木村喜由のマーケットインサイト
下値不安は解消も割高感強し
低PER銘柄の下値拾いを

公開日: : 最終更新日:2014/12/17 マーケットEye ,

日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

<2014年12月号>

最近の最も顕著な動きは原油価格の急落である。NY・WTI原油は12日に57.81ドルで終了、半年前の高値107.26ドルから46.1%の大幅安である。明らかに生産者である中東やロシアなどの産油国には大打撃であるが、買い手にとっては値下がり分が利益となる。大幅な円安が起きている分を割り引く必要があるが、年間石油輸入量2億キロリットルの日本にとって、代金15兆5000兆円からは3兆円程度のメリットが生じることになる。

円安はメリット・デメリットが混在して立場によって見方が変わるが、上場企業の株式価値に限定すれば明確に円安=株高要因である。日本企業は海外売上高比率が高まっており、外貨資産の保有も増えているから、円換算した純利益も資産価値も膨張するのである。

国際会計基準の採用により、包括利益という会計の概念が導入されているが、これは主に持株や海外資産の含み損益と年金処理の変更に伴う損益を、通常の純利益に加算したものと考えて大きな間違いはない。包括利益利益をもとにROEを計算すると、株主持分の変化をよくトレースすることができる。

円安原油安で株式価値は上昇

ややラフな計算だが、日経225銘柄について筆者が計算したところ、2013年度の包括ROEは14.96%だった。2013年9月からの1年間では13.67%となっていた。若干低下したのは、通常の純利益はあまり変化しなかったが、分母の株主資本が大きくなり円安・株高のペースが鈍化したためである。その後、株価は上昇し、円安原油安が進行しているため、2014年度のROEは15%以上に拡大するだろう。

これに応じて期末の純資産が増大することになるから、株式の実質的価値は向上しているのである。しかも日銀のETF買い付け額拡大、自社株買いの増加、GPIFの組み入れ比率変更などの需給改善要因も加わるため、日本株の下値不安はかなり縮小したと考えてよいだろう。

中国や欧州の経済情勢は楽観を許さず、リスクポジションの圧縮に伴う一時的な下振れ懸念は残るものの、企業収益の堅調から企業の手元資金は潤沢で、預貯金などから株式にシフトさせる動きも予想される。したがって、押し目買い方針を推奨する。ただし、ここ2か月かなり上昇した銘柄があるため、割安感のあるものに絞るべきだ。

アベノミクスへの外国人期待で上昇日本人の期待は後退し投票率低下

今回の総選挙の結果は、おおむね新聞の事前報道の内容に沿っているため、これ自体がサプライズの要因にはならないと見る。アベノミクスに対する日本国民の期待は、円安・消費税率引き上げの影響で実質所得が下がってしまったために、全体としては従来に比べ後退しているように見えるが、それは投票率の低下という形で現れるにとどまり、表立った現政権に対する批判にまでは行っていない。

与党が3分の2の議席を維持したことで、現在の金融財政の路線は明確にデフレ脱却が達成されるまで継続されるだろう。少なくとも日銀と安倍政権が、デフレ脱却を最優先させるという方針で一致していることは非常に重要である。

これは基調としては円安トレンドが続くことを意味し、先に述べた株価と為替の関係からすれば、かなりの幅のスイングを繰り返しながら、次第に下値を切り上げていくパターンを暗示している。

 相場変動の80%はヘッジファンド

しかし、株価変動の80%がヘッジファンドの売った買ったの動きによって作られていることも意識しておくべきだろう。10月以降の株価上昇や円安は、米国景気の堅調・利上げ接近観測に加え、消費税率引き上げ先送りなどアベノミクスに対する外国人投資家の期待感が大きく高まったことが原因で、先物主導で急激かつ大幅に上がった。利益が伸ばせるなら一段と買いポジションが増加し、裁定買い残高と並行して株価が上がるかもしれない。

ただし、期待が裏切られたり、世界景気に対する不安心理が高まるならば、ポジション積み増しどころではなくなってしまうため、急転直下の下落となる可能性を否定できない。日経新聞に掲示されている日経225の予想PERは16.2倍と表示され、米国ダウ30種の予想PER15.5倍と大差ないと思われているが、これは誤解である。

上記の日経の計算は時価総額加重ベースであり、本来単純平均株価である日経225は単純ベースで計算すべきである。その場合、現在よりも5倍ほどPERが高くなり、非常に割高感が強いのである。10%ぐらい売り叩く理由などすぐ作れる。

逆に言えば、発行株数の多い低PER銘柄も多く存在しているといえ、中長期で成果を求める投資家ならこちらに重点を置いて投資するのが賢明といえるのである。日柄的には2~3月に掛けていったん下押す場面がありうるので、のんびり下値を拾うスタンスで構えるのがよいであろう。

(了)

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