映画「影武者」と資産運用大国としてのわが国の前途は明るいという私の確信
2024・1・19(第1256回)

<アマゾンより>
名匠黒澤明監督作品としては、主役が勝新太郎(適役で、これが見たかった!)から仲代達矢に代わったので、イマイチの作品になった。
影武者が後継者である幼い孫と旗本に「山は動かぬぞ」と良く本物が言っていたと教えられた。勝頼が戦いに出たくて「ご決断を」と迫るのに対して、このセリフを言う。そう、私が言いたいのは日本の体質変化である。山が動こうとしている。
「ルイスの転換点」という言葉をご存知だろうか。産業革命時代、工業化のため農村から都市への労働移転が行われ、都市部の賃金が下落するが、供給が終わると賃金が急上昇した(現在の中国がこれである)。
ベストセラー「世界秩序が変わるとき」を書いた齋藤ジン氏によると――
「(日本の)労働市場がルイスの転換点を超えたことから、政府や企業が何もしなくても、より生産性の高い端的に言えばより高い賃金の支払える企業に労働者が集約されてゆくという環境を手にしたのです」
「コロナ関連のゼロゼロ融資の終了、物価高、人手不足。これに加えて失業率はほとんど不変」
「(給料の見通しも明るい)大卒初任給は2022年度まで1%を下回っていたが2022年度2.8%、2024年度は3.85%(産労総研調べ)。
高卒、短大はこれ以上である。2024年度高卒6.5%、短大卒6.2%。
こうした好ましい状況で、新しいこの国のかたちが見えて来た、というのが私の主張である。
「ハイテク+インバウンド+コンテンツ」が私の主張の中軸。これにすでに2000兆円をこえた個人金融資産の成果が上乗せされる。私がバカみたいに株価に強気なのは、こうした日本についての根本的な楽観主義にもとづいている。だが、目先の一高一低にこだわらない。
かりに個人金融資産2000兆円の四分の一、500兆円が4%で運用したとしよう。20兆円である。
20兆円というと、自動車の海外売上高が15兆円、半導体で5.7兆円だから、この2つを合わせると、まあこれに近い。ちなみに鉄鋼が5.1兆円、コンテンツ(まあ、ゲームとみて下さい)4.7兆円。
だから、最近国策とした「資産運用立国」ということばがひんぱんに使われている。

ところが、チャートにある通り、わが国の金融資産は54.3%が現・預金。利回りはご存知の通りきわめて低い。これに対し米国は13.3%で株式が37.8%と最大。投信が13.3%だから、まあ半分が証券投資が占めている。つまり日米では半分ずつ、日本は低金利と米国は高利回りの運用が可能な証券で占められている。ちなみに米国はS&P500で年率13.5%(ETF利用)である。この物凄い較差!
幸い、日米の関係はトランプ2.0でも石破茂でも、日本は有利である。
私は1989年のソ連崩壊からその近辺、半導体で日本は60%を占め、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」(エズラ・ヴォーゲル)なんていう本がベストセラーになり、ロックフェラーセンターに対する日本企業による買収などが起きた。
自動車が米国人は自分たちがつくり上げた産業と考えている。そこに日本メーカーが高品質、低価格で市場を獲得し始めるから、まあアタマに来たわけだ。そこに半導体、エズラ・ヴォーゲルと来れば「中国を引き上げて日本を叩く」になる。クリントンが日本に来ないで頭越しに中国で一週間いたのを覚えておられるだろう。当時銀行を名前を挙げてつぶせと要請したと聞いている。
しかし「新冷戦」ですべてが変わった。
米国側は「中国を富ませれば、共産党独裁がなく、台湾や韓国のように複数政党による民主制に変わる」と予想していた。ところが習近平がこの米国の期待をトコトンぶっこわした。私は当時ワシントンにいて「Mr.シー」つまり習近平が悪魔のように言われていたのを記憶している。
それでなくても進出した米国企業は中国に強制的に先端技術をもってゆかれてアタマに来ている。米中対立は必然である。日本は「漁夫の利」を得る。
だから日米半導体協定が禁止されていた先端半導体の工場が続々九州や北海道につくられる。
資産運用の方も、米国側の要人が続々やって来日した。勿論市場開拓を狙っている。ウォーレン・バフェットが90代で日本に来て対日投資を始めたのはこれまた前途が明るいと読んでいる。
だから、漁夫の利は変わらない。細かいところは次回以降に。株の方も。
ちなみに。「影武者」のあのかわいい信玄の孫はNHKでキャスターをやっている油井秀樹という人である。まあ日本に対しより強気になるので、前記の本は必読である、
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