ユニクロの株主構成に見る日経225の極端な歪み

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由
Vol1354(2015年12月2日)

裁定残の急増に警戒感を持つ投資家が増えてきたことは、健全なことだ。経験則に従えば、大底からの立ち直り局面を通過して、高値圏に入り戻り売りが増えてきたところで裁定残が増えた場合、高値圏で1か月程度突っ張り続けることはたまにあるが、ほとんどの場合、短期急落のパターンで10%以上の下落を見ているからだ。

痛い目に遭いたくないなら、ポジションを落とすか、先物を売るなどしてリスクヘッジするか、超割安株もしくはインデックスの動きに左右されない個別に支援材料を持っている銘柄に絞るべきである。大体、皆が青くなっているときに恐る恐る買い、大きく上がって皆が陽気になっているときに2~3割ポジションを軽くしておくのが得策である。

これでいいのか225の採用・除外基準

裁定残を語る際には、東証報告分(東証会員権を持つ業者の分)以外も含めた実際の裁定ポジションがどれほどあるかを追究しないことには、何も語ることは出来ない。225先物はシンガポール、シカゴでも大きな売買高があり、市場外・時間外で現物の225バスケット、あるいはETFが自由に売買できるから、そちらで裁定ポジションを組んだり解消したりすることができる(実際には組むのは比較的簡単だが裁定解消は困難。結果として、裁定解消は東証で現物売買が可能な時間内に集中することになる)。

ファーストリテイリング(以下ユニクロと呼ぶ)は8月決算で、有価証券報告書により詳細な株主状況が把握できる。これをつぶさに調べれば、真実に近づけるはずだ。以下にその結果を述べるが、あまりの歪み方に驚愕、こんなものを日本を代表するインデックスの中核(構成比9.88%、平均の22倍)に据えておくのは大きな問題だと再認識した。

ユニクロの発行株数は106,073,656株。うち自社株と100株に満たない単位未満株を差し引いた流通可能株数は101,898,800株である。個人その他保有株3624万株から、大株主10位以内の柳井姓3人保有分を差し引くと、わずか369万株だけだった。おそらくその半分は親族や縁故関係者が持っているのだろう。国内金融機関保有は2673.5万株。GPIFその他の年金基金のインデックス連動運用分と、各種のインデックス投信保有分(ざっと1000万株か)がここに含まれる。金融商品取引業者(昔は証券会社と呼ばれた)保有は496万株。9割以上が裁定買い残に含まれる分である。

株価の透明性が低いままだと、アベノミクスは災厄を招く

その他法人(事業法人や学校の基金、宗教法人)は869万株だが、柳井社長関連と見られる有限会社2社分を差し引くと、わずか83.6万株だけである。外国人保有は2527万株だが、オランダ籍のTTYマネジメント社531万株というのは柳井社長関連と見られ、残りはすべて外国系の各種ファンド保有分と見て差し支えない。見えているだけで柳井氏直系保有分が4622万株、控えめに見てさらに200万株がオーナー系保有と見られる。

原則として、金融機関保有分は安定株、金融商品取引業者は全額裁定取引、外国人は全部が報告外の裁定取引と各種ファンドの合算という風に理解すると、自由に動かせるのは個人とその他法人の紐付きでない260万株しかない。外国人の一部は相場観で動く分が5~10%はあると見られるが、それを足しても全流通可能株の8~13%でしかない。

これは8月末時点、東証裁定買い残高が15.7億株だった当時のデータに基づく。その後裁定買い残は7億株弱増えており、控えめに見てもユニクロの裁定保有分は150万株ほど増えているはずである。

裁定解消の反動が大きい

その結果、裁定買いによる品薄効果が大きい銘柄と、そうでない銘柄の株価格差が生じ、日経225の時価総額ベースとインデックスベースのPER、PBRの格差は一段と拡大している。225の採用・除外基準の見直しが早急に必要だ。

先週末終値19883円で、時価総額予想PER15.22倍に対し、インデックスベースは19.71倍で、29.5%も割高だった。直近PBRは1.34倍に対し1.77倍で、32.1%割高である。毎度書いているが、これだけ格差が広がると、裁定解消が増えたときの反動が大きいため、長期保有目的で225投信を持ちたい投資家はプロではありえず、株のことなどほとんど知らない素人くらいのものだろう。

米ISM製造業指数はリセッション入り示す

筆者が最も重要視しているマクロ経済指標、ISM製造業指数は48.6と、6年半ぶりの低水準となった。受注指数の急落と景気サイクルのパターンから考えて、今後45以下に落ち込み、リセッション入りする公算が浮上してきた。その時期は今年後半になるかもしれないが、少なくとも米国株を買い上がる材料ではないはずであった。

ところが、昨日(1日)の米国市場で大きく上がったのは、利上げペースが非常に緩やかになると判断し、長期金利が大きく低下したからである。

もし一株利益が動かないというなら、金利低下は株価上昇要因であるが、これほど明瞭なISM指数の低下、しかも先行指標である受注指数が急落していれば、利益予想が下がらないはずはない。米国の引けにかけ買い上げた動きから、おそらく昨日(1日)東京の大引けにゴールドマン経由で大量に225先物を買ったのと同じヘッジファンドが強引に買い上がったのではないか。同社は昨日(1日)先物を1200億円、本日(2日)650億円買い越している。まだやる気のようだが、どうやって反対売買するかは謎である。

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