カフカ「変身」と日本の投資と起きつつある革命
2025・7・13(第1281回)

<アマゾンより>
先を見る、予測する、という商売でやって来た。おかげ様で8月27日90才になるが、まだやれる。というのは、10月、11月迄講演会の依頼があるからだ。このブログも電話ですぐ反応がある。頑張らなくちゃ。
私の慶応義塾大学時代の白石ゼミで、実例を挙げる。トヨタに入社し副社長まで昇進したKという男。親は大手紡績の役員で私も泊めてもらった神戸の超高級住宅地。
その前年。私はゼミの先輩で鐘紡に入った人と会った。「オレの入った会社は日本で最大の製造業の企業だ。多くの子会社があるから俺は常務ぐらいか。そこに行くと、一生安泰だ」。いま鐘紡という会社はなくなった。
Kがトヨタに入社したいといったとき、白石孝教授は「大丈夫かなア」とちょっと考えた。それ位、昭和30年代の日米の業界較差は大きかった。
ところが1973年のオイルショックで、アメ車はコストが高く、セカンドカーとしてVW、次いで日本車が売れ始めた。
当時、自動車業界のスポークスマンだったある経営者が、私にこう云った。
「私は少々心配なんだ。市場は巨大だし、日本車が高い評価を受けているのは、本当に嬉しい。しかし、アメリカ人は、自動車産業は自分達がつくったものだと考えている。あまり成功すると――と考えると、複雑な気持ちになる」
たしかに、その後日本車の良さが分ってくると、シェアは上がりはじめた。日米自動車協議が始まり、自主規制の次に現地生産を押し付けられた。それでも日本勢はうまくやったのはご存知の通りである。
今回のドナルド・トランプ大統領との折衝も、まだ終わってはいないが、本音は米国の生産をもっとふやせ、ということに違いない。何しろ前任のバイデンはケンタッキー出身でトヨタの現地工場をかつて見学したりしている。
業界筋のある人は「今回もトヨタは勝つ」という。理由を聞くと、本社のコンピュータに、1台1台事故を起こしたときに、キチンとブレーキがかかったかどうか、検査する。これでインチキの訴訟を防ぐ。こんなことをやっているのはトヨタだけ、という。不勉強で真偽はわからないが、これまでの推移で考えると、ありそうなことだ。ハイブリッド車で世界を制覇(反面、電気自動車は欧州中心に人気はダウンしている)。

自動車の例にページをとりすぎた。今回は長い長い間、日本の投資が銀行預金中心で、投信が少ないといわれて来た。これが2024年度に入り明確に流れが変わって来ている。もうからない「貯蓄」から、もうかる「投資」へ流れが変わっている。
以下は元日経新聞編集委員の前田昌孝さんの調査による。
日銀が6月27日に公表した2024年度末(2025年3月末)の資金循環統計によると――
①家計の金融資産は2194兆6516億円で、1年前にくらべて7兆5335億円増加した。
②一方、現預金はわずか7530億円の増加。
③投信は11兆2403億円と、前年度の7兆3095億円から4兆円近く増加している。明らかに流れは変わりつつある。

たしかに、リスクは高まっているが、それよりも2024年度からのNISA(少額投資非課税制度)の使い勝手の改善が投資意欲を喚起している面が大きい。

大切なのは、この変化が、実は30歳代という意外に若い層が中心なこと。チャートは30歳代が昨年末で34.0%になっている。
山は動いている。時がたてばたつほどNISAや401kなどに対する認識が高まり動向が注目されよう。
私が米国で仕事をしている時代、地方空港の待合室の話題は。9割が株式市場だった。ピープルズキャピタリズムというのはそういうことだな、と身にしみて感じたものである。
グレーゴル・ザムザは「巨大な虫」になったが、今回の日本はまず「孔雀」かなあ。
長期見通しは、ぐんと明るくなりつつある。
では皆さん、GOOD LUCK!
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