木村喜由のマーケット通信
GPIF材料に先物主導で値上がりも、目標達成し買い越しが鈍る公算大

公開日: : 最終更新日:2015/03/13 マーケットEye, 有料記事サンプル ,

 日本個人投資家協会 理事 木村 喜由

昨日(2月25日)は日本個人投資家協会の20周年記念大会。ゲストスピーカーとして元金融庁長官の五味廣文氏をお呼びしたのだが、せっかくの機会だからということで、筆者は木村亭きよしという変名で前座の余興「寿司処・錦涌兆(きんゆうちょう)」というインチキ落語をご披露した。

10年前の制度改正により、個人投資家保護という理由でリスク管理が非常にうるさくなったのを茶化した落語だが、テレビ東京のBSで毎夕やっていた「ルックアットマーケット」という番組でプロの落語家にやってもらった原稿を筆者が保存し、加筆訂正したものである。

当時の金融庁の大親分を前に置いて茶化したネタを演じるというのは大変失礼なことだが、五味さんも講演の冒頭でこの落語のおかしい理由はどこにあるか、うまく調子を合わせて説明して下すったので大変助かった。ありがとうございました。

猛烈な先物買い、翌日のGPIF四半期報告が材料か

今日(2月26日)の市場は材料が乏しかったのに断続的に先物が値上がりし、とうとう日経225先物は18,800円に乗せて引けた。19,000円は指呼の間となり、2万円さえもう一息で届きそうなところにある。今回の一連の上げ相場は、UBS経由で入ったTOPIX先物の大量買いがメインだが、本日は225先物主導。調べたら案の定、クレディスイスが買いの筆頭で2,606枚の買い越し。いつものように値嵩株を思い切りかち上げてインデックスを強引に上に持って行く手法。

たぶん大手投機筋のブレバンハワードの仕業だろうが、今回の上げ材料に用いられたと見られるのは明日発表のGPIFの10-12月期運用報告と思われる。株式組み入れ比率の引き上げに動いているということで、市場が好感すると踏んでのことだろう。

この連中はGPIFネタが大好きで、結果的に10月末は黒田バズーカ2と同じタイミングで組み入れガイドラインの変更が発表されたが、その時の大成功に味を占めているのだろう。誰でも承知の中身をことさらに材料視して上に持っていくのが彼らのやり方だ。たとえ織り込み済みではあっても、流れに逆らえば損してしまうので売り方が踏み上げるという寸法だ。

GPIFは外国株を2兆円程度買っている

GPIFが積極的に組み入れ比率の変更に動いていることについては確証がある。国内投資家の外国株買い越し額は先週まで7週間で2兆3755億円に上った。誰が見ても天井圏にある海外株式を大量に買う投資家は、普通の感覚の持ち主ではなく、ガイドラインに従順に従うGPIFしか思い浮かばないのである。

信託銀行の買い越し額は7,473億円。しかし、GPIF以外の年金系は値上がりに応じてポジションを落とすため売っていると思われ、おそらくGPIFの買い越しは1兆円を大きく上回っているだろう。真偽は3か月後には明らかになる。で、10-12月の信託銀行買い越しは1兆5939億円あり、GPIFはおそらく2兆円程度買っていたと見られる。

株高で意外に早い目標比率達成

外国株の買い越しペースが異様に速いことから、GPIFは積極的にリターンの見込めない国内債を売り、配当も益回りもはるかに高い内外の株式にシフトしているのは間違いない。当然、それは株高要因ではある。ただし、これからではなくて、ここまでの、だ。

大雑把に言って、GPIFは債券半分株式半分、国内半分海外半分というポジションを最終的なポートフォリオのバランスにしたいと考えている。これ自体は全く適切で、文句の言いようがない。ただし、買うより先に株価が値上がりしてしまった場合、株式の組み入れ比率は予想以上に早い時期に目標に到達してしまい、今後の推定買い越し額が非常に小さい、という事実を提示する可能性がある。実際、現在はそういう方向で進んでいる。

新聞などの見出しではGPIFが株式買い付けに積極的、という表現になるだろうが、株価が上がってからどうなる、という話ではむしろ意気消沈してしまう公算が強い。おそらく大手証券筋が週末にかけて正確な推定計算を行なってレポートを発行するだろうから、インターネットに漏れ伝わる内容をよく見ることだ。

裁定残高が急増の凶兆

もう一つ特記すべきことは、自己売買部門の買い越し額が極めて大きくなっていることだ。先週までで1兆4167億円、おそらく今週も7,000億円程度になると見られる。そのほとんどが裁定取引によるものであり、東証報告分以外のものも含めるとおそらく裁定買い残高は25億株から28億株程度に膨張している。その効果により、225品薄銘柄の品薄化が一段と進んだために、225のインデックスベースの予想PERが日経新聞の表示と大きな乖離を生んでいるのである。裁定残高の急増は凶兆である(錦涌兆ではない)。

高齢投資家の“引退売り”

一方、売り越し額が膨らんでいるのは個人である。過去5週で1兆6176億円もの膨大な売り越し。単純に上がったから売るというものもあるだろうが、無視できないのは高齢投資家の「もう自分は年を取って忙しい株をやれない」という売り物である。投資主体別の証券会社というのは、東証非会員の中小証券であり、地方の高齢資産家の扱いが多い。また投信も高齢者の保有が多い。これらの売りが膨らんでいることは、相場観によるものだけでなく、「引退売り」が結構あるものと推定される。

インデックス投信こそ賢明な遺産

本当は高齢者こそ、資産防衛と老後収入の確保のために財産の一定以上の比率をリターンが高く運用報酬が割安なTOPIXやJPX400連動のインデックス投信に置くのが賢明なのに、そうなっていないことは残念である。預貯金はもう目減りするだけだ。インデックス投信なら預貯金同様に換金性が高く、遺産分割の際にも分割がしやすい。一方、処理が難しい不動産を慣れない普通の相続人が処分するのは大変だ。親は元気なうちに何割かを換金し、子供たちの負担を軽くするのが親心だと思う。まあ相続の際にあえて苦労させるのも一つの考え方だが、苦労の割りに実りが少ない作業に時間を使わせるのもどうかと思う。

Vol.1275(2015年2月26日)

*木村喜由のマーケット通信は今後、有料記事で掲載予定です。サンプルとして無料公開しています。

(了)

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