業は経営計画をたてている。

1ドル123〜24円の現状では、上限はすでに11%押し上げられている。

推測では、125〜6円。私が信頼する箱田啓一さんは130円。先週の植野大作さんのチャートでは135円。

日経平均では一株当たり利益は2022年度の10.4%増で2309円となった。

2021年度の2091円でPER13.3倍だから、同じPERだと3万700円になる。

現実にはまだ予想される円安メリットを織り込んでいないから、明年の年度末には3万2000円は固い。

一方、米国側にもインフレを抑えるドル高が好ましい事は前述した。

しかも、この情勢はかなり永続する。

天然ガスはシェールガスにより米国はロシアを押さえ込み、ドイツもノルドストリーム2を葬り去つた。

現在ドイツを中心に欧州諸国は、一時的なスポット契約ではなく、長期契約で米シェールガス企業と続々契約を結んでいる。テキサス中心にシェール景気はすごい。

加えて大豆、小麦、トウモロコシなどの穀物も米国は大ブームの状況にある。

農地と出荷設備が激減したウクライナが世界市場に回復するには、2、3年はかかる。一方需要は凄い。

例えば中国、1〜2月だけで穀物輸入は昨年を上回った。6割は米国である。

もう1つ、忘れてはならないのが武器だ。ウクライナの対戦車ミサイル「ジャベリン」と携行型ミサイル「スティンガー」中心に、米国武器メーカーに引き合いが殺到している。

ドル高要因はヤマのようにある。

円安が一時的なものでないと、私が断言する理由だ。

インフレが2年も続けば、83兆円あるとされるタンス預金が、恐らく初めは海外旅行だろうが、次いで不動産と金、そして株に移る。

恐らく(私はその時まで生きていないだろうが)日経平均4万円、5万円の時代が2020年代中に来るだろう。

次のダボス会議のテーマは「世界の大リセット」だそうだ。日本の資産運用も大リセットに入るのではないか。いや、なるだろう。

映画では自ら志願して保安官になったリチャード・ウィドマークが町の人達と仲良くやってゆく。同じように新しい世界が始まるのだろう。

ちなみに「悪い円安」キャンペーンに乗ってはいけない。

物価が上っていかないと、企業は内部留保ばかりに注力して、設備投資や賃金引き上げに動かない。

目先はウクライナ侵攻があるし、FRBの利上げもあるので、モタモタする。しかし春まき小麦の関係から、5月上旬にはカタが付く。

そうなれば、ヨーイドンだ。私は強気だ。

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