映画「日本のいちばん長い日」と人民元騒動の真相
公開日:
:
マーケットEye 今井澂, 今井澂のシネマノミクス
漸くマジメな映画が見られるシーズンになった。今週は「バージン・アナーキー」と「この国の空」。それに国立演芸場で桂歌丸の「怪談乳房榎」。復帰初日だったが元気そうだった。足はダメなようだが、声の張りがあった。
7%成長のウソっぱち
今週は何と言っても中国人民元の意外な切り下げ。三日続けて4%強。
びっくりした初日の下げが大きかったので、市場の反応はこの2つ。
①4%じゃ足りない。10%か。第二、第三弾必至説
②それほど中国経済は悪化しているのかというビックリ説
再来週の経済週刊誌もこの特集だろう。
中国経済が公表されているGDP成長率7%よりずっと悪いことは、このコラムをご覧の方はとっくにご存じだろう。最近月の6月の李克強が判断する経済指標は
①鉄道貨物△18・5%(ちなみに全貨物も△4・6%)
②電力消費+3・0%
③銀行融資△4・8%。
成長率はせいぜい3%で7・0%はウソっぱち。ちょうど第二次大戦の大本営発表だ。
人民元切り下げの〝次〟はない
ただし、私は株価も為替も市場は騒ぎすぎと思う。それは少なくとも今回の人民元切り下げは、中国側からするとリーズナブルな行動だからだ。
話は2010年のソウルでのG20の「ソウル宣言」に始まる。GDPに対する経常黒字が4%以上の国は、為替レートを人為的に切り下げてはならない―というもの。当時中国はGDP比6%の経常黒字国で、この宣言は中国が対象だった。
その後、中国は2014年に△1・9%の経常赤字国になったが、人民元は4・2%上昇した。今回の4%強切り上げは、中国側としては上昇分を帳消しにしただけ。私はこれ以上、例えば10%切り下げると為替操作国に認定されてしまうので、大幅だの「次」説は当たらないと考える。
仮に、本当に仮に、あるとしても9月4,5日のG20で米国などの了解を取ってからのはず。
従ってこの程度の人民元切り下げなら、日本経済には蚊に食われた位の打撃だろう。中国関連の商社、建設などは以前から不振。
2017年、中国崩壊
私は以前から、中国の一党独裁はいずれダメになる。しかし2015,6年いっぱいはハードランディングにならない、と予想してきた。
中国共産党習政権が10%も切り下げたら、中国が海外金融機関から借りている主に短期の外貨建て債務は、一挙にデフォルト危機になる。それほど習=李首脳はバカではない、と考える。
ただ中国の外貨建て債務は1兆2526億ドルあり、英国の香港上海銀行、スタンダード・チャータード銀行が大きい。中国側の銀行のデフォルトは起きないと思うが、一応リスクとして記憶にとどめる必要はあるだろう。
危ないのは韓国
ついでに、某有力エコノミストが「通貨切り下げ戦争が拡大し、韓国ウオンが切り下げたら日本にとり大問題」と論じていたが、これもご心配なく。2014年の韓国の経常収支黒字はGDPの6・2%。ウオンを切り下げたら、一発で為替操作国になってしまうので、手が出せない。
このことを知っているから韓国のCDSのレートが急上昇している。私も国際エコノミストと言われているので、為替とCDSとの関係はいつも注意している。韓国が危ない。
ついで、をもうひとつ。中国の一党独裁がダメになる理由を。もう万単位の人間が動員されるデモが年20万件あり、鎮圧の費用は年間7700億元(12兆2000億円)で軍事費より多い。そんな国が永続するワケないでしょ。私は時間の問題と思っている。
この原稿を書いている8月14日深夜、日本にとって最大の好材料原油の41ドル台へ突入、40ドル大台割れも時間の問題。一方4~6月期の日本経済GDPがマイナスなのは相当株価に織り込まれているし、補正予算3兆円がすぐに発表されるだろう。2万1000円のカベは意識されるだろうが、突破の方もこれまた時間の問題だろう。
14日の夕方の安倍首相談話。中国も韓国もこれなら文句のつけられないだろうと思うが。「深い悔悟」という言葉を加えたのも良かった。これで安保法案の参院成立に力を入れられるだろう。
映画のセリフから。本木雅弘演じる昭和天皇が、役所広司演じる阿南陸相に言う。
「心配してくれるのはうれしいが、もうよい。わたしには国体維持の確証がある」。
同じ題の岡本喜八作品にはこんな確信を天皇がお持ちなんてことは入っていなかった。本当なのかしらん。「聖断」の意味が、国民を守るためだったという、従来からのストーリーがこわれてしまうのだが。
映画「日本のいちばん長い日」と人民元騒動の真相(第787回)
今井澂(いまいきよし)公式ウェブサイト まだまだ続くお愉しみ
関連記事
-
続映画「レッド・クリフ Ⅰ、Ⅱ」と中国のバブル破裂によるダメージの大きさ、対中依存のリスク。それにゴールデン・クロス(第1130回)
前回に引き続いて、中国経済の苦境を述べる。 チャート1に示した通り、つい12年前には2桁だっ
-
【初・中級者向き】映画「キム・ソンダル大河を売った詐欺師たち」と呆韓(第845回)
2017・2・12 私は嫌韓も嫌韓、食卓にキムチも出さない。TVの韓ドラも
-
映画「ローマの休日」と中国が受ける出過ぎの罪。同盟国へのプレゼントとしての円安。そして私の強気。(第1123回)
王女様がローマの街に脱出し、様々な体験をする。新聞記者と恋するが「国民のために」再び王女の地位に戻
-
2015年株価予想・的中度ランキング
日経平均2万円超えで4割近くが早くも脱落!ジャイコミで一番人気の記事は「2014年株価予想・的中度ランキング」。昨年末に公開したのだが、いまで
-
映画「ベニスに死す」と我が国のコロナ不況対策の評価と、政府内のピークアウト予想 (第1006回)
ドイツのノーベル賞作家トーマス・マンが1912年発表した中編を、イタリアの巨匠ルキノ・ビスコンティ