「脱炭素」は、インフレを呼ぶが、同時に企業の不良債権をもたらす
ご存知の通り、私は銀行マンの経歴がある。30年間つとめた山一証券グループを辞め、日債銀(現在のあおぞら銀行)にスカウトされたのが1989年。すぐ株式で暴落が始まり、次に地価の大幅下落が始まった。
明治以来の銀行の貸付けの担保は土地。これは不況などで地価が下がっても、せいぜい3~4割の計算で担保割れを起こさないという前提で銀行ビジネスは成り立っていた。
例で示そう。
いま時価1億円の土地があり、担保にこの土地を使って融資を申し込む。
「1億円と云っても時価で、当行は7がけ。7000万円の評価。その70%を融資しましょう」。つまり4900万円の融資になる。
従って何らかの事情で地価が下がっても、貸付け分より上で止るなら評価損は出ない。
しかし、あのバブル時代には「地価は10~15%と上昇しているぞ!」という理屈で1億円以上、子会社のノンバンクを通じて融資していた。
М日銀総裁と取り巻きのアホどもが、メチャクチャな利上げを行ない、株価などで地価は急落。結局高値比15~16%まで下落した。もちろん銀行側の流動性不足により「貸しはがし」が発生した。
当時の不良債権は、2~3兆ドルはあっただろう。ちなみにサブプライム問題での不良債権は1兆3000億ドル。
それが今日はどうか。
第一生命研が主席エコノミスト・熊野英生さんによると「2030年迄に最大18兆ドル」。文字通りケタ違いの大きさになる。
そもそも「脱炭素」自体、インフレ要因を内包する。
コロナ・ショックの折は、設備がそのままで需要がバッサリと急減した。従って供給サイドの能力はそのまま稼働率が急低下したのでデフレ。
それに対し「脱炭素」のほうはエネルギー中心に廃棄されるべき設備は巨大。2030年までに30兆ドルの投資を必要するとされる。
加えてCO2を産出する設備・廃棄と、CO2を生産しない設備への交代に様々なコストがかかる。
すでにチャートに示した通り、欧米ではすでに物価は上昇している。日本のほうは企業物価に止っている。
次回は日本がなぜ、出遅れているのかを分析します。ただし、検査入院しますので来週はお休み。あしからず。
関連記事
-
-
映画「シェーン」と参院選の争点になっている「円安が物価高を招いた」の野党の主張のイカサマ。私の強気。(第1121回)
「シェーン、カムバック!」という少年の叫びと、ビクター・ヤングの音楽が忘れられない。ご存知の西部劇
-
-
TVドラマ「ハウス・オブ・カード野望の階段」と米大統領選の展開と株式市場の意外高予想 (第1014回)
W0WW0WでこのTVドラマのシーズン1が5月から始まった。見損なった向きには、6月1,2,3日
-
-
【初・中級者向き】映画「千と千尋の神隠し」と8月の嵐の後の投資作戦
(第976回) 2019・8・18 ご存知の通りの宮崎駿監督の傑作で日本歴代興行収入第1位。第7
-
-
私の協和協会での講演での質問と話し足りなかったこと。
2024・12・15(第1251回) 公益財団法人協和協会は故岸信介総理が設立し、代々総理が
-
-
【初・中級者向き】映画「北北西に進路をとれ」とトランプ演説
2017・3・5 アカデミー賞が決まった。私は作品賞、監督賞を一生