映画「運び屋」と老人社会、「21世紀はバイオの時代」とする私の主張、そしてモデルナ、ファイザーと日本のバイオ株 (第1041回)
88歳のクリント・イーストウッド氏が監督・主演した2018年制作の作品。NHKを含めたBSでしばしば上演したので、繰り返して観た。
実はわたくしはクリント・イーストウッド氏を人生のお手本と考えている。若い時代はマカロニウエスタン。「ダーテイハリー」の大成功。中高年では「マデイソン郡の橋」で監督と俳優の兼業を本格化、老年になって「グラントリノ」「人生の特等席」などの静かな作品を作っている。今回取り上げた「運び屋」もこの系列だ。
ストーリーを簡単に。かつて園芸家として著名だったアールは、ウエブ販売に押されて,大不振。自宅を差し押さえられる。また妻や娘から反感を持たれ孤独に暮らしていた。
そこにメキシコ人の知り合いから「荷物を運ぶだけで手数料が入る」と誘われ、麻薬の運び屋を始める。これを追う売麻薬取締局の捜査とからんで映画は展開する。
オチは妻の臨終に立ち会ったための破局、逮捕。ここいらは大いに泣かせる。まあ、若い方々はともかく、50以上の方々には大いにお勧めできる。主人公は90歳まで、一遍も交通違反をしていない。これが効いて何十回も運び屋をやっているのに、捜査の網に出てこない。
ここまで書いてくると今回のブログを私が書いている理由が、はっきりと見えてくるのではないか。
主人公が老人だから、だけではない。周囲を見回してもすでに日本、いづれは中国も老齢者の比率が急上昇し、未来には、老人対策を重視する社会になっていることは断言していい。
岡三グローバル・リサーチ・センター理事の高田創さんは実にうまい表現でこの流れを捉え、提言しておられる。最近のTODAYの見出しを。
「成人式より高齢式が重要な時代」(2020年11月17日)
前後するが2020年11月16日にはー
「コロナ危機化こそシングル社会担当大臣をー高齢社会での金融のあり方を再検討」とある。
その中で①英国ではすでに2018年に孤独問題担当大臣が創設されている②多様性に応じやすい信託業務やプライベートバンク業務の方が、商業銀行より成長性が高い、としている。
老人社会、というと介護用のロボットとか、特養ホーム運用などがすぐ思い浮かぶ。しかし、私は本命はバイオの技術、具体的には遺伝子技術を持つ企業と考える。
85歳の老人の繰り言とお考えいただいて、かつての松下電器産業(現パナソニック)の技術副本部長の早川さんから伺った話を書く。
当時、平取りだった山下さんが社長に大抜擢されて話題になっていた。山一證券経済研究所にいた私は、理事長の吉野俊彦さんと山下社長との対談を中心に「松下電器の研究」(東洋経済新報社刊)を書いた。
「なぜあなたは26人ぬいて社長になったのか、世間はみな注目しています。松下幸之助相談役からどういう使命を授けられたのですか?」
「20世紀中は何とか私(幸之助さん)は予想できるが、その先は分からない。若い人中心に21世紀を予想し、対策を打つ人たちを集めて、この会社を永続させたい。だから私は技術本部長を兼任しています。」
そこで中心となっている副本部長の早川さん(申し訳ないがお名前の方は忘れました)をその場に呼んでいただいて、私がいろいろと何時間も伺った。以下、記憶を頼りにまとめる。
「イマイさん、ノーベル賞の創設者アルフレッド・ノーベルは何であんな巨大な利益を得て財団を作ったかご存じですか?」
「ダイナマイト、でしょう?」
「そうです。あれは実は化学が進歩したために出来上がったんです。人造肥料も人造繊維も19世紀の技術です。つまり19世紀は科学の急速なイノベーションの高まりの時代なんです。その軸は化学です。」
「というと、20世紀はエレクトロニクス、ですね。学問でいうと、物理、ですね。
「そうです。半導体、原子力、セラミックス、みんな物理、です。
「では、21世紀は?」
「生物、です(現在はバイオ)。」そこで遺伝子とかの話をされたのだが、私にはチンプンカンだった」
反省した私は、それにからんだ海外情報をファイルにして少しづつ蓄積した。確か伺ったとき(1981年)から10年後には「クローン」とか「DNA」とかの言葉がではじめた。私の長男を当時高校生だったが、この話をして、その専門家になるようと、励ましたのを記憶する。その後、博士号を取得し、フランスで数年研究に励み、現在は、国立研究機関にて研究している。有力誌に論文も掲載された。(親バカとお笑いください。)
ではバイオ株の現状はどうか。ウオールストリートジャーナル11月23日の記事の一部を書く。
「新型コロナウイルス予防ワクチン開発の先頭を走る二つの有力候補(モデルナとファイザー)が初期データで高い有効性を示した」。
「医療の世界に大いに影響を与える可能性が出てきた」
「がんや心臓病、ほかの感染症など、一連の疾患に対して、遺伝子に基づく技術が、新たな治療法を提供するーそうした新時代の到来を告げている」
モデルナ(MRNA)、ファイザー(PFE)は、一時的なバクチ銘柄を考えられやすいが、前記の理由で、長期でも投資に適合していると私は観る。
では、日本の方はどうか。
バイオベンチャーで、」この一年株価が上昇し、市場が急成長を織りこみ始めた銘柄を七つ選んだ。
テラ(2191)、ファーマフーズ(2929)、アンジェス(4563)、ペプチドリーム(4587)、アキュセラ・インク(4589)、タカラバイオ(4974)、リプロセル(4978)
映画のセリフから、アールが言う。
「結局、何でも案外うまくゆくもんだ」。楽観は努力の産物、という言葉が、今年と来年のキーワードです。
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