映画「かくも長き不在」と本格的な「良い円安時代」の始まり。そして私の強気。(第1119回)
カンヌ映画祭でグランプリを取った秀作。1961年の作品で、キネマ旬報の外国映画部門の第1位。黒澤明監督のベスト100本にも入っている。
「第三の男」のあの若く美しかったアリダ・ヴァリが中年女となって、戦争中にナチスに逮捕された夫を待っている。
パリの下町、セーヌの近くが舞台。
そこに年寄りの浮浪者がパリにやって来る。一目で夫と見た主人公は、声をかける。
しかし夫と見られる似た浮浪者は、頭に手術され、記憶を失っていた。
一緒に踊ったり、好きだったオペラ(「セビリアの理髪師」)の歌を歌ったりする。
最後に、浮浪者が多くの人に、昔の名前で呼ばれると、両手を上げる。
これで一瞬のうちに、この人がどんな扱いをナチスから受けたか分かる。
戦後、1ドル360円のレートは、再建する日本を助けるためのかなりな円安レートだった。
ところがわが国が急速にGDP第2位の経済大国にのし上がると、日本は敵対国扱いされ、1ドル75〜6円の円高となった。
これが、新冷戦になると、同盟国扱いとなり、かつては円安になると米国側は問題視したが、今は、お構いなし。「かくも長き不在」である。なにしろ30年か40年ぶりの円安時代に入ったのだから。
チャート1に示した通り、為替市場の取り組みもドル高円安を示している。
金利差を考えたら当然。
10%の円安は5%収益を上げる。年度でいうと、2022年度はTOPIXベースでは5%近辺の増益だが、現実の円レートを見ると2桁は必至。20%ぐらいではないか。
これもチャートをご覧ください。
6月10日から外国人観光客の受け入れが再開された。
コロナ騒ぎの前の2019年当時のインバウンド需要は4.8兆円もの巨額に達した。
今回はどうか。
1万人から2万人への外国人観光客のワクが拡大される。添乗員同行のパッケージツアーに限られる。いずれも大幅なものになるだろう。
6月の経済効果は、年換算で16.2兆円。5月の1兆円からほぼ倍増すると、野村総研のエグゼクティブ・エコノミストの木内登英さんは推計している。(以上全ての数字は同氏による)
すでに韓国では、前景気は上々。欧州が戦乱の影響もあり、世情は落ちついていない。
ここ3年で30%下がった円安のおかげで、治安の安定、どこに行っても観る所のある日本の観光の魅力は倍増している。
チャート3をご覧になると、落ち込んだインバウンド需要がいかに大きいかがよくわかる。
私は以前から、「円安のメリットが、人々の実感になれば、悪い円安説は一掃される」と主張してきた。あと何ヶ月かすれば、みんなが円安メリットを謳歌するようになる。
幸い、大阪万博もあるし、札幌五輪も十分期待できる。
以前から繰り返し述べたように、新冷戦そのものが大チャンスなのだ。
米国の市場の乱高下を気にする方々が多いが、私に言わせればナンセンス。
向うは金利引き上げ時代で、インフレ懸念からドル安大歓迎。
こちらは3月9日のセリングクライマックスで2万4000円台。当面はこれが大底と考えていい。
加えてPERの割安さ、企業収益の上昇の期待は大きい。
私は4万円目標を捨てない。
私は強気だ。
なお嬉しいことが3つあった。
岸信介さんが設立したほぼ50年にわたる歴史をもつ「協和協会」の理事になった。
また6月30日、紀尾井フォーラム(ガーデンコート1階)で開かれる武者陵司さんと宮田直彦さんのセミナーに、ゲストとして招待された。
最後に、私のファンの方から、結婚披露パーティに招待された。
多忙だが、都合をやりくりして出席するつもりだ。
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