「シグナルゲート」スキャンダルと中国で起きている習近平「地位失脚」の懸念

2025・4・13(第1268回)

<トランプ大統領(左)とヴァンス副大統領:ロイターより>

前回、明るい話をご紹介した折に、暗い話は次回に、と申し上げた。そこで今回は、二つ。

「シグナル」はメッセージソフトで、文章の送受信などで広く使われている。

去る3月15日、イエメンの親イラン武装組織フーシ派への攻撃を行った。第二次トランプ政権にとり中東での軍事作戦としては最大である。

これに参加したのはヴァンス副大統領、ヘグセス国防、ルビオ国務、ベッセント財務各長官、その他多数である(WASHINGTON WATCH 4月5日号)。

一般のソフトを使って軍事作戦を策定したことは、1917年スパイ活動法に違反している。

ヒラリー・クリントン元国務長官が同じようなソフト利用で、これが大統領選で敗北した理由のひとつといわれている。

たしかに無神経なスキャンダルに違いない。トランプ大統領が、この事件を摘発した「アトランティック」誌を「もうすぐつぶれるだろう」とこきおろしているのは、逆に政府への打撃が少なくないことを示す。トランプ大統領が最近「三選」を言い出しているのは、このスキャンダルから目をそらすためと考えられる。

この責任問題に対し、3月末、上院の軍事委員会は「法律違反した」としてヘグセス国防長官を提訴している。

こうした事件と同時にトランプ関税ショックが起きている。

4月2日、185カ国に対し全輸入品に一律10%の基本関税を課して、これに上乗せ関税を課した。

問題は関税率の算出方法が、いいかげんなことである。

大統領令についているメモによると、相手国の年間貿易黒字(米国にとっては赤字)を、その国の対米年間輸出額で割った数値である。日本の場合46%。実際に賦課されたのは24%である。大体半分だが、トランプ大統領は「私は寛大な人間だから」としている。

もう一つ。サービス貿易が無視されていることも指摘されている。

ただ90日の延期など、妥協に出ている、これで対中国に対する新冷戦の一環が真相だったことが明白になった。

さて、もうひとつ。石平氏によると「習近平の地位失墜に確実な兆候がある」。

ウィキペディアより>

一時は「独裁者」とまで言われている習近平国家主席の政治的地位が、昨年夏以降、ゆらぎつづけている。

具体的には軍、警察といった体制の核に、自分の腹心を置いてきたが、この人物たちが昨年夏以降、失脚をつづけている。

3月10日、人民解放軍北京総司令官の付文化氏が左遷させられていうる。その以前、昨年11月に習氏の「子分」だった苗華・軍事委員会工作主任が失脚している。

しかも次期司令官に「アンチ習近平」の中心人物・張又侠氏の子分が就任している。

このほかにもまだ「証拠」は多いが、多すぎるので省略する。

大事なのは「張又侠」という名である。どうぞ読者のみなさん、記憶しておいて下さい。

さて、最後に日本の株式市場についてである。PERがついに13倍を切った。リーマン・ショックの折の記憶をたどると、ここの位置がすでに底値と私は考える。月曜日に出來高36億株。プラザ投資の伊東秀広さんは、セリングクライマックスだったと断言している。

まだ高い所で掴んだ玉の整理が時間がかかる。しかし、底値圏であることに変わりがない。

<SMBC日興証券Japan Economic Trends Vol. 409>

TOPIXの純利益の下押し幅は4.7%。すでに下げ幅は25%をこえた。下げが行きすぎていることは明らかである。ここからは買い上げ作

戦がおすすめだ。

関連記事

今井澈のシネマノミクス

【初・中級者向き】映画「グレートウォール」と習近平と「北」の核攻撃

  2017・4・30 何しろ中国第一の映画監督チャン・イーモウの新作

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「ゴールデン・カムイ」と100兆円をこえるタンス預金のもたらす株高。岸田政権の今後

映画「ゴールデン・カムイ」と100兆円をこえるタンス預金のもたらす株高。岸田政権の今後 20

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

映画「64ーロクヨンー 前後篇」とサミットのウラ話とG・ソロス

  2016・6・11 週刊文春のミステリーベスト10の首位を2012年にとっ

記事を読む

今井澈のシネマノミクス

画「眼下の敵」とウクライナ侵攻の終りを読んで動き出した投機筋。そして商社株と金価格(第1106回)

米駆逐艦と独潜水艦が秘術を尽くして戦ううちに、艦長同士がまだ見ぬ敵を尊敬し合うという物語。

記事を読む

JAIIの20年①
証券取引所は誰のもの?
コンサートとパーティーのパリ証取

日本個人投資家協会事務局長 奥寿夫   日本個人投資家協会(JAII)は2015年

記事を読む

PAGE TOP ↑