宮本武蔵「一乗寺の決闘」と日銀のサプライズ政策。そして2023年の見通し(第1152回)
12月20日の日銀の決定は、サプライズとして受け取られた。金融政策は、黒田総裁の退位以降と考えられていただけに、予想していた向きは皆無だった。
具体的には0.25%から0.5%への長期金利変動幅の拡大。
そして量的にはQEを7.3兆円から9兆円と拡大した。
サプライズという意味では、宮本武蔵が吉岡一門との決闘で、若い子供の代表を切り捨てたのと似ている。
しかし、武者陵司さんによれば、「サプライズで市場を畏怖」させたのは理由がある。
- 日銀がフリーハンドであることを示し、市場を畏怖させた。為替市場で円暴落の懸念がない。
- 金利上昇のトレンドを示唆し、投資家のアクション変更、リスクテイクを促した。現に円レートは137円から130円の円高に止まった。その後132〜3円で止まっている。12月の短期によると、想定ドルレートは132.31円なので妥当な水準である。GDPを0.3%に押し下げることを考慮すると、長期的には円安の妥因である。
いや、利上げの一種ではないか、と言われるだろう。しかし「国債の利上げ幅は0.25%だろう。1年平均は0.025%にすぎない」と黒田さんなら言っただろう。
私は新総裁に対する配慮のように見える。重要な政策変更を新総裁が行うと、一種のレッテルを貼られる可能性が強い。例えば「タカ派」だと。
SAIL代表の大井幸子さんは日米、それぞれ理由があるとした。
まず日本。すでに10月、JGB入札は不調。国債市場は仮死状態に入る不安があった。
次に米国。ねじれ議会のため、債務上限門題(デッド・シーリング)問題が起こりうる。
しかもこの時期に、米国国債3000億ドル以上の新規発行が予定されている。米国側としては、買い支えが必要。円高に移行してくれれば、米国国債への買いも期待できる。
以上。今回の日銀クロダ・サプライズへの簡単な分析を行なった。
私としては、設備投資が増加しかけている折、促進材料になるのを歓迎する。
株価の方は?
ショックの残る期間は3万円どころか2万8、9000円も怪しい。北京のコロナの惨状を見ると、4万円説も怪しくなっているのが現状である。
たまたまOECDの11月の見通しが発表された。中国の5%未満の歴史的に見て極めて低水準。従前から指摘してきた不動産バブルの破裂もあり、これ以下に止まる可能性すら、ないではない。
しかし、2023年。1.8%はいい数字だし、米国とユーロ圏の0.5%、ドイツのマイナス0.3%、英国のマイナス0.4%に比べると、差は際立っている。
岸田首相の増税発言には呆れ果てたが、ウクライナ戦争の明年中の停戦→休戦に希望を持つ。なぜかというと2024年初めにロシアの大統領選挙がある。秋にはカタが付くのではないか。
最後に宮本武蔵の格言を。
「我、ことに於いて後悔せず」
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